二次創作小説(紙ほか)

15話 変則バトル・ゴーストダイブ ( No.80 )
日時: 2013/12/03 15:59
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「ほら、待ってやるからとっとと攻撃してきな」
 ゲンブはくいくいと指を振り、挑発してくる。向こうから攻めてくる気はないようだ。
「舐められたものだな……フォッコ、ラクライ、行くぞ!」
 レストは、挑発に乗ったわけではないだろうがフォッコとラクライを繰り出すと、二体で攻めに行く。
「相手は草とゴースト。だったらフォッコ、ニトロチャージ! ラクライ、噛みつく!」
 フォッコは炎を纏い、ラクライは牙を剥き、それぞれ別方向からパンプジンへと突っ込む。しかし、
「パンプジン、ジャイロボール!」
 パンプジンはその場で高速回転し、フォッコとラクライを弾き飛ばした。
「なっ……!」
 幸い効果今一つの技だったからか、二体とも戦闘不能ではない。
 そんなフォッコとラクライを見てゲンブは、不満げだがどこか楽しそうに声を張り上げる。
「おせー、超おせー、旧世代PCみてーにおせー。遅すぎて一撃で倒せなかったよ。弱すぎだろお前のポケモン」
「はぁ? 意味分かんねえよ。何言ってんだお前」
 遅すぎて倒せない、と言う言葉の意味が分からないレストったが、ソウマが横から説明する。
「ジャイロボールは、相手よりも遅ければ遅いほど威力が上がる技なんです。そしてあのパンプジンは、大きさから察するに特大サイズ。素早さはかなり低いですが、その分攻撃力や体力に優れる個体です」
 ソウマが言うには、パンプジンは個体ごとに大きさが違い、小さいサイズ、普通のサイズ、大きいサイズ、特大サイズの四種類に分けられるらしい。
 そして最も鈍足な特大サイズのパンプジンが、相手より遅いほど威力の上がるジャイロボールでフォッコたちを倒せなかったということは、即ちフォッコたちが特大サイズのパンプジン以下のスピードしか持たないことになる。
「そんなに遅いなら、普通に攻撃した方が手っ取り早いか。パンプジン、種爆弾!」
 パンプジンは髪の毛のような腕から握っていた種子を無数に投げつける。
「ヤンヤンマ、影分身で攪乱してください!」
 ヤンヤンマはパンプジンが種子を投げるより速く分身を作り出し、パンプジンの攻撃を散らす。ヤンヤンマは技構成から攻撃に参加できないので、サポートに徹している。
「プロトーガ、水鉄砲!」
「フォッコ、火の粉! ラクライ、電撃波!」
 そして隙を突いて、三匹による攻撃を浴びせるが、あまり通用しているようには見えない。
「ちっ、ちょこまかとうっせー虫だな。荒らしかてめーは。焼き払えパンプジン! 火炎放射!」
 パンプジンは影分身で気を散らしてくるヤンヤンマに向かって、下半身のかぼちゃの口から激しい炎を噴射する。
「あいつ、草タイプの癖に炎技を使えるのか!?」
 驚愕するレストだが、ソウマからすれば既知の知識だ。驚くことはない。
 加速で素早さ、影分身で回避率を上げているので火炎放射もヤンヤンマには当たらない。
「くっそうぜえ、スレ上げる加速みてーだ。だったら先にあっちを潰すか。パンプジン、ジャイロボール!」
 パンプジンは攻撃対象をフォッコたちに移し、高速回転しながら突っ込んでくる。
「っ、プロトーガ、鉄壁です!」
 突撃してくるパンプジンとフォッコたちの間に割って入ったプロトーガは体を鋼鉄のように硬化させてパンプジンの攻撃を防ぐが、思いのほかダメージが大きい。
「火炎放射!」
「っ、レストさん! フォッコとラクライを下げてください! プロトーガ、波乗り!」
 パンプジンは至近距離から炎を噴射し、プロトーガもそれに合わせて大波を放つ。
 レストの反応は少し遅かったが、しかしプロトーガの波乗りはパンプジンの炎でほとんど蒸発してしまい、フォッコたちにダメージはなかった。
「もう一発だ、パンプジン!」
「プロトーガ!」
 間髪入れず、パンプジンは再び火炎を放つ。今度は相殺もできず、プロトーガは火炎放射の直撃を受けてしまう。
「フォッコ、パンプジンの動きを止めるぞ。炎の渦!」
 フォッコは渦状の炎を放ちパンプジンを閉じ込め、動きを止めた。
「ソウマ! プロトーガを下がらせろ! ラクライ、電撃波だ!」
 プロトーガがパンプジンから離れる時間を確保するために、ラクライは電撃波で少しでもパンプジンの動きを鈍らせる。だがその時間もほんの僅かだ。
「うっぜーな。カスがなにしようとカスだっての。パンプジン、ジャイロボール!」
 パンプジンはまず、高速回転して炎の渦を振り払い、
「種爆弾!」
 回転の勢いを殺さず種子を辺りにばら撒き、炸裂させる。狙いがでたらめだが、それは逆に向こうの狙いが読めないということなので、迂闊に動けない。
「お前らの相手も飽きたし、もう終わりにするか。パンプジン」
 ゲンブがパンプジンに呼びかけると、パンプジンはニヤリと笑い、

