二次創作小説(紙ほか)

37話 レスト対トイロ・ゲコガシラ ( No.131 )
日時: 2014/01/02 00:00
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 泡蛙ポケモン、ゲコガシラ。
 それが、トイロの最後のポケモンだった。
「ケロマツの進化形か……トイロもケロマツを進化させてたんだな」
 ケロマツの時よりも目つきがキリッとし、体格も大きくなっている。純粋にパワーアップしたと見てよさそうだ。
「だけど、こっちにはラクライとチュリネ、どっちも残ってるんだ。早々やられたりはしねえよ。行くぞラクライ、電撃——」

「ゲコガシラ、電光石火」

 刹那。
 ラクライが吹っ飛ばされた。
「……っ! はやっ……!?」
 まったく動きが見えなかった。不意を突くような一撃を喰らって吹っ飛ばされたラクライ。ダメージもそこそこ通っているだろう。
「くそっ、油断したか。でも次はこうはいかねえ。ラクライ、こっちも電光石火!」
「ゲコガシラ、もう一度、電光石火」
 ラクライが地面を蹴って駆ける。だがゲコガシラのそれは、残像が残るほどの超高速だ。ラクライのスピードを遥かに凌駕し、側面からぶつかって吹っ飛ばす。
「……! だったら、電撃波!」
 スピードで勝てないと見たレストは、作戦を変更する。ラクライは波状の電撃を放ち、ゲコガシラへと攻撃を仕掛けた。
「飛び跳ねる」
 対するゲコガシラは、強く地面を蹴りつけ、一瞬で空高くまで飛び上がってしまう。それで電撃波を躱したつもりだろうか。確かに一時的に逃げることはできるが、電撃波はゲコガシラを追いかける。
 だが、
「っ、ラクライ!」
 直後、凄まじいスピードで落下してきたゲコガシラに、ラクライが撥ね飛ばされた。効果いまひとつだが、威力が高い。
 しかしそんなゲコガシラの背後には電撃波が迫っている。スピードはあってもゲコガシラはたいきゅは低そうだ。効果抜群の攻撃なら致命傷を与えられるはず。
 その考えは正しい。だが、
「身代わり」
 次の瞬間、ゲコガシラに電撃波が直撃した。
「電光石火」
 だが同時に、ラクライがゲコガシラに吹っ飛ばされた。
「なっ……なんだ!?」
 見れば、電撃波が直撃したゲコガシラが消えていく。何事かと図鑑で調べると、
「身代わり……攻撃を肩代わりする分身を作り出す技か……!」
 代わりに体力を削るようだが、これでは必中技がまるで意味をなさない。この身代わり一つで、一気にレストは苦しくなってしまった。
「戻れ、ラクライ」
 レストはラクライをボールに戻す。今の電光石火で体力が尽きてしまったのだ。
「スピードだけだと思ったら、意外とパワーもあるのな……次はお前だ、チュリネ!」
 レストの二番手はチュリネ。草タイプなので、ゲコガシラには有利だが、
「チュリネ、マジカルリーフ!」
 チュリネは、まず、念力を帯びた葉っぱを放つ。葉っぱはゲコガシラに迫り、切り刻まんとするが、
「身代わり」
 ゲコガシラがマジカルリーフに切り刻まれた——が、そこにゲコガシラの姿は見えない。
 代わりに、チュリネの真正面で片手を振り上げていた。
「しまっ……!」
「ゲコガシラ、水の波動」
 手中に作り出した水球を、ゲコガシラはチュリネに叩きつけるようにして放つ。効果いまひとつだが、こんな直撃を当てられてしまえば、ダメージも大きい。ただでさえチュリネは耐久力で劣っているのだから、なおさらだ。
「くっ、チュリネ、居合切りだ!」
「電光石火、だよ」
 チュリネは頭部の葉っぱを振るうが、ゲコガシラには当たらない。どころかゲコガシラに背後を取られてしまい、吹っ飛ばされてしまう。
「くっそ……自然の力!」
「飛び跳ねる」
 なんとか自然の力を借り、パワージェムで反撃するチュリネだが、やはりゲコガシラ、一挙一動が速く、次の瞬間には空中に身を投じていた。
「! 間に合え、マジカルリーフだ!」
 ゲコガシラの存在を確認すると、チュリネは上空へと念力を帯びた葉っぱを放つ——ことは、できなかった。
 それより速くゲコガシラが落下し、チュリネを吹っ飛ばしたのだ。
「チュリネ!」
 効果抜群の飛び跳ねるを喰らってチュリネが耐えられるはずもない。これでチュリネも戦闘不能になってしまった。
(速い……まだゲコガシラが出てから五分も経ってねえのに、ラクライとチュリネがあっという間に……!)
 相性が良いはずの二体なのだが、全く歯が立たない。必中技があるにもかかわらず一撃も攻撃を入れられず、ダメージと言えるダメージは身代わりで削った体力くらいだろう。
「だけど……俺にはまだこいつがいる! 頼んだ、テールナー!」
 レストの最後のポケモンは、テールナー。ゲコガシラには相性が悪いため、前の二体よりも苦戦しそうではある。
「あ……テールナー。レストくんのフォッコも、進化、したんだ?」
「……まあな」
 今はそんな呑気なことを言っていられる場合でもないのだが、優位な立場にいるトイロは余裕があるようだ。元々の性格かもしれないが。
