二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.121 )
日時: 2014/04/20 17:18
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

36話

朝早くから、ノエルはジャーファルと会話を交わしていた。名目的には『説教』なのだが、二人の間にそんな雰囲気は微塵もない。

「全く、君の飲酒をシンにも見倣ってほしいものです…。」
「ふ、どうだかな。」
「しかし、あの時はサエ姫もご一緒していて。正直驚きましたよ?」
「あぁいや、姫から誘われたものでな。」

あの夜姫と二人で飲んでいるところを、運悪く彼の政務官に見つかったのだ。
立場上姫であるサエはすぐに侍女によって寝室に送られたが、ノエルは明朝に説教を持ち越された。
さっきまでくどくど言われていたが、全く二日酔いなどの問題症状を見せないノエルに、今やジャーファルは感心し我が主に呆れてもいた。

「君は酔いつぶれないし、規則正しいし、問題も起こさないし、書類を分別する仕事も手伝ったら素早く終わらせてくれるし…それに比べてシンときたら〜っ!」
「ジャーファルさん。褒めてもらえるのはうれしいが、それ以上言うとシンドバッド王が哀れに思えてくるのだが…。」
「いいですよ思って! 現にあの人、まだ起きて来ませんしっ」
「何? もうすぐ朝食だと思うが…」
「そうですよっ!…え、もうそんな時間ですか?」

はっとしたようにジャーファルが顔を上げると同時に、シンドリアの大鐘が朝食の時間を告げた。

「鐘が…私はシンを起こしてきます。ノエルは朝食をお食べなさい。」
「あぁ、ではまた。」

官服を翻し王の寝室へ走っていくジャーファルを見送り、ノエルは同情するかのように苦笑した。

***

シンドリア王国は島国だ。その島の中央部分に、市場(バザール)が広がっている。普段は客と店員の声で賑わうこの場所だが、昼時にはその声も控えられる。
店の人間が昼休憩に入り、客足も少ない市場。そんな中を、速足で巡る金髪の人間がいた。
地味めな庶民服、ターバンの中に髪はしまわれ、少年のような風貌になっている。まるでマントのようにローブをまとい、市場に目を輝かせている。
豊かな金髪。そして人類上あまりみないオッドアイ。
その少年のような少女は、レイファル国王女、サエ姫だった。

「ふふふ、一度やってみたかったんだよねー!」

彼女は今、警備や侍女の目をかいくぐり、男装をしてシンドリア国内を観光していた。これは勿論お忍びというやつである。

「お父様も近衛たちも、王宮内で過ごせだなんて…この素晴らしい国を見るなと言われて納得できない!」

むっと数分前の出来事を回想し、次にサエはふふんと笑った。

「夕餉までに戻ればいいし…それまでこの国を堪能しよう…!」

この時、サエは浮き足立っていた。
目の前の美しい景色に、目を奪われていたのだ。
だからこそ。

「……………。」

自らに近づいてくる悪意に、気付いていなかったのだ。