「ゴーストダイブ!」

 一瞬にして消えた。
「!? どこに消えた……?」
 突如姿を消したパンプジンを探し、キョロキョロと辺りを見回すレスト。
 そして次の瞬間。
「! ラクライ!」
 パンプジンがラクライの背後に出現し、殴り飛ばした。
 その一撃でラクライは戦闘不能となる。
「な、何だ今の技は……」
「ゴーストダイブは、一度姿を消してから攻撃する技。避けるのは困難です」
「そういうことだ。もう一度ゴーストダイブ!」
 またしてもパンプジンが姿を消す。次に狙われるのはフォッコか、プロトーガか、それともヤンヤンマか。
「っ、ヤンヤンマ! 影分身です!」
 虚空が揺らいだ一瞬、それをソウマは見逃さなかった。ヤンヤンマもソウマの指示を受け、一瞬で自らの分身を作り出し、直後に現れたパンプジンの一撃を躱すが、
「無駄無駄無駄! 火炎放射!」
 続け様にパンプジンは炎を噴射。ヤンヤンマもこの不意打ちには即応出来ず、直撃を喰らい身を焦がしながら墜落して行った。
「ヤンヤンマ!」
「これで終わりじゃないからな。パンプジン、種爆弾!」
 さらにパンプジンは、空中から大量の種子を投げ落とす。
「フォッコ、火の粉だ!」
「プロトーガ、鉄壁!」
 フォッコは火の粉を放って種子をいくつか誤爆させ、プロトーガは再び防御力を上げて攻撃を防ぐ。
 しかしフォッコは効果いまひとつ、プロトーガも四倍弱点だが鉄壁二回掛けと特性ハードロックでかなり威力を減衰していても、ダメージが大きい。もう二体とも疲労困憊だ。
「くそが……!」
「この人、強い……!」
 四体のポケモンが総出でかかっても、ほとんどダメージが与えられない。攻撃を防ぐだけで精一杯だ。
 そんな二人と二匹を見て、ゲンブはやっと仕事を終えたようにため息をつく。
「はーぁ、やっと終わる。面倒だったなぁ。とどめを刺せパンプジン、火炎——」
 と、その時だ。
「っ!? パンプジン!」
 パンプジンが背後から放たれた光に吹っ飛ばされた。戦闘不能ではないようだが、不意打ちということもありダメージは大きい。
「っ、マジカルシャイン……誰だてめー! 出て来い!」
 背後の、暗闇に向かって叫ぶゲンブ。しばらくすると、そこから小柄な少女が飛び出す。
 リコリスだ。
「二人とも! 大丈夫!?」
「リコリス! お前、いつまで経っても出てこないと思ったら、そんなとこにいたのか!」
 レストは密かにリコリスの救援を待っていたのだが、なかなか出て来ないので少し心配していた。
 それはともかく、
「こっちにも広間があったんだけど、そこでも何か掘ってたみたいなの。そこの下っ端も全員倒したから戻ってきたんだけど」
「そうか……とにかく助かった」
 リコリスの援護射撃で、フォッコたちはまだ瀕死になっていない。今のうちに、レストとソウマは倒れたラクライとヤンヤンマをボールに戻す。
「あー、うぜー! なんだよこの幼女、お前らロリコンか? リア充か? うぜー、爆発しろ!」
 また苛立っているのか、叫び散らすゲンブ。しかしリコリスの顔を見るや否や、怪訝そうな表情を見せる
「あ? なんかお前の顔、どっかで見たような……まーいーか。んなことより、また面倒なことに——」
 と、その時。
 ゲンブが寝転がっている機械が、ピーピーと電子音を鳴らす。
「お、やっとノルマクリアか、おせーな。やっぱコスト削減とか考えないで、普通に掘削用の機械持ってくりゃよかった」
 やれやれと呟くゲンブ。
 レストたちは掘り出したものをこの機械の中に集めていたので、これは掘り出したものを貯蔵するものだと思っていたが、それだけでなくこれ単体でも採掘する機能があったようだ。
「だったらもうここに用ねーや。パンプジン、ログアウト」
 ゲンブは手早くパンプジンをボールに戻すと、それをポケットに突っ込み、違うボールを取り出す。
「ログイン、ゴルーグ」
 そして代わりに出て来たのは、巨大なロボットのようなポケモンだ。
 ゴレームポケモン、ゴルーグ。
「下っ端どもは放っておいていいかな。どうせ使えねーカスばっかだし。んじゃうちはもう落ちるわ。乙ー」
 とゲンブが言うのとほぼ同時に、ゴルーグがゲンブとゲンブが乗っている機械を抱え込み——

