二次創作小説(紙ほか)

18話 ジム戦2・vsシナモン ( No.88 )
日時: 2013/12/06 20:46
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「でてきて、バニプッチ」
 シナモンの一番手は、白いアイスクリームのような姿をしたポケモンだ。
 新雪ポケモン、バニプッチ
「氷タイプだけか……だったら初っ端から行くぞ、フォッコ!」
 対するレストは、炎タイプのフォッコで応戦。相性の上では有利だ。
「先手必勝だ。フォッコ、火の粉!」
 最初に動いたのはフォッコだ。フォッコは大きく息を吸い込み、多量の火の粉を放つ。
「かわして」
 しかし直線的な攻撃なので、バニプッチに簡単に躱されてしまう。
 そして、
「バニプッチ、霰」
 バニプッチはフィールド中央の上部に向かって、大量の冷気を放つ。冷気は周囲の塵や埃を核として膨張し、雲となる。そしてその雲は空気中の水分を取り込んで小さな氷晶を降らせた。
「な、何だ……?」
 レストは降ってくる氷の粒に目を細めながら呟く。見れば、フォッコも少々顔をしかめている。
「霰はね、その名のとおり霰をふらせて天気をかえる技なの。霰状態だと氷タイプじゃないポケモンはちょっとずつダメージを受けちゃうから、きをつけて」
「気をつけてって……」
 とてもジムリーダーの台詞とは思えないが、しかし微量でもダメージを受けるのならば、用心しなければならない。
「ならさっさと決めるぞ。フォッコ、ニトロチャージ!」
「バニプッチ、凍える風」
 フォッコは全身に炎を纏ってバニプッチへと突っ込むが、バニプッチも凍てつく風を吹き付ける。
 凍える風はニトロチャージを止めることはできないが、霰と共にフォッコを包む炎の勢いを削ぎ落とすことはできる。なので、フォッコがバニプッチに接近した頃には、もう炎はほとんど残っていなかった。
「ミラーショット」
 そのタイミングを見計らい、バニプッチは自身に当たる光を凝縮して反射し、フォッコへとぶつける。効果はいまひとつだが、真正面から喰らったのでフォッコも体勢を崩してしまう。
 さらに、
「そこ。バニプッチ、水の波動」
 バニプッチは水を圧縮した波動を撃ち出す。
「っ! 避けろフォッコ!」
 フォッコは地面を転がるように移動し、紙一重で水の波動を躱した。
「危ねえ……水技を持ってたのか」
 さっきは何とか躱せたが、もしも直撃でも喰らおうものなら致命傷は免れなかっただろう。
 流石はジムリーダー、苦手なタイプへの対応はきっちりしている。
「さて、水技があるなら、フォッコじゃきついか。ミラーショットで命中率も下げられてるし」
 加えて霰のダメージもある。天候は永久にこのままではないので、時間を稼げばやがて消えるはずだ。
「フォッコ、一旦戻れ」
 このままフォッコで戦い続けるのは危険だと判断し、レストはフォッコをボールに戻す。そして代わりに、次のポケモンを繰り出した。
「氷タイプへの有効打を持ってるのは、なにもフォッコだけじゃない。行け、コジョフー!」
 レストが交代で繰り出すのは、黄色い体毛のオコジョのようなポケモン。
 武術ポケモン、コジョフー。
 レストがソンサク洞で捕まえたポケモンだ。実戦経験は皆無に等しいが、格闘タイプで氷タイプに弱点を突ける。
「コジョフー、猫騙し!」
 まずコジョフーは一瞬でバニプッチに接近すると、バニプッチの目の前で勢いよく柏手を打つ。
「続けて発勁!」
 猫騙しで怯んだバニプッチに、コジョフーは間髪入れず掌底を叩き込み、吹っ飛ばす。効果抜群なので、ダメージは大きいだろう。
「わわっ、バニプッチ……」
 バニプッチはゆっくりと浮かび上がってきた。ダメージは通っているようだが、バニプッチの体が少しおかしい。
「ダメージが……回復しているのか?」
 コジョフーから受けた傷が、少しずつだが癒えている。
「うん。バニプッチの特性はアイスボディ、霰状態のとき、ちょっとずつ体力を回復できる特性なの」
「マジか……」
 苦い顔をするレスト。これではバニプッチはダメージが蓄積しづらく、倒しにくくなってしまう。
「だったら、回復が追いつく前に決める! コジョフー、発勁!」
「バニプッチ、凍える風」
 コジョフーはバニプッチ目掛けて一直線に駆け、バニプッチは迎撃すべく凍てつく風を放つが、
「躱せ! はたき落とす!」
 コジョフーは跳躍し、バニプッチの脳天に平手を振り下ろして地面へと叩き落とした。
「まだまだ、スピードスター!」
 さらに無数の星形のエネルギー波を放ち追撃をかける。
「水の波動……!」
 バニプッチも負けじと水の波動で反撃するが、素早いコジョフーを捕えられない。
