二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳− ( No.7 )
日時: 2013/12/20 17:25
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

3話


ジャーファルは、急ぎ足で王宮の門へ向かっていた。
途中で、金髪の少年に声をかけられた。
彼の名はアリババ。今は王宮に食客として暮らしている、バルバット共和国の王子である。この時間なら、剣術の稽古も終わった頃だろう。
ちなみに彼の師匠は、八人将が一人、シャルルカンである。

「あ、ジャーファルさん!」
「おやアリババ君。稽古は終わりましたか?」
「はい。あの、これから夕飯ですけど、外出ですか?」
「ええ。少し用事を思い出しまして」

笑顔で誤魔化し、アリババが納得したのを見届けると、また急ぎ足で街へ向かう。
あの純粋で優しい、勇気ある少年は、うまく誤魔化されてくれたようだった。



街の大通りを、迷いなく進。目指すのは、人気のない裏路地だ。
あの、禍々しく美しい、藍色の揺れていた。

「あれ、ジャーファル様?」
「ご苦労様です」

行き会ったのは、シンドリアの衛兵だ。町の見回りを終えたようだが、整列した数人の顔を見る限り、あの血の匂いに気付いたものは一人もいないようだった。
もしかしたら、私の勘違いかもしれないな…。
一瞬そんなことを思いつつ、しかしジャーファルは衛兵達と別れ、裏路地を目指した。

「…確か、この辺りでしたね…」

空気に乗って微かに漂う、薄れた鉄の匂い。血の匂い。
近いな。
ジャーファルは確信し、どんどん人気のない路地へ入り込む。夕飯時のため、野良猫一匹さえ通りはしない。

「……!こっちか」

元暗殺者としての技術は廃れていない。ジャーファルは腕に巻かれた愛用の暗殺器に、官服の上から触れた。
まったく、飛び出してきてしまったな。
随分勝手なことをしている自分に気づき、呆れた笑みを浮かべる。だが今ここでジャーファルに、戻るという選択肢はない。

「っ………!」

そして、見つけた。
自分を誘うように揺れた、あの藍色を。

「あら?…まあ」

傍に倒れ、真っ赤に濡れた衛兵の屍を。
これは…なんだ。

「………」

ジャーファルは見つけた。
禍々しい光を放つ、美しい、藍色の暗殺者を。