二次創作小説(紙ほか)

13話 ソウマ・異変 ( No.73 )
日時: 2013/12/02 03:14
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 会話がほとんどないまま洞窟を進む二人。しかしその沈黙に耐えかねたのか、はたまた別の理由か、レストが口を開く。
「……しかし、なんか妙なんだよな。胸騒ぎがするっつーか」
「レスト君の勘がどれほどアテになるんだろうね。まあ仮に何かあっても、危険がないとは言い切れないし、ここは見て見ぬ振りが一番だよ」
 さっきは冷たいと言われたレストだが、リコリスだって人のことは言えないのではないか、などと思いながら歩を進める。
 しかし、リコリスの歩調が思いのほか速い。
「おい、そんなに急ぐなよ」
「急ぐよ。ソンサクシティって言ったら、ホーラ地方でも結構有名な観光地だしね。それにこんな寒いところ、早く出たいし」
「だからってそんなに急いでっと転ぶぞ。それかぶつかるぞ」
「あはは。転ぶのはともかく、こんな洞窟の中で人とぶつかるなんてことあるわけ——」

 ゴンッ

 と、リコリスが洞窟の曲がり角を曲がったところで、何かに衝突し、後ろに倒れた。
「お、おい、大丈夫かよ。だから言わんこっちゃない」
「っー……!」
 リコリスは頭を押さえながら、曲がり角の死角になっていたところを見遣る。そこにはリコリスとぶつかったらしい少年が、こちらも頭を押さえて倒れていた。
「お前も大丈夫か? ほら、手ぇ貸してやるから掴まれ」
「あ、すいません……」
 レストは少年の手を掴み、一気に引き起こす。
 立ってみればリコリスと同年代程度で、流石にリコリスほど低くはないが小柄な少年だった。あまり長くない黒髪に、コートとジーンズというラフな出で立ち。眼鏡とそばかすが特徴的だ。
「はいこれ。ごめんね、ちゃんと前見てなくて」
「いえ、こちらも慌てていたので……ありがとうござます」
 リコリスはぶつかった衝撃で落ちた少年のキャスケットを拾い上げて手渡す。少年はそれを受け取り、かぶり直した。
「何か急いでたみてえだけど、どうしたんだ?」
「えっと、話せば長くなってしまうんですけど……」
 何となく場繋ぎのために聞いたのだが、少年の話は本当に長かった。
 しかし同時に、レストが少なからず気にしていることでもあった。
「実は今、このソンサク洞に異変が起こっているようなんです。野生のポケモンがいきなり逃げ出したり、こぞって住処を移動したりする現象が起こっています。僕はその異変の原因が何なのかを探り、解決しようとこの洞窟を駆け回っているところなんです。まだ何が原因かは確定できていないのですが、恐らく何者かの手による人為的な工作活動が行われていると考えられます。このままだとこの洞窟のポケモンたちが暴れたり、最悪生態系に影響が出る恐れもあります。そうなると個体としてのポケモンだけでなく種としてのポケモンの存続が危惧されることもありえますので——」
「お、おい、ちょっと待て。分かった、分かったから一旦待て!」
 このままではいつまで経っても話が終わらなさそうだったので、レストは一度少年にストップをかける。
「あ、すいません。つい……」
「それはいいけど、さっき君、この洞窟に異変が起きてるって言ったよね? それって、さっき群れで飛んでたズバットとかも関係あるのかな?」
「あなたたちも見たんですか。そうですね、恐らく無関係ではないと思われます」
 どうやらこの少年は、レストたちが不振がっていることの情報を持っていて、しかもその真相を探っているらしい。
「……なあ、リコリス」
「言いたいことは分かるよ。さっきはあたしもああ言ったけど、気にならないわけじゃないんだ」
「そうか。なら」
 レストは少年へと向いた。レストの人相の悪さからか、少年は一瞬ビクッと体を震わせたが、レストは気にせず続ける。
「お前は、この洞窟の異変の原因を突き止めようとしてるんだよな?」
「は、はい。そうです」
「だったら、勝手な頼みで悪いんだが、俺たちも同行してもいいか? どうしても気になってな」
「はぁ……それは、構いません。犯罪を働くトレーナーだったら、僕一人の力では及ばない可能性もありますし、むしろこちらからお願いしたいくらいです」
 かなり友好的に受け入れる少年。
 少年はハッと何か思い出したような素振りを見せ、
「そういえば、まだ名乗っていませんでした。僕はソウマといいます」
「俺はレストだ。んでこっちが」
「リコリスだよ! よろしくね、ソウマ君」
 こうして、レストとリコリス、そしてソウマの三人による、ソンサク洞の探索が進められるのあった。



