二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−アイデア募集中 ( No.48 )
- 日時: 2014/03/08 11:40
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
20話
コツコツという木靴の音と、ぺたぺたという裸足の足音。ふと前を見ると、八人将のヤムライハとピスティが、談笑しながら歩いてきていた。目が合うと、ピスティはにっこり笑って見せる。
「はぁいノエル!わ、それ新しい服?」
「ちょ、ちょっとピスティ…!」
トトトッとノエルに近寄りペタペタと触るピスティを、ヤムライハが少し苦い顔で諌めた。
それはノエルに対しての失礼さを感じたから…だけではない。恐らくヤムライハは。彼女に限らず王の近衛である八人将は、ノエルを完全には信用していないのだ。それはきっと、文官たちと同じ理由から。
疑わず、信用しない。
ノエルもそれがわかっているからこそ、こちらから不用意に馴れ馴れしくしたりはしない。
だから顔に出たのは、お愛想な微笑みだった。
「大丈夫だ、ヤムライハさん。気にしない」
「え、えぇと…御免なさいね?」
「ねーノエル、これ自分で裁ったの?何で?」
恐らくピスティは、信頼こそしないものの仲良くなろうとはしているのだろう。だからこそ、つかず離れずの心地よい関係で近づく。
「袖があったり足回りが利かないと、運動に不利だからな。それにこの国は暑い。このサンダルは重宝している、ピスティさん」
「ふぅん、そっか!…あとノエル、さん付けはいいから!」
「いや、しかし…」
思わぬ相手の申し出にノエルは目を見張りつつ言葉を濁らせる。なんせ立場は一介の旅人と八人将だ。
しかしピスティは気にした様子もなく、少女らしい笑みを浮かべて見せた。
「いーの、女の子同士でしょっ!せっかく同い年なんだから!」
「そ、そうか。ではよろしくピスティ…って、同い年だと!?」
初めて感情を露わにしたノエルに、ヤムライハもピスティも、おおっと顔を和ませる。一方ノエルは、しまったという様に口を覆い俯いた。あまり他人に表情を見せたくないのだ。
「いや、その…すまん。驚いた。」
「あなた、その話し方も癖なのね。女性らしくしないの?」
「そーだよ勿体ない!こんなに美人なのに。」
「いや、こういう風に無機質な性格な方が、旅は安全でな…。」
今更変えるのは難しいからと頭を下げるノエルに、二人は慌てて首を振った。
「べ、別に悪くないと思うわよ?ねえピスティ?」
「そうそう。その服も似合ってると思うよ!髪も綺麗だしねッ。」
「そ、そうか?ならよかった。」
ほっとするノエルを見て、今までずっと一歩離れた距離感を置いていたヤムライハが、すっと手を差し出した。
「私は魔導士のヤムライハ。改めてよろしくねノエル。」
「え、あぁ…。」
「私達からしてみれば、あなたはジャーファルさんの…仲間の命の恩人なのよ。それに…年も近いし、仲良くしましょう?」
にこりと花が咲いたように笑いかけられ、ノエルもまたヤムライハの白い手を握った。
「私は、ノエル。改めてよろしくお願いする。」
手を握りググッと頭を下げる彼女に、ヤムライハもピスティもころころと笑った。
「やだもう。そんな畏まらないの!」
「そーそ。じゃノエル、ヤム共々女の子同士よろしくねッ!」
二人の手にピスティの手がぽんと重ねられ、女性三人は微笑み合った。