二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.109 )
- 日時: 2014/04/09 18:43
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
34話
夜、月の光だけが足元を照らす冷たい廊下。ここはシンドリア王宮内にある食客用の施設、緑射塔。広々とした造りの宿泊棟だ。
そんな廊下を一人歩く者がいた。ノエルだ。
藍色の髪を持つ人間は、世界広しといえど珍しい。おまけに冷たく整った顔に月光のような白い肌。人目を惹かないはずがないが、今は彼女一人だ。
ふと、手すりに凭れて空を見上げる。住民は明日の生活に備えて寝てしまったようで、空の星がよく見えた。
「…美しいな。」
宝石をちりばめたような空。夜空は黒ではなく、蒼だという事が確認できる夜。
ふとその時、ノエルは近づいてくる足音に気づいた。忍ばせようとしているのか、感覚は遅い。
やがて音が止まり、鈴のような声が聞こえた。
「そこにどなたかいらっしゃいますか?」
「…そういうあなたも、こんな夜分に如何された?」
足音を忍ばせて現れたのは、寝巻用の薄着に着替えたサエであった。普通ならここで跪くなりするものだが、そこはノエルの事。どこの誰とも知らない年下の少女に、頭を下げることはない。
「こんばんは。良い夜ですね。」
「そうだな…それにしても随分と薄着だな。あぁ、手洗いは向こうだが?」
「いえ、別に不浄というわけではないのです。ただ眠れなくて。」
彼女の金髪は月の光を反射し輝いている。左目は赤く右目は黒みがかったオッドアイ。長らく旅をしてきたノエルだが、こういう目は初めて見る。
見慣れない顔だな、と思いそこでようやく気がついた。今更ながら手を組み、軽く膝を折る。
「失礼した。あなたはレイファル国王女、サエ様ですね。そうとは知らずこのノエル、ぞんざいな口の利き方を…。」
「お、おやめください!私共はお邪魔している身です。どうぞお気を使わないで?」
「……姫がそうおっしゃるのなら。」
バツの悪そうな顔で礼を解くと、ふわりとサエが微笑んで、背中に隠し持っていた酒瓶をチラつかせる。
「どうかしらノエルさん、ご一緒に。」
「…いただきましょう。」
二人の少女は、人気のない廊下をひっそりと進んでいった。