「ゴルーグ、ゴーストダイブ」

 ——消えた。
「っ! あいつ、まさかまだ……!」
「いえ、今のゴーストダイブはきっと、逃走のためだと思われます。流石にこんなところで飛んでは、トレーナーも無事ではないでしょうし……」
 ともあれ、レストたちはゲンブを逃がしてしまった。周りを見ると、いつの間にか下っ端たちもいなくなっている。波で押し流した後すぐにゲンブとのバトルに突入したため気付かなかったが、その間に逃げてしまったのかもしれない。
「結局、僕たちは何もできませんでしたか……」
「そんなことないだろ。あいつはノルマはクリアしたって言ってたが、逆に言えばノルマ以上のものは持っていかれなかったんだ」
「前向きだねぇ……ま、そう考えるのか一番かな。何事もポジティブに考えなきゃ」
「そうですか……そうですね。見たところ、大きく破壊された様子もありませんし、最悪の事態は回避できましたよね」
 そう言って、ソウマも納得したようだった。



 それから、レストたちとソウマは別れた。というのも、ソウマはレストたちとは方向が逆で、カンウシティに向かっていたらしい。
「ポケモンレンジャーになるためには、強さも必要ですからね。そのためには、各地のジムを巡り、ジムバッジを手に入れ、ポケモンリーグに挑戦するのが適当だと判断しました」
 ということらしい。
「そうか。俺もあんま偉そうなことは言えないが、頑張れよ」
「じゃーねー、ソウマ君」
「はい、今回はありがとうございました。それでは、さようなら」
 ソウマと別れを告げてから、レストとリコリスは洞窟の出口を目指す。その道中、レストは一つのことを考えていた。
(夢、か……俺もそろそろ、自分の旅の目的を探さないとな……)
 自分が旅立った意味、そして意義。ただこのまま、なんとなくで旅を終わらせたくはなかった。
(あいつといる時は、そんな小難しいこと考えることもなかったが……いつまでもそうじゃいられねえし、そもそもあいつはここにはいねえか)
 ふっ、と半ば自虐的な笑みを零すレスト。その時、前方から薄い光が差し込んできた。
「もうすぐ出口だ。やっと抜けられるよー」
「あ、おい待て!」
 パタパタと先に走って行ってしまうリコリス。レストもそれを走って追いかける。
 そして二人は洞窟を抜け、ソンサクシティへと、到着したのだった。



今回も長くなってしまいました。書いていて思うのですが、ゲンブはちょっと口調が滅茶苦茶な気がします。一応セイリュウと同年齢くらいのつもりなんですけど、言葉遣いが雑すぎますね、レストどころか、前々作の暴君さんや最弱科学者より荒いですし、かなり辛辣です。白黒は今までこれほど毒舌なキャラは書いたことがないので、ある意味新鮮です。それと作中でも説明がありますが、ゲンブのパンプジンは厳選が難しいともっぱらの噂の特大サイズです。白黒的に、パンプジンはそこまで好きではないですが、嫌いと言うほどでもないですね。厳選が面倒そうなので、使う気は今のところないですが。では次回、遂にソンサクシティに到着したので、ジム戦……まで、行けるかなぁ? ジムリーダーくらいは出したいところです。というわけで、次回もお楽しみに。