二次創作小説(紙ほか)

Re: フェアリーテイル ー砂時計ー ( No.20 )
日時: 2013/12/20 07:06
名前: 鮟鱇 ◆j5KZfkTVqc (ID: qToThS8B)

フェアリーテイルの現世界季節は冬です。




目覚まし時計>>20

グレイside

「………んっ…」

声にならない呻きが不意に出る。

(全身が痛てぇ…鉛みたいだな…
特に頬が痛い。夢とリンクしてんのか…?)

先程とは違い、頭以外の全身が冷たく硬い何かに当たっていた。
頭のみは温かい何かの上。

重たい瞼を少しずつ開けてゆく。
目に飛び込んでくるのは緋色。
緋色の名前を呼ぼうとしたが、その前に名前を呼ばれる。

「グレイ!」

名前と同時に戴いた物は、響く乾いた音付きの平手打ち…マジで痛い…

エルザは数回叩いた後、安心した様に柔らかい笑みを見せた。

「うむ。結構緩んでいた雰囲気や顔付きが、少しは締まった様だな。
どうだ、自分でも目が覚めた感じがするだろう?」

(…違う意味で目が霞む………)

夢での痛みは やはりエルザが原因なのだ。しかし気絶した俺の意識を取り戻すとはいえ…殴り過ぎではないか?

(もし、目が覚めなかったら…)

ゾクリと背筋に冷たい何かが走る。
そんな俺の心境を知ってか知らずか
エルザは「いつまで寝ているのだ!」といきなり立ち上がる。
…となると膝で寝かされていた俺の頭は必然的に地面に落ち…コンクリートにヒットする。

「い"っ!?いってぇええっ!!」

痛みに悶える俺を外に、服の埃を落としているエルザの目は"何してんだアイツは…"と呆れ色に満ちていた。

ーーーーーー

やっと痛みが少し引いたと感じ始めた時、白い手が目の前に出てくる。

「ほら、手を貸す。さっさと立たんか。………ギルドに戻るぞ」

「…おう」

素直に手を取り、立ち上がり埃を落とす。
深呼吸を何回かし、魔力を手に込めつつも頭の中で傘をイメージする。

「っよ!、と…」

キィンと音を立てて作られたのは
大きめの傘と、その傘よりも少し小振りな傘…計二本。

小振りな傘をエルザに渡し、
大きめの傘を夜の雨に向かってパッと広げる。

ベンチの屋根から出ると、タタタッと小刻みなリズムの良い傘に雨が当たる音が聞こえる。

エルザも直ぐに傘を広げ隣に来る。

2人で公園抜け、ゆっくりと街灯を頼りにギルドの向かうべく街を歩く。

沈黙だけが滞在しているが別に気まずくは無かった。
逆に結構心地よかった。

歩いて水が跳ねる音。
傘に雨が当たる音。
民家から漏れる幸せな会話。

…平和って感じがして。
雨という脆くて儚い盾が守ってくれてる様な気がして。

物思いに浸っているとエルザの声が聞こえ、現実に戻される。

「…そういえば明日の仕事はどうするんだ?」

完全に忘れていたので、慌てるが直ぐに思い出す事が出来た。

「やはり今回はキャンs「…行く。このままヘタレと言われ続けられるのは嫌だしな」

(それに…見極めなきゃな…)

何故自分がアイツを恐れているのかを。
踏み出して突き止めなくては…

踏み出さなきゃガキの頃の様に辺りに喚き散らす事しか出来ない。
もしかしたら過去の過ちをくりかえしてしまう事態に起こりかねない。

(もし、そうなったら…)

知らずの内に柄を握る手に力が篭る

エルザは、お前らしいな。と苦笑交じりに言い、それ以外は何も言わなかった。

ーーーーーー

ギルドに戻るとミラちゃんからナツからの伝言を受け、辺りを見渡す。

夜なのだからか昼よりも数倍喧しくいが特に目立つのは、近めのテーブルを囲っている野次馬の山。

何があったのだろうか。と、エルザと2人で野次馬を掻き分けながら、進むと最初に見えたのは 椅子に寝ているルーシィ。…足元には無数の空酒瓶や空樽が転がっている。

(何故あんなにルーシィの周りは酒ばっかなんだ?)

その理由はルーシィの隣を見て直ぐに分かる。

ギルド1の酒呑みカナとーーー新人リアが飲み比べしているのだった。

今もビール瓶1本をラッパ飲み対決している。

カナもリアも顔が赤く、フラフラ。
…正直見てるだけでも酔ってきそうだ。
しかし両者どちらも引かず、同時に飲み終える。

「っぱっはぁあああーーー!!
いいねぇいいねぇ!ここまで私に付いてくる奴なんかぁ珍しいよ!」

どうやらカナは強敵が居た事が嬉しいらしく、更に新しい酒樽を開ける

「そりゃどうも、ですっ!姫様を守る身の上なのですからっ!!」

リアは男らしく手で口元を拭い、此方も酒樽を開ける。

そして両者 「いっせーの、せっ!」で声を合わせ 酒樽直接で飲もうとーーー

「馬鹿者っ!!」

エルザの鋭い叱り文句がギルド内に響く。

途端にギルド内全員の動き(ミラちゃんは楽しそうに微笑んでいた)が止まる。

「2人共飲み過ぎだ!カナ、程々にしとけと何回言えば分かる!?リア、貴様は明日、仕事だろうがっ!!」

「「うっ…」」

エルザの正論攻撃で借りて来た猫の様になった2人が新鮮だ。

(…あれ?)

そういえば、俺リアを見てもビビらんねぇ………

(なんで?…ま、いいか。そっちの方が)

どうやら火種は周りの者にも伝染していってる様だ。

どんどん回りの者も叱られている。

もしかしたら俺にも飛んでくるかも知れない。

(そんなのは遠慮しとくぜ)

俺は"ルーシィを送る"という口実を
エルザに伝え、それを回避する。

ルーシィを抱え、ギルドを出ようとすると丁度良く雨は止んでいた。


((…明日は良い天気の様に……。))