二次創作小説(紙ほか)
- 9話 ( No.24 )
- 日時: 2014/01/18 16:21
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
9話
波が打ち付ける海岸。ここは、シンドリアの森側にある、狭い浜辺だ。
人口の多いシンドリアだが、こんな夜中では、人気は全くない。
そんな場所に、一人の女性が立っていた…否、木枝を集めていた。
「はあ…何故こんなことに…」
事は、数時間ほど前に遡る。
*
彼女の名はノエル。本日昼過ぎ、シンドリアに入国した女旅人だ。
白めの肌、藍色の髪、灰色の目…そして何より、端整な顔立ち。こんな目立つ彼女が国で騒がれないはずもないが、幸いそんな事はなかった。どうしてと問われれば、ローブで顔を隠しながら宿に入りその後は景色を眺めるだけで街へ繰り出さなかった…というだけの話であるが、それはさて置き。
深夜。漆黒に染まる空を見上げ、ノエルは旅に使ってきた愛用のローブマントを羽織った。自分が目立つということは経験上わかっていたし、何より彼女は『そういった面倒事』が嫌いなのだ。
「しかし…この国は熱いな」
南国ということはわかっていたものの、まさかここまでとはな…。と、
ノエルはトントンとブーツを鳴らした。
最近は北西を回っていた彼女の今の服装は、南国の楽園シンドリアでは
まず見かけない装いだ。
ぴったりした上下は、黒の薄布で七分丈。その上に青色のチュニックの
様なものを着、腰を帯で締めている。足元は黒のブーツだ。
旅…運動に適した服装だが、こんな格好で日中のシンドリアを出歩いたら、半日で服を着替える羽目になるだろう。
「仕方ない…明日買いに行くか」
溜息をついて、ノエルは宿を出る。人はおらず、街の熱もいくらか覚めていた。
どうして彼女がこんな時間に出歩いているのかといえば、答えは簡単。
散歩である。
服装からして昼間は出歩けないし、かといって宿に籠っていては街を知れない。そこでノエルは、夜のうちに街を見て回ることにしたのだ。
「小さい島だが…七海の覇王の国か…」
首をめぐらせれば、王宮のほうは明かりが灯っている。観光客用の施設もあると聞いたから、まだ起きている連中はいるのだろう。
「ほう…へえ…こちらは森か…」
街を巡ること数分。ノエルは、シンドリアの森の前にたどり着いた。それなりに大きく、好奇心も沸いたが、時間を考えてやめておく。…と、
気が付いたことがあった。
森の奥から、濃く磯、砂の香り。波の音。
「そうか…海もいいな」
ノエルは脳裏に、入国時に見たシンドリア国の地図を思い出す。森の向こうは断崖絶壁だったが、少しくらいは浜があっても不思議はない。
ノエルは森の脇に道などがないか探すが見当たらない。仕方なく、森の手前に広がる海岸から、シンドリア海岸を散策することにした。
しかし。
彼女は思ってもみなかった。
この夜の散歩が、自分の人生を変えることになろうとは。
これも…。
大いなる運命(ルフ)の導きか…。