二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.62 )
- 日時: 2014/03/22 11:07
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
25話
その夜、シンドリアでは盛大な宴が開かれた。いきなり開催を決定された宴に国民は驚いたが、元々の祭り好きな性分も幸いし準備段階から大いに盛り上がり、それは先日の惨殺事件に対する国民の恐怖を払拭するものでもあった。
「みんな、今日は大いに盛り上がってくれ!!」
国王シンドバッドが杯を手に前に出ると、国民から歓声が上がる。
「我らが王と!」
「シンドリアの繁栄と平和にッ!!」
「ああ、乾杯ッ!!」
『かんぱーいッ!!!』
王と国民がともに杯を掲げ、シンドリアの宴は幕を上げる。あとはもう、飲めや食え、歌えや踊れやの大騒ぎだ。
宮廷役人も国民も、立場など関係なく飲み、踊り、笑い合う。
「アリババ君、こっちのお魚おいしいよ!!」
「おう、こっちの果物も美味いぜアラジン!」
男性陣は大いに飲食し、女性たちは宴用の衣装をまとって給仕に回る。それは王や八人将もしかりであり、美丈夫なシンドバッドの周りには多くの美女が侍っていた。
「あーもう!シン、飲みすぎないで下さいよっ!?明日からまた禁酒ですからね!」
「何だと!?よし、じゃあ今日の内に飲むぞ!」
「酔ったあなたを寝室まで運ぶの誰だと思ってるんですか、我が王!」
「ジャーファルさんもこういう時くらい怒らないで、こっちで飲みましょうよ〜」
「シャルルカン…君も飲みすぎないように」
立場だなんて関係ない。子供も大人も武官も文官も王も食客も、ともに笑いあい宴を堪能する。それがシンドリアが夢の都と呼ばれる所以の一つかもしれない。
と、そんなことを考えていたノエルのもとに、可愛らしい声が届く。
「ノエル、楽しんでるー?」
「ピスティ…その服は宴用の衣装か?大胆だな。」
「うん、ヤムとノエル以外はみんな着てるよ!」
ねぇねぇそれよりさ!と、八人将のピスティは露出したノエルの腕に同じく露出した自分の腕をからめ、ぐいぐいと引っ張る。
「あっちの舞台でモルたんが舞をするんだって!みんな見るらしいから、ノエルも行こうよぅ。」
「舞を?」
聞き返したとき、軽快な音楽とともに太鼓が打ち鳴らされる。舞台に上がったモルジアナが一礼し、音楽に合わせて美しいステップを踏み始めた。
なびく紅い髪、揺れる白い衣装。僅かに紅潮した頬。彼女が舞う様は、まるで鳥のようだった。
「きゃー、モルたん可愛いッ!」
「あの音楽は知っているな…私も旅の道中、軍資金を稼ぐためにあの音楽に合わせて踊りをしたことがある。」
「えぇ本当ノエル!?だったらねぇ…」
にやりと笑ったピスティは、ノエルに飛びついて組み伏せた。そのまま上に着ている官服のシャツを脱がしにかかる。
「な、ちょ…なんだピスティ!おいっ」
「はいはい大人しくね。…あ、そこの女中さーん!ちょっとそのベール貸してくださーい!」
「どうぞ、ピスティ様」
「ありがとー。……うん、いいじゃんノエル!」
「な、何がしたいんだ一体…!」
怒るつもりで息を吸い込んだノエルは、自分を見つめる周りの視線に気づいた。涼しい肌を感じ、はっと自分を見下ろす。
「な、ピスティ!何がしたいっ!?」
今のノエルは、男性陣からみればかなり色っぽい服装だった。
白い肌に纏われているのは、海色のミディアムタイトワンピ一枚。肌の色と対照的で影部分を作り、胸の大きさ等が通常より強調される。しかもスタート丈が異様に短く、覗く太ももから爪先までは完璧なバランスだ。藍色のショートカットに被せられた薄黄色のヴェールも、同じく髪色と対照的でかなり映える。
「王様ーっ!ノエル着替えさせてみましたぁ!!」
「うん?おー、いいじゃないか!?中々似合うな。」
「御冗談だろうシンドバッド王よ。なぜ私がこんな服装を…」
「こらピスティ!あなた無理やり着せましたね!!?」
「きゃー、ジャーファルさんこわーいっ。」
ジャーファルに怒られ、ピスティはすたこらさっさと逃げていく。そんな場所に、アラジンとアリババも来た。
「あれ…ノエルか!?うわ、見違えたじゃねぇか!」
「わあ、ノエルさん綺麗だねっ!モルさんと踊らないのかい?」
「ああ!そろそろ2曲目に入るから、踊ってくればいい!」
「私、ノエルの踊り見たいわ〜。」
いつの間にか来ていたヤムライハにもねだられ、会話を聞いていた国民からも期待の視線が集まる。美しい旅人の舞が是非見たいのだろう。大前提として、今夜の宴はノエルの歓迎でもあるのだ。
こうなっては、後には引けない。
「ああ…ああ!わかった踊ろう!!」
やけになったように叫ぶと、国民から歓声が上がる。その歓声の中、ノエルは呆れて、でも少しだけはにかんだ様に笑いながら、モルジアナの舞う舞台へと歩み寄った。