二次創作小説(紙ほか)
- 12話 着替え・ソンサク洞 ( No.72 )
- 日時: 2013/12/01 23:14
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
リコリスの強い要望により共に旅をすることとなったレスト。しかし彼は街を出たところで、ふと思い出す。
「そういや、特に目的地とか決めずに出発しちまったけど、次はどこの街に向かえばいいんだ?」
「早速それっ? まったくもう、レスト君は。あたしがいなかったら次の目的地も決まらないなんて……」
などと言いながら、リコリスはホロ。ターミナルでタウンマップを出し、近辺の街を検索する。
「うーん、ここから近い街かぁ。いくつか候補になりそうなのはあるけど……あ、ソンサクシティもこの近くにあるのか。ねえレスト君、次はソンサクシティに行こうよ! あの街にはジムもあるよ!」
「なんか急にテンション上げ始めたな……別に構わねえけどよ」
ジムがあるのなら、レストにとっては好都合だ。
「よーし、なら早く行こうよ! ソンサクシティには、この先にあるソンサク洞を抜ければすぐ着くよ」
と言うと、リコリスはパタパタと走っていく。
「っておい! 待てよ!」
そしてレストも、走ってその後を追いかける。
所変わって、テイフタウン、ポケモン研究所。
シャロットは何の連絡もなしに突然訪れた少女の対応をしていた。やたら興奮しており、しかもそれがトレーナーになれるからというわけでもなさそうなのが妙だったが、あまり気にしなかった。
少女はそんな興奮状態で、理路整然としない支離滅裂な説明で自分の目的を告げたのだが、ほとんど理解できなかった。理解できたのは誰か人を探しているということと、その人物がこの最近地方に来たこと。そしてその条件に合致する、シャロットが最近知ったばかりの少年の名前だった。
「まあ君の言いたいことはよく分からないけど、トレーナーになるっていうのならその後押しはするよ。どんな目的でトレーナーになってもいいし、目的をもってトレーナーになることもいいことだよね。私は確固とした意志を持って行動する子が大好きだよ」
と言ってシャロットは少女に、トレーナーとして必要な道具一式を手渡し、最後にポケモンが入ったモンスターボールを授ける。
「でも、ひとつ君に謝らないといけないことがあるんだよね。実は最近、君と同じように旅立ったトレーナーが二人いてね。歳は君と同じくらいなんだけど、その二人にもポケモンを渡しちゃったから、今渡せるポケモンはその子しかいないんだよ」
申し訳なさそうに語るシャロットだが、少女は対して気にしている様子はない。というか、他のところに気が向いているようで、こちらを気にしている余裕がない、といった感じだ。
「……まあ、いいよね。とにかく、これで君も立派なトレーナーだよ。目標があるのなら、その目標に向かって、頑張ってね」
そしてまた一人、新しいトレーナーが、巣立っていった。
急ぎ足でたったか先へと進んでいたリコリスだが、野生のポケモンが出て来る場所でレストがそれに付き合うわけもなく、結局はリコリスがレストのポケモン捕獲に付き合わされることとなった。
そして一時間後。レストとリコリスは、ようやくソンサク洞の目の前まで来た。だがすぐには入らず、とりあえずはすぐ近くにあったポケモンセンターに入ってポケモンと体を休めることにした。
「よしっ。ポケモンの回復は終わったな。モンスターボールも補充したし、これですぐに出られる」
だが、しかし、
「……リコリスの奴、遅いなあ。何やってんだ?」
ふとそんなことを呟くレスト。レストもここに来るまでにかなり時間を費やしているので、あまり人のことは言えない。
リコリスはポケモンの回復を任せると、すぐにどこかへ行ってしまった。それっきりしばらく帰ってこないので、トイレということでもないだろう。
と、思っていると、
「お待たせー、レスト君」
リコリスが上機嫌な様子で戻ってきた。
「遅えよ。ほら、さっさと行くぞ」
「え? う、うん……」
「ソンサク洞だったか? そこにも見たことないポケモンとかいるんだろうな。楽しみだ」
と言って、レストがポケモンセンターから出ようとすると、リコリスは慌ててそれを止める。そして自分の服の裾を少し引っ張った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってレスト君! なになに!? あたしの格好にはノーコメント!? 無視!? それって酷くない!?」
「あ? あぁ……そういやそうだな。着替えたのか?」