「もう一発、スピードスター!」
「凍える風」
 再び星を放つコジョフーに、バニプッチは凍てつく風を吹き付ける。流石に威力はバニプッチの方が高く、凍える風がコジョフーへと襲い掛かった。
「っ、躱して発勁だ!」
 しかしコジョフーは自慢のフットワークで凍える風を躱すと、バニプッチに接近して打ち上げるように掌底を叩き込み、
「はたき落とす!」
 すぐさま跳躍して、今度は地面に叩き落とす。流れるような連続攻撃で、バニプッチへのダメージも大きいだろう。
「一気に攻めるぞ。コジョフー、発勁!」
 コジョフーは身を引かず、落下の勢いも合わせて地に落ちたバニプッチに向けて掌底を放つ。しかし、
「バニプッチ、凍える風」
 バニプッチは反撃に凍える風を放ち、コジョフーを攻撃。コジョフーは止まりこそしなかったが、掌底の勢いを殺がれてしまい、バニプッチへのダメージは大きくない。さらに凍える風の追加効果で、素早さも落ちてしまった。
「バニプッチ、ミラーショット」
「躱して発勁!」
 バニプッチは光を反射して光弾を放つ。コジョフーはそれを避けつつバニプッチに接近するが、
「凍える風」
 攻撃まで一歩届かず、至近距離からの凍える風を喰らってしまう。
「水の波動」
「っ、躱せ!」
 コジョフーは水の波動を避けようとするが、素早さが落ちてしまたっため、躱しきれない。
「バニプッチ、ミラーショット」
 続けてバニプッチは光弾を発射。動きの鈍ったコジョフーではこの連続攻撃は避けきれず、光弾の直撃を受けて吹っ飛ばされた。
 地面にたたきつけられたコジョフーは目を回しており、戦闘不能だ。
「くっ、戻れコジョフー」
 レストは悔しげにコジョフーを戻す。
「先勝はできなかったか……だが、コジョフーの与えたダメージも大きいはず。頼んだ、フォッコ!」
 そしてレストは、再びフォッコを繰り出す。霰で受けた少量のダメージは、もう回復している。
「うぅ、そろそろさむくなってきたし、はやくこたつにはいりたいなぁ……バニプッチ、水の波動」
 寒いならこんな技使うなと言いたいが、それはさておき。
「フォッコ、躱して炎の渦だ!」
 バニプッチの水の波動を回避し、フォッコは炎の渦を放ってバニプッチを束縛する。
「あ……バニプッチ」
 バニプッチは動きを制限され、さらに炎の渦によるダメージで一時的だがアイスボディでの回復もできなくなる。
「ニトロチャージ!」
 そこで、フォッコは炎を纏って突貫。上手く決まればこれでバニプッチを倒せるかもしれない。そうでなくても、当たれば素早さが上がる。
「それは、ちょっと、ダメ……バニプッチ、凍える風」
 バニプッチは炎の渦に捕まりながらも凍てつく風を放ち、フォッコの炎を削いでいく。そしてまたしても、フォッコがバニプッチの目の前まで来る頃には、炎は消え去っていた。
 だが、レストも同じ轍は踏まない。
「バニプッチ、水の——」
「させるか! フォッコ、ひっかく!」
 フォッコは爪を振り下ろしてバニプッチをひっかき、水の波動を止める。そして、
「火の粉だ!」
 すぐさま息を吸い、その大きく吸った空気と共に大量の火の粉を放ち、バニプッチに吹き付けた。
「わわっ、バニプッチ……!」
 この不意打ちはシナモンも想定外だったようで、バニプッチは対応できずに火の粉の直撃を至近距離から喰らってしまう。
 コジョフーからも効果抜群の攻撃を幾度と受け、体力がかなり減らされていたバニプッチは、その攻撃で戦闘不能となってしまった。
「うぅ、ありがとうバニプッチ。もどってやすんで」
 シナモンはぷるぷると震えながら、バニプッチをボールに戻す。これで残るポケモンはお互い一体だ。
「どうしよう、もうあと一体になっちゃったよぅ……」
「大丈夫か、この人……?」
 最初はまだジムリーダー然とした態度のシナモンだったが、ここに来て弱気を見せ始める。その挙動に、レストは不安を感じる。
「でも……私、ジムリーダーだもん。まだ負けないよ」
 だが、勇気を振り絞るようにきゅっとボールを握り締めると、力強い瞳でレストを見据える。
「私の最後のポケモン……おねがい、でてきて——」
 そして、霰が吹き荒ぶ中、シナモンの最後のポケモンが姿を現した。



そんなわけでレスト二回目のジム戦、相手は氷タイプ使いのシナモンです。今回レストはコジョフーを使っていますが、先に言っておきます。このコジョフーはレストの主力ではなく、単に相性が良いから持ってきただけのポケモンです。このようにレストは今までの主人公と違い、主力以外のポケモンもジム戦では使います。それでは次回、シナモンのエース登場で、ソンサクジム戦も終結です。お楽しみに。