 ソウマが言うには、犯人がどこにいるかの目星は大体ついているそうだ。ソウマを先頭に、レストとリコリスが続く。
 その途中、ふとリコリスが口を開いた。
「ちょっと気になったんだけど、ソウマ君はどうしてこの洞窟の異変を調べようとしてるの? 普通はこういうのって、警察とかの仕事だと思うんだけど」
「そうなんですが、証拠がなければ警察は動いてはくれません。だったら僕たちが自ら突き止めるしかないのです。それに僕が目指すのはポケモンレンジャー。ポケモンによって築かれた自然を破壊するなんて、見過ごせませんよ」
「ポケモンレンジャー? 何だそれ? トレーナーとは違うのか?」
 聞きなれぬ単語に問い返すレスト。その無知っぷりに呆れてか、リコリスは溜息をついて説明する。
「あたしも詳しい定義は知らないんだけどね。トレーナーがポケモンを使役して戦うのなら、ポケモンレンジャーはポケモンと協力して自然災害なんかの障害に立ち向かっていく、って感じかな」
「なんかよく分からないんだが。ポケモンレンジャーはバトルはしないのか?」
「どうなんだろ、しないってことはないと思うけど……地方によってポケモンレンジャーの仕事もがらりと変わるから、一概にこうとは言えないんだよ。少なくともこの地方では、自然と共存して自然界のポケモンの力を引き出す、っていう人たちのことを指すのが一般的だけど」
 いまいち要領を得ないレストだったが、自然、共存というのがキーワードであることは理解した。
「で、ソウマはそのポケモンレンジャーになりたいのか?」
「はい、それがぼくの夢です。ポケモンレンジャーはどんな障害をも乗り越える存在。だから僕も、この夢を叶える途中にどのような障害があっても、それを乗り越えて必ず叶えてみせます!」
 力強いソウマの言葉。気の弱そうな少年だと思ったが、意外と意志は固かった。
「夢、か……」
 ふと呟くレスト。漠然としたトレーナーへの憧れから旅に出たレストだが、その目的はあやふやだ。シャロットは旅の中で見つければいい、焦ることはないと言っていたが、それでも悩んでしまう。
「……ま、でも、ここで悩むことでもないか」
「? レスト君、何か言った?」
「何でもねえよ。それより、なんか変な音聞こえね?」
 レストがそう言うと、三人は立ち止まり、耳を澄ませる。
「……確かに。これは、ツルハシやシャベルの音……? 何かを掘っているのでしょうか?」
「みたいだな。数は結構多そうだ」
「レスト君、耳いいね。あたしにはなんか音が聞こえるってくらいしか分かんないよ」
「田舎育ちなもんでな」
 答える気があるのかないのか、レストはそう返す。
 なんにせよ、その掘削がこの洞窟に怒っている異変である可能性は非常に高い。ほぼ確定と言ってもいいだろう。
 三人は急ぎ足で洞窟の中を進み、その音源へと向かう。そしてしばらく進むと、天井が高く、ドーム状の広い空間に出た。
「これは……」
「何なの、これ……?」

 その空間には、黒と灰色の服を着た男たちが数多くおり、工具を振るっていた。

「こいつら……カオスじゃないか?」
「カオス? 何ですか、それは?」
「あたしたちも詳しくは知らないけど、犯罪者の集団か何かだよ。昨日もカンウシティで甘い蜜がたくさん盗まれたの」
 そのカオスの下っ端らしき者たちは、汗だくになりながらツルハシを振り下ろしたり、シャベルで穴を掘っている。機械らしきものはほとんど見られず、すべて肉体一つで行っていた。
「あいつら何してるんだ……?」
「何かを掘り出しているようです。鉱石、でしょうか?」
「でもそういうのって、普通は機械を使うもんじゃないの? 何百年も昔ならともかく、最近じゃいくら数が多くても人間の手じゃ効率悪すぎるよ」
 と思っていたが、奥からポケモンが列をなして大量の石を運んできた。どうやらポケモンもこの掘削作業に利用されているらしい。
「どうする? 下手に飛び出すと危険だけど……」
「もう少し様子を見ましょう。こういう集団は、リーダー格の人が必ずいるものです。その人を倒せれば、この人たち全員を無力化することとなります」
「リーダー格か……さっきからずっと気になってたんだが、あいつじゃねえか?」
 そう言ってレストは、この空間にある唯一の機械の上に座っている、一人の人物を指差した。



はい、そういうわけで今回の騒動の原因はカオスが絡んでいます。大体の方は予想つきましたかね? それと今回は大関さんのオリキャラ、ソウマも登場しました。ポケモンレンジャーがどの定義なのか分からなかったので曖昧にしましたが、大丈夫でしたか? キャラ崩壊などの不備がありましたらお申し付けください。ちなみに採用するオリキャラですが、とりあえず今のところほぼ確定なのがソウマを含めて五人ほどです。物語の展開によっては増減することもありますが。ちなみに確定したキャラは今のところ公開しないつもりです、なので物語の中で明かしていく形になりますね。では次回、カオスとの戦いです。お楽しみに。