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二次創作小説(紙ほか)
- 10話 ( No.25 )
- 日時: 2014/01/20 17:19
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
次回、やっとジャーファルさんが戻ります。
10話
入国初日の夜。ここで本題が始まるのである。
*
シンドリア海岸。断崖絶壁の南海孤島ではあるが、ほんの僅かな個所になら、白い砂浜も存在する(?)のである。
「ああ。気持ちのいい海風だ…」
磯の香り。静かな波音。海面を照らす星空。
それはまさに、絶景というべき景色である。
「ふむ、この奥は崖か……ん?…ッ!?」
浜が途切れ、宿へ帰ろうとしたノエルの視界に移ったのは、白い物体だった。よく見れば、俯せに倒れた人間である。
「な…おいお前!」
「……う…」
近づいてゆすれば、微かにうめき声をあげる。死んではいないらしい。
だが、その白い服に覆われた手足に、少なくない量の血が染みていた。
どこか崖の岩にでも強打したのか、腹部の布も破れている。
「これはシンドリアの官服…。この前掛けは文官の…?」
「ぐ……!」
体を確かめていると、グレーの髪を持つ色白の男は、また苦しそうに呻き声をあげた。
「くそっ、仕方ない!」
ノエルは周りを見、近いところに波の影響でできた洞窟を見つけた。
中に誰もいないことを確認し、男を中に運び込む。
「んん…っと。…ふう」
女性にしては力のあるノエルだが、あと少し距離が遠ければ、彼を助けようとは思わなかっただろう。
そう。ノエルは彼を助けることにしたのだった。
*
何事にも、火というものは必要で。
それを起こすには、火種と薪が必要である。
「よし、もう十分か」
夜の散策中のトラブル発生から数時間後の、シンドリア深夜過ぎ。
ノエルは最後の小枝を拾うと、洞窟へと戻っていった。
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