二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−アイデア募集中 ( No.42 )
日時: 2014/02/27 17:30
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

18話

掲げられた色白の右手。そこにいる全員が、じっと視線を集中させた。
視線の集中を確認し、ノエルが手を動かそうとしたまさにその時。

「失礼いたします、王よッ!!」

一人の衛兵が、息を切らせ体中に汗を浮かべて会議室に駆け込んできた。普段ならジャーファルが諌めるところだが、今彼はいない。それよりも、男の様子を見て全員が口をつぐむ。
礼をとろうとした兵を手で制し、落ち着いた声で尋ねた。
「どうした?」
「はっ!国民により…う、裏路地にて…!」

ごくりとつばを飲み込むと、兵は顔をあげて告げた。

「衛兵の惨殺体が発見されましたッ!!」
「なんだって!?」

ガタンっと椅子を蹴倒し、シンドバッドは立ち上がった。



結局ノエルの詮議どころではなくなり、王であるシンドバッド、八人将のマスルールとヤムライハが事件現場へと向かう。
既に人だかりができていたが、現場は兵が人払いをしているようだ。

「シンドバッド王…!!」
「王様がいらっしゃったぞ…!」

国民や兵の顔に安堵が浮かぶのは、シンドバッドの持つ信頼の大きさだ。彼は鷹揚に頷くと、低く落ち着いた声でその場のざわめきを治めた。

「皆、心配するな。今回の件については、追って王宮から連絡しよう。だから、いつも通り生活してほしい。」

力強い王の言葉に、国民たちが顔を見合わせ頷いた。そして、現場から一人、また一人と遠ざかる。
落ち着きを取り戻しいつものシンドリアに戻り始める光景を見、シンドバッドはマスルールとヤムライハを振り返った。

「行くぞ」
「はっ」
「っス」



結果として、殺されたのは若い兵士だった。喉を掻っ切られており、ほぼ即死だったろうとヤムライハは推察した。

「ただ気掛かりなのは、あの切傷が魔法ではなかったという事です」
「魔法じゃないだと?しかし、刃物ではないという鑑識結果だったようだが…?」
「えぇ。ですので王よ」

シンドリア兵は、刃物でも魔法でもない何かにより斬殺された。
つまりはそういう事だ。

「…………」

南国の楽園シンドリア。七海の覇王の夢の国。聖なる都。
美しい島国に、今までとは違う別の影が覆い被さろうとしていた。