二次創作小説(紙ほか)
- 14話 ( No.34 )
- 日時: 2014/02/08 20:23
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
今回はシンジャではない!繰り返す、今回はシンジャだ!…あ。
14話
夜明け前のシンドリア。高台の王宮。
ファナリスの強靭な両足が、門前広場の地面を踏んだ。
「お帰りなさいませ。モルジアナ殿」
「その者が例の…?」
ダンっっと着地を決めたモルジアナの姿を認め、門兵がシンドリア式の礼をしながら声をかける。
「はい。お二人とも、ご苦労様です」
モルジアナは抱えていた例の者—ノエルを地面におろし、深々と一礼した。そして、背負っていたノエルの荷物を彼女に渡す。
「どうぞ」
「ありがとう。…まさか本当に飛ぶとはな。えっと」
「モルジアナです」
「そう。モルジアナ、君はファナリスなんだな」
門前で話している二人の足元に、ゆらゆらと影が伸び始める。
夜明けだ。
「最上階の会議室にて、王たちがお待ちです」
「わかりました。お仕事、頑張ってください」
二人は門兵に軽く頭を下げ、王宮の門をくぐった。
*
時は少し戻り、まだノエルとモルジアナが荷造りをしていたころのシンドリア王宮。
門前、ではなく、最上階のテラスの床そのものを、モルジアナよりさらに大きく強靭な足が叩いた。大きな音を聞き、目の前の会議室から、9人の人間が飛び出してくる。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、マスルール君!」
迎えるは、八人将の6人、食客の2人、そして国王・シンドバットである。
「マスルール、君ねぇ…!」
「ジャーファルっ!!」
「う、わっ…!?」
何も門前から最上階まで飛び上がることはないだろうと、胸に抱かれていたジャーファルが抗議をしようとしたとき、マスルールと同等に逞しい腕に抱きしめられた。
これはかなり苦しい。
「ん…し、シンっ…!」
「この、馬鹿野郎…!」
王が呟き、さらにきつく抱きしめる。それを皮切りに、いくつもの手がジャーファルへと伸びてきた。
「そうっすよ!」
「そうですよっ!」
「心配したんだから〜っ!!」
褐色の大きな手。白い小さな手。頬をくすぐる海色の髪。
「…シンさん。そろそろジャーファルさんがやばいっス」
「あ、ああ。…全くお前は」
腕を解きながらも、顔色を確認するかのように至近距離にある、愛しい主の顔に、ジャーファルは微笑みかけた。
「…はい。ご心配をおかけしました、我が王よ」
朝一の潮風が、そこにいる者の髪を、服を揺らす。
そして門のほうから、ダンっっという音が聞こえた気がした。