二次創作小説(紙ほか)
- 2話 出発・旅立ち ( No.5 )
- 日時: 2013/11/30 12:40
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「おぉ……!」
初めてボールを開いた感触に感動を覚える。そしてすぐさま、飛び出したポケモンに目を向けた。
「このポケモンは?」
「その子はフォッコだね。炎タイプのポケモンで、実は君たちが選んだ三匹の中で紅一点、唯一のメスだったんだよ」
狐ポケモン、フォッコ。
黄色い体毛に覆われた狐のようなポケモン。耳や尻尾の先は赤く、その暖かな色合いやほんのり感じる熱気からも炎タイプであることはうかがえる。
「確かに雌っぽいな……これからよろしくな、フォッコ」
フォッコを抱え上げると、やはり体温が高いようで温かかった。レストの呼びかけに、フォッコも答えるように鳴く。
「うん、君たちはいいコンビになりそうだね。トイロちゃんは?」
今度はトイロに視線を向ける。また立ったまま寝ているのかと思ったレストだが、今度は起きていた。そしてポケモンを出している。
「…………」
「……あの、博士。あのポケモンは?」
「ケロマツだよ。水タイプのポケモンで、ぼんやりしてるように見えるけど、意外と鋭いんだよね」
「はぁ」
泡蛙ポケモン、ケロマツ。
見た目は蛙そのもので、体色は薄い水色。首周りには白いファーのようなものが巻かれているが、実際は体内の成分でできた何かなのだろう。
トイロはしゃがみ込んでケロマツをジッと見つめる。対するケロマツも糸目でトイロを見つめ返している。
互いに一言も交わさず、微動だにしない静止した時空が、両者の間には構築されていた。
「あれも、いいコンビなんすかね……」
「どうだろう……波長は合いそうだけどね。まあトイロちゃんなら大丈夫だよ」
具体的に何がどう大丈夫なのかは分からないが、確かに気が合いそうではあった。
シャロットはまだボールが一つ残っているケースを閉じて机に置き、今度は別の箱から赤い端末のような機械を取り出す。
「はいはい注目だよ。シャロット博士からのプレゼントその二だよ」
「その二て……何すか、これ?」
レストとトイロに渡された機械。扁平な長方形、軽くて持ちやすい大きさで、操作するためのキーがいくつかあるが、表面の大部分は画面らしきものに圧迫されており、真っ黒である。
「ふっふっふ、それはポケモン図鑑、出会ったポケモンを次々と記録していくハイテクな機械だよ。まあ、今じゃ結構普及してるから、持ってるトレーナーも多いけどね」
溜めて大袈裟に言ったわりには珍しいものでもなかった。しかし旅をするのに便利なものではあるだろう。ありがたく頂戴しておく。
「それからモンスターボールもいくつか渡しといてあげるよ。ポケモンを弱らせてからボールを投げると捕まえやすいから、気に入ったポケモンを見つけたら投げてみてね」
残る箱から五つずつモンスターボールを取り出し、これもレストとトイロに渡すシャロット。飄々としている感じではあるが、やはりポケモン博士というのか、新人トレーナーへのサポートはしっかりしている。
「さて、これで私から渡せるものは全部渡したね。これで君たちは晴れて一人のポケモントレーナー、自分のやりたいことをやりたいようにやるといいよ。ホーラ地方を巡って思いで作りをするのもいいし、ポケモンとの絆を深めあってもいい、各々が思う道を進んで行ってね……なーんて言っても、ピンと来ないよね?」
最後の最後で、シャロットは核心を突いてくる。レストがまさに思っていたことだ。
「だからとりあえずは、ポケモンジムに挑戦するといいんじゃないかな?」
ポケモンジムとは、多くのトレーナーが目指すポケモントレーナーの最高峰、ポケモンリーグに至るまでの通過点だ。すべてではないが各町に一つのジムが置かれており、そのジムを取り仕切るジムリーダーがいる。このジムリーダーに実力を認められることでジムバッジという証が与えられ、これを八つ集めるとポケモンリーグに挑戦することができるのだ。
「トレーナーって言ってもいろいろあるけど、やっぱりまずはスタンダードにバトルの腕を磨くべきだよ。そうしながら、少しずつ自分の道を見つけていけばいいよ」
「そうか、そうですね。分かりました」
「うんうん、素直ないい返事だね。トイロちゃんは?」
「えっと、うん。私も、そう、する?」
「だから何で疑問形なんだ」
まだレストはこの地方のことも、ポケモントレーナーが何たるかもよく理解していない。だからまずはそれを理解するところから始めなくてはならない。そのためには、やはりポケモンと共に戦い、研磨していくことが大事だろう。
「とりあえず、ここから一番近いのはリョフシティかな。近いって言っても歩くとそれなりにかかるけど……ま、その間にポケモンを強くしたり、ポケモンを捕まえたりするといいよ。場所は道路に立ってる標識を見て進んで行ってね」
言うことをすべて言い切ったというように息を吐く。そしてシャロットは、それじゃあ、と少し溜め、
「頑張れ、新人さんたち」
新しいポケモントレーナーを送り出す。
「はい! ありがとうございました!」
「うん……行ってきます」
そしてレストとトイロ、二人のポケモントレーナーが、新たに旅立った。
というわけで三回目です。今回の登場ポケモンはカロス地方ベースということで、御三家も第六世代です。レストは炎タイプのフォッコ、トイロは水タイプのケロマツですね。なぜレストがフォッコなのかという理由ですが、まあいろいろありますけど、一番の理由は白黒が最初にフォッコを選んだからですね。相対的に、トイロにケロマツを選ばせる予定だったので、そこから逆算してケロマツには不利なフォッコを選ばせたというのもありますが。そういえば、歴代主人公の中で最初のポケモンが雌なのはこれが初ですね。歴代というほど多く主人公がいあるわけではないですが。さて次回は、トイロとのイベントですかね。イベントというか、ポケモン小説ならこれだろ! みたいなものです。わざわざ隠すことでもない気もしますが。では、次回もお楽しみに。