二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【マギ】光と影−日常事件帳−コメ&ネタ募集 ( No.84 )
- 日時: 2014/03/31 13:28
- 名前: リーフ (ID: O72/xQMk)
28話
宴の夜、シンドリアの民たちは殆どが王宮の広場にお詰まるため、港や果樹園、その付近の住宅地は静まり返り、何の気配もしない。
動物たちでさえ、宴のおこぼれを求めて王宮の方へ移動するからだ。
そんな人気のない闇夜のシンドリアの海岸…いや崖の上に、一人の女がいた。高く大きな岩の上に、一人静かに。
「騒がしいこと…人間が多くて嫌になりますわ。」
長い長い藍色の髪。闇を切り抜いたような黒づくめのローブ。左腕には、鈴のついた銀の腕輪が光る。
彼女——暗殺者リリィは整った顔に皺を刻み嫌悪を露わにすると、ふと上空の月を仰ぎ見た。…いや、その月にかぶさる、一人の青年のシルエットを見た。
月光に反射する白い肌。長く大きく膨らんだ三つ編み。本心の読み取れない笑顔を浮かべた青年を。
「……少し遅かったのではなくて?」
「そう言うなって。絨毯借りてきてやったんだからよォ。」
絨毯。彼は、空飛ぶ絨毯に乗って現れた。とは言ってもサイズはそれほど大きくなく、大人が10人乗れるかどうかの大きさだ。だがそれは、まぎれもない迷宮道具。
そして島国を見下ろす面には、煌びやかな裏地にはっきり書かれた『煌』の文字。
極東の大国、煌帝国。
青年は絨毯の腕からリリィに手を振り、来いよと合図する。島の外側、シンドリアの天才魔導士が張った結界の外側から。
「えぇ、ただいま参りますわ。」
華やかに微笑むと、リリィはくっと手を伸ばす。どこからか生まれた光が絨毯の端にしっかりと巻き付いた。強度を確認し、彼女のブーツが岩を蹴る。助走をつけて走り下り…リリィは崖を飛び下りた。
その行為は同時に、島を覆っている結界から完全に出たことを意味する。重力に従って落ちていく体は、途中で止まり、重力に逆らい上昇を始める。
するすると流れるように上昇すると、その体は絨毯の上にふわりと降り立った。リリィは青年の操る杖を見て、また華やかに微笑む。
「お見事ですわ。」
「はっ、お前が黒に染まりきってなくて…しかも光の力を持ってて助かったぜ。この結界も穴があるもんだな。」
「御冗談を。貴方様が結界の命令式を弄られたのでしょう?」
「何だよ、見てたのかよ。」
面白くなさそうに舌打ちするが、リリィは気にせずその白い腕に自身の腕を絡めた。
「それより、早くいかないと気づかれてしまいますわよ?」
「あぁん?…かもな。じゃ飛ばすぜ。落ちんなよ?」
「えぇ、じゃあ連れて行って下さいな…」
心底楽しそうに笑うと、リリィの心に反応するようにルフが飛び出す。月の光よりまばゆい白い光を出しながら、ルフ鳥が飛ぶ。
白い光の中に黒い光を交えて、リリィは青年の名を呼んだ。
「ねぇ……ジュダル様?」
***
やっとこさ出てきましたリリィ!これからもチラチラと伏線張りに暗躍します。