二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.54 )
日時: 2014/03/19 16:10
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

23話

夜。月明かりを浴びるシンドリア王国。王宮の政務施設・白羊塔の最上階会議室には、13人の人間が集まっていた。
丸い円卓の最奥に座るシンドバッド王の直線状に向き合うのは、他でもないノエルだった。

「さて、ノエル。君の話とは?」
「あぁ。…これからの話は、シンドバッド王は勿論、ジャーファルさんを始めとする八人将、件に関わったアリババたちにも聞いてほしい。」

ノエルは一度だけ深呼吸すると、右頬にかかる髪を耳にかけた。

「さて、今から聞いてほしいことは2つ。一つ目は、衛兵やジャーファルさんを襲った人物について」

そのセリフで、その場にいる全員が引き締まる。症状が良くなり同席しているジャーファルだが、まだ少し顔色が悪い。

「そしてもう一つ。…私自身について。」
「ノエルさんについてって…どういうことだい?」
「そうだな。…私は先日、人と変わった力を持っているといっただろう。その力の事も、伝えたいことの一つ」

全員の顔に疑問符が浮かぶのを見ると、ノエルは

「実際見てもらった方が早いのでな。実践して見せよう。…アリババ、協力してもらえるか」
「え、俺?いいけど…協力が必要なのか?」
「何、一度に事をすました方がいいだけだ。…刀を構えてくれ」
「え、ええ!?待てよ、ここで何を…!」
「案ずるな、乱闘などしない。ただ、感触などは触れなければわかるまい?さ、剣を構えて。」

怖々と、慎重な手つきで懐の短剣を抜き、アリババとノエルが向かい合う。止めようとしたモルジアナとジャーファルを、アラジンとシンドバッドがそれぞれ制した。

「シン、何を…!?」
「大丈夫だ。いざとなったら俺が入るから、お前は座っていなさい」
「アラジン…!」
「大丈夫さモルさん。落ち着いて」

アリババの構えは、故郷・バルバット流王宮剣術だ。対するノエルは、何の武器も手にせずただ立っている。

「…よし。来いよノエル」
「ああ。…では、実践する」

スッとノエルの右手が掲げられる。何もない空間に突然、黒い影が現れた。それは音も立てずに素早く形を成し…光沢も装飾もない、一本の長剣になった。
黒い、形だけの漆黒の剣。それを、騎士が何かに誓うような時の構えで眼前に立てる。

「な……影の、剣!?」
「そう、これが私の力だ。…行くぞッ!!」
「うお…っ!」

一歩目で大幅に踏み込み、アリババに剣を突き刺す。構えた短剣が弾き、金属音が響いた。同時に二人の腕に、重い感触が響く。

一度剣を凪いだところで、ノエルが動きを止めた。

「そ、その剣…金属じゃねぇよな…?」
「ああ。何なのかは私もよくわからんのだが…なかなか便利な力だ。剣だけでなく、こういったこともできる。」

そういうと、ノエルの手からふっと剣が消える。そして次の瞬間、その手に握られていたのは大鎌だった。

「へ、変化もできるのかよッ!?」
「いいやそれだけじゃない。…ほら、油断は禁物だ!」
「へ…?う、うわぁああっ!!?」
「アリババ君ッ!?」

右手で鎌を構え、左手でアリババを示し、何かに指示を出すかのように動かす。次の瞬間、アリババは拘束されていた。
他でもない、自分の影に。

「な、んだこれ…!俺の影を操ってるのか…?」
「そう。まあ、ここに至るまでには習練が必要だったんだが…」
「い、いーからこれ解いてくれ!!」
「ん?あぁすまない。……もういいぞ」
「ってて…あ、あれ?俺の短剣…」

アリババが取り落とした自分の短剣を探すと、にゅっと伸びてきた黒い腕がアリババに近づいた。それはかげで、伸びているのはノエルの足元からだ。まるで捧げるかのように、バルバットの宝剣を掲げる。

「あ、ありがとう…?」
「こちらこそ。協力、感謝する」

アリババに一礼し、ノエルがシンドバットを見る。七海の覇王の目には、好奇心と微かな欲望が見えた気がした。