二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.119 )
日時: 2014/04/13 22:27
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

35話

王宮の一角、月の光で照らされるテラスに二人の少女。
南国のシンドリアの夜は丁度よい気温で、酒の水面に満天の星空が映し出される。

「あまり強いものではないのだけれど…。ノエルさん、お酒はどれほど?」
「なに、嗜む程度ですよ。」
「まあ本当に? ふふ、実は私もです。」

そこに決して悪意はないが、二人とも真っ赤なウソである。口で嗜む程度と明言して本当に嗜む程度しか飲めないのは、ノエルが知る限りでもシンドリアの政務官、ジャーファルくらいだ。
ノエルは自他ともに認める酒豪だし、知る由もないにせよサエ姫も実は酒豪である。
国によって飲酒や喫煙の年齢規定が違うのでそのあたりは判断が難しいが、なんにせよ彼女たちは酒を飲める年齢だ。

「私、4か月ほど前に18歳になりましたの。祝い酒を試しに飲んだら、とても美味しくて!」
「そうでしたか。私はいつからか覚えていませんが…2年位前から自然に口に運んでいましたから、16歳くらいから飲めたのでしょう。」
「まあお早い。…でも、覚えてない、とおっしゃいますと?」

ノエルはサエに、自分の記憶が部分的に欠落していることを告げた。そして、ついでに故郷について知っているか尋ねる。あまり気は進まなかったが、影の能力を少しだけサエに披露して見せた。

「私、不躾でしたわね。申し訳ありません。」
「いえ、お気になさらず。…それでサエ姫。」
「ええ。その技は存じ上げないけれど…光と影の一族について、ある伝承を知っていますわ。」
「それは……どのような伝承で?」
「ええ。確か…。」

はるか昔より、誰の目にも触れぬどこかに、ある一族がいた。その一族は他の者達と何ら変わりなかったが、違う点が一つだけあった。
一族には必ず、長となる娘が生まれる。その娘は必ず、光と影を司り生まれた。一族は彼女の守りにより安寧の日々を過ごし、長く長く歴史を気づいた。その一族に名はなく、今でも知るものはわからない。だがしかし、その長の娘は、光陰の姫巫女と呼ばれたといわれる。

「こんな内容でしたかしら…。ごめんなさい、伝承を読んだのは何年も前なのよ。」
「光陰の、姫巫女…。」
「ええ。お心当たりがあって?」
「………残念ながら。申し訳ない。」
「そうですの。…まあこんな時こそ、悩みを忘れましょう?」

すっと酒瓶を持ち上げるサエは、ノエルに微笑みかけた。
つられて、ノエルも杯を持ち上げる。

「そうですね。飲みましょう。」

何もかも包み込んでしまうような星空が、二人の頭上で輝いていた。