二次創作小説(紙ほか)

Re: 【マギ】光と影−日常事件帳− ( No.8 )
日時: 2013/12/23 16:55
名前: リーフ (ID: O72/xQMk)

4話


そこにいたのは、一人の少女だった。いや、もう大人といっても良い年頃であろう娘だった。
一言でいえば、清楚で可憐。中々に美しい少女だ。
…その衣と白い頬に、真っ赤な返り血が飛んでいなければ。

「まあ、もう見つかってしまいましたわ。あの時、まさかとは思っていましたけれど…やっぱり、見られていましたのね」

私ったら、はしたない。と恥じるように笑みをこぼす少女は、ジャーファルの目に気味の悪い少女として映った。
つくられた笑顔、言葉使い。
だが、目と口角に、彼女の本性がにじみ出ている。
人形のような瞳と、歪んだ笑み。

「このような格好で失礼いたしますわ。私、リリィと申しますの。微力ながら、暗殺業を営んでおりますわ。どうぞよろしく」

透き通るようなソプラノで、彼女はつらつらと口上を述べる。胸に左手を添え血に濡れたチュニックの裾を右手で持ち上げ、軽く低頭。あまり見かけない礼法だったが、気品を感じた。

「失礼ながら、お名前をうかがっても?」
「…貴女の様なご令嬢に名乗るほどの者ではありませんよ、私は」
「……ふ、ふふ。ふふふっ、お上手ね」
「光栄です」

笑う彼女は朗らかで、しかしどこか冷たい。対するジャーファルは、登録されたように発言した。

「そこの衛兵は、あなたが?」
「ええ」
「この国の…シンドバット王の兵と知っていて?」
「ええもちろん。だって…」

リリィは、花が咲き誇らんばかりの笑顔と声音でつづけた。

「だって私、シンドバット王様を狙ってこの島に来ましてよ?」

さあっ、と。背中に流れる藍色の髪が揺れる。
仕事への影響を考えてか、顔にかかる部分だけを、まとめて後頭部で留めていた。沈み切る直前の夕陽に、銀の髪留めが光った。

そして。

「…さようですか」

リリィのそのセリフで、ジャーファルが動くのは必然といえただろう。

「…お前を殺す」
「ふふ。…参ります」