二次創作小説(紙ほか)
- 11話 ( No.29 )
- 日時: 2014/01/24 18:47
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
11話
パチパチと火の爆ぜる音。目元に充てられた水布。微かに痛む身体。
様々な感覚を取り込みながら、ジャーファルは目を覚ました。…とは言っても、額から鼻の付け根にかけて被せられた薄布で、周りは見えなかった。最初に聞いた音、そして仄かな熱からして、焚き木がされているのだろうという事はわかった。
「う……」
身体を動かそうとするが、微かに指先が震えるくらいだ。身体が麻痺している。その時、
「ああ、目が覚めたのか?」
美しいアルトが耳に流れ込んできた。冷水を浴びたかのように、ハッとジャーファルは身を固める。
「おい、どうした?」
まさか、敵…?この麻痺は毒か…!?
腕に巻かれた愛用の眷属器を構えようとするが、腕は数センチ持ち上がっただけだった。そもそも、腕にいつもの感触がない。
赤い紐。ジャーファルの闇を象徴する、愛用の刃物。
今はその紐の感触が、全くなかった。
やがて、誰かが自分の枕元に座る気配。そして薄布が取られて
「…身体はどうだ?」
「ッッ!!!?」
その顔を見て、ジャーファルは絶句した。
「おま、えはッ……!!!」
「ん?」
群青、縹、藍…すべてを詰め込んで調整した藍色の色を持つ髪。鋭く見つめる灰色の瞳。
それは、リリィと同じ顔だった。
「何だ?私の顔に…って何してる馬鹿!!」
歯を食いしばり起き上がったものの、冷や汗を浮かべた彼女に、慌てて
押し戻される。
「傷が開くから、じっとしていろ。…大体、痛み止めとして麻痺薬を傷口に塗り込んだんだぞ。どうして動けるんだ…」
はあっと、脱力したように彼女の髪が肩で揺れる。
そう。その髪は、肩口で無造作に切り揃えられていた。背中まで流れてはいない。
「で?私は誰かに似ていたのか?」
「あ……」
その声は、美しい、忍び寄るようなアルト。透き通ったソプラノではない。しかし顔は同じで…いや違う。
向けられた顔は、リリィのものより大人びている。
右の目元にある、泣きぼくろが印象的だった。