二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.132 )
日時: 2014/04/27 17:54
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

37話

シンドリア王宮昼過ぎ。一番初めに気が付いたのは、姫付きでレイファル国から同行していた年若い二人の侍女であった。
侍女から兵士へ、兵士から臣へ、そして臣から国王へ伝わり。

「……サエ姫様が行方不明?」

長い時間をかけることなく、シンドバッドの耳にも入ることとなった。
侍女がサエ姫不在に気が付いたのは、いまからほんの1時間ほど前の事。まだあまり時間はたっていない。

「娘は、少々大胆な性格でして。今頃は得意の男装で御国を駆け回っているのでしょう。」
「ほぅ、ではさほど心配することもないのでは?我が国を見て姫が喜んでくださるのでしたら、私も嬉しい限りです。」
「そう言っていただけるのなら。しかしあの子は好奇心も旺盛でして…何かご迷惑をおかけしていなければよいのですが…。」
「はっはっはっ!シンドリアの民は皆、陽気で寛容ですよ。ご心配なさらず、エドニス王。」

そう、この時はまだ。
そんな風に思っていたのだ。

***

時は少し戻り、昼過ぎではなく昼時。サエは人通りの少ない木陰を歩きながら呼吸を整えていた。手には、控えめながら上品なデザインの珊瑚のブローチを持っている。

「ふふふ、可愛いなぁ。私がつけてもいいけれど…今は王宮にいるあの侍女…そう、アリサならきっと喜ぶっ!」

今は王宮にて留守をしている、もうすぐ18の誕生日を迎える侍女の事を思い、そのブローチを丁寧に布に包んで握った。
サエ姫は幼いころに母親を失くしている。そのせいか、侍女や兵士への労いを忘れない娘だ。優しくて気立てのよい大胆な姫だと、レイファル国では大好評の姫なのだ。

「あぁ、ダンスの先生には首飾りがいいかな…そういえば書庫の門兵は、今度還暦を迎えるはずだった…お祝いは何がいいだろう?」

人の喜ぶ顔を見るのは楽しい。こちらまで嬉しくなるからだ。母に送れなかった感謝の念を、サエは家臣たちに送っている。

「……………。」

しかし、この時のサエははっきり言って油断していた。剣術にも体術にも、なかなか実力を持つサエだが、この時ばかりは仕方がなかった…油断していたといえよう。

「あっ……!?」

囲まれている。10人の男。皆が一様に顔を隠しているから誰だかわからないが、友好的な雰囲気は微塵もなかった。
いつの間にか張られていた細線に足を取られる。その隙に羽交い絞めにされ、口と鼻を布が覆った。

「ん、んぅ……!っ…!」

くらりと体が堕ち、サエの体は眠りにつく。
男たちは顔をよく確認すると、頷き合いサエを抱き上げた。

「行くぞ。」

誰も知らない、裏路地の出来事。
ぽつんと残された珊瑚のブローチは、ただそこにあるだけだった。