「何で今気づいたみたいな反応なの……普通気付くでしょ。というか気付いてよ、前髪少し切ったとかじゃないんだし……」
レストの言うように、リコリスの服装は変わっていた。
ピンク色のワンピースコートと薄ピンク色のタイツ。白いジョッキーロングブーツに白いキャスケットを被っており、髪も下して前髪にヘアピンを付けている。上から下まで様変わりだ。
「なんかゴテゴテした格好してんな」
「女の子のオシャレに向かってゴテゴテとか言わないで! まったく、それにこの格好にもちゃんと意味はあるんだよ」
頬を膨らませて起こるリコリスだが、すぐに諦めたように嘆息する。
「まだ原因とかは詳しく分かってないんだけど、ソンサク洞は外部とか、他の似た気候帯にある洞窟と比べて気温が低いんだよ。だから防寒も兼ねて、ね」
「そうか」
「うっわ、反応つめた……目下一番冷めてるのはレスト君だよ……」
ガックリと肩を落とすリコリス。しかしレストにお洒落を語ることは無謀だと判断したのか、これ以上時間をかけていられないからか、とぼとぼと歩き始めた。
「じゃあ、もう行こうか」
「ああ、そうだな」
ソンサク洞はリコリスの言った通り肌寒い洞窟だった。しかし我慢できないほどでもない。
それに、それよりも我慢できないことがあった。それはレストとリコリスの両方に当てはまるが、両方とも違うものだ。というのも、
「ユキワラシ、ココドラ、コジョフー、テッシード……これでこの辺にいる種は大体捕まえたか?」
「やっぱりこうなった!」
洞窟に入ってから約二時間。リコリスは対に耐えきらなくなり叫び出した。
「んだよ、急に叫ぶなよ……」
「叫びたくもなるよ、こんなとこに何時間もいれば……はぁ、厚着しといてよかった。レスト君もポケモン捕まえるのはいいけどもう少し周りにも気を遣ってよ。冷えは女の子の天敵なんだよ?」
「だったら厚着すればいいじゃねえか」
「だからしてるじゃんさ!」
素なのか狙ってなのか分からないレストの発言にまた叫ぶリコリス。
「もう、こんなとこにいつまでもいてられないよ。早く先に行こうよ」
「まあもう目ぼしいポケモンもいなさそうだしな。進みながら探すとするか」
完全に諦めたわけではないが、やっと先に進む気になったレストにリコリスは胸を撫で下ろす。
が、その時だ。
「あ? なんだありゃ?」
「ズバットの群れ……?」
前方から、大量のズバットが群れをなして飛んで来た。二人は反射的に屈み、ズバットの直進をやり過ごす。
「……行ったか」
「だね。それにしても、何だったんだろう? なんだか、何かから逃げてるみたいだったけど」
「噂に聞く密猟者って奴か? 珍しいポケモンを捕まえるって聞いたが、ズバットってそんなに珍しいのか?」
「何年前の情報なの、それ? 最近は密猟者なんてそんなにいないよ」
とはいえ、先ほどのズバットの挙動は明らかにおかしかった。密猟者というのも仮説としては間違っていない。
「他にあるとすれば、大型のポケモンがズバットの群れが暮らしてたところで暴れてるとか?」
「それってやばくないか? 放っておいていいのかよ」
「うーん、確かに大事だけど、自然界のことに人間が手出しをするのはあんまりいいことじゃないからね……大抵は時間が解決してくれることだし、干渉しないのが無難だよ」
まだ何があるか分からない以上、下手に首を突っ込むのも危険だと判断したのか、リコリスは洞窟を進んでいく。その説明にいまいち釈然としないレストだったが、しかしポケモンに関する知識ならリコリスの方が上なので、とりあえずは彼女に従うことにした。
二人は沈黙のまま、暗い洞窟の中を進んでいく。
というわけで今回はダンジョン、ソンサク洞の探索です。まあ大したことはなかったですがね。強いて言うなら、ズバットの群れが関係している、くらいですか。それと今回はリコリスが服装や髪形を変えています。これはXYを女主人公でプレイした人ならわかるかもしれませんが、ここでのリコリスの服装はXYの女主人公で着せ替えられる服装をモデルとしております。寒冷地仕様というだけでなく、これからも頻繁に変える予定なので、どんな格好かいろいろ想像してみてください。ちなみに白黒は男主人公でXをプレイしているので、姉のYを借りて着せ替え、それを見ながら書いています。とはいえ服はお金かかりますからね。姉もすべての服を揃えているわけではないので、金稼ぎと購入は白黒がやっていて、これがなかなか骨です。しかし女主人公は服のバリエーションの多さが凄いですね。廃人の着せ替え人形と揶揄されるだけのことはあります。さてあとがきが長くなりました、次回は今回の騒動勃発、でしょうかね。というわけで、次回もお楽しみに。