(いや、優位っつっても、俺もあいつも残りポケモンは一体なんだよな……確かに相性はテールナーが悪いが、そこまで優位じゃない)
 実際、レストは相性をひっくり返すバトルは何度も見ている。だからこの場合、レストが自分が不利だと思い込むほど、心理的にも追い詰められていると見るべきだろう。
「……くそっ。テールナー、炎の渦!」
 テールナー対ゲコガシラ、先手を取ったのはテールナーだ。
 まずテールナーは、素早いゲコガシラの動きを止めようと、炎の渦を放つが、
「身代わり、だよ」
 ゲコガシラが作る分身で防御されてしまい、攻撃が透かされる。
「電光石火」
「っ、来るぞ! グロウパンチ!」
 指示は出したが、かなり遅い。テールナーが拳を握った瞬間にゲコガシラが突撃し、テールナーの身体はぐらついた。
「水の波動」
「っ、それはまずい……躱せ!」
 さらに片手を振り上げ、波動を込めた水球を生成するゲコガシラ。それを叩きつけるようにテールナーへと放つが、テールナーもその攻撃がまずいのは分かっているようで、身を捻ってギリギリ回避する。
 さらに、
(ゲコガシラの隙……!)
 水の波動を躱され、ゲコガシラに隙ができている。その隙を、レストは見逃さなかった。
「テールナー、サイケ光線!」
 テールナーは木の枝をゲコガシラに押し付け、先端に念力を集中させる。そしてすぐさま、そこから光線を発射、したのだが、
「飛び跳ねる」
 吹っ飛ばされたゲコガシラは、ボロボロと崩れるように消え去った。いつの間にか身代わりを作っていたようだ。
 そしてその隙に飛び跳ねたゲコガシラ。こちらもいつの間にか、もうテールナー目掛けて落下してきている。
「やばい……躱すんだ!」
 ほぼ反射的にバックステップを踏み、ゲコガシラの落下を回避するテールナー。だが、ここでまた追撃されても敵わない。なので、
「ニトロチャージだ!」
 スピードの高いゲコガシラに対抗するためには、こちらもある程度のスピードが必要と考えるレスト。テールナーは炎を身に纏い、それを推進力にしてゲコガシラへと突っ込む。
「ゲコガシラ、身代わり」
 だが、その突撃は身代わりによって攻撃を肩代わりされてしまう。しかし攻撃自体はヒットしているため、素早さは上がっている。
 さらにテールナーは、追撃をかけた。
「グロウパンチだ!」
「身代わり」
 上がった素早さのまま、今度は攻撃力を上げるべく拳を突き出すが、これも分身で防がれてしまう。
 まったく攻撃の当たらないテールナーだが、ゲコガシラは身代わりを多用している。それはつまり、その分だけゲコガシラの体力が削れているということであり、同時にテールナーの攻撃は身代わりを使わなければ避けきれないという証明にもなった。
(相性が悪いとか、経験が違うとか、そんなことは関係ねえ……とか、自分を奮い立たせてたが、なんだよ、意外と戦えるじゃねえか)
 攻撃は当たらないが、体力の面ではこちらが有利のはずだ。予想外に善戦できているテールナーも手応えを感じているのか、少しだけ笑みを浮かべていた。
「これなら行けるか……テールナー、ニトロチャージ!」
「ゲコガシラ、電光石火」
 炎を纏って突っ込むテールナーを、ゲコガシラは電光石火のスピードで回避。そしてそのまま背後に回り込む——
「っ、テールナー、グロウパンチ!」
 ——が、テールナーの拳で吹っ飛ばされてしまった。しかしその吹っ飛ばされたゲコガシラの姿がボロボロと崩れていくので、また身代わりで防がれてしまったのだろう。
 だが、今のゲコガシラの動きに、レストは違和感を感じていた。
(なんだ今の、さっきまでのゲコガシラのスピードなら、反撃を喰らう前に攻撃できたんじゃないのか……?)
 咄嗟に技を指示したものの、今のゲコガシラ動きは明らかに不自然だった。まるで、わざとテールナーに攻撃を繰り出させていたような、そんな感じだ。
「……テールナー、炎の渦!」
 強いだけでなく、底も見えないゲコガシラに少々の恐怖を覚えつつ、テールナーは渦状の炎を放つ。
 この時も、レストの敗因は無知だった。いや、それだけというわけではないが、彼が無知でなかっただけで、彼はもっと善戦できていただろう。
 なぜなら、

「ゲコガシラ、水の波動」

 迫り来る炎の渦に対し、まるで砲弾のような巨大な水球が、ゲコガシラの手中で生成され、解き放たれた。今までの水の波動とは比べ物にならない大きさだ。
 その水の波動は容易に炎の渦を突き破り——テールナーへと、直撃する。
「テールナー——!」
 その一撃でテールナーは吹っ飛ばされ、岸壁に叩きつけられる。
 そしてテールナーは——戦闘不能となっていた。



はい、あけましておめでとうございます。新年初の更新です。しかしレストは、新年早々トイロに敗北してしまいましたが。文字数もかなりきついので、あとがきはこの辺で終わらせていただきます。次回はなにをするか未定ですが、とりあえず今回のゲコガシラの戦法の種明かしをしようかと。それではみなさん、今年もよろしくお願いします。次回もお楽しみに。