二次創作小説(紙ほか)
- Re: 遊戯王、七つの輝きと光の守り人 ( No.11 )
- 日時: 2014/01/27 22:58
- 名前: 緋兎雫 ◆cW98CwF.kQ (ID: g8YCqQvJ)
「次に俺のターンが来れば、俺の勝ちだ!」
男の言葉で、不安になったらしいルビー・カーバンクルが心配そうに話しかけてくる。
『水葵……策はある?』
正直に言えばない。
メイコウはリリースし、墓地に送ったため使えない。また、平和の使者を破壊できるカードは、現時点で手札にも、フィールドにもない。
「伏せた大嵐は、相手フィールド上にカードが二枚以上ないと発動できないカウンター罠だし」
伏せてある大嵐は、相手フィールド上にカードが二枚以上伏せられていないと使えない。と水葵は勘違いしていた。
「あれ?大嵐って確か……」
ルビー・カーバンクルが言い終える前に、水葵は自身のデッキを信じ、ドローしていた。頼りになるカードは必ずデッキに。それを信じるだけ。
引いたカードを見た水葵の瞳が揺れる。デッキがまた、応えてくれた。これなら、平和の使者を攻略できる。ただ、やり方に自信がない。それは、最近覚えたばかりの『ある召喚方法』。水葵はクラスの木村君に教えてもらった言葉を、この場で一生懸命に復唱する。
「そう確か……チューナーとチューナー以外のモンスターのレベルを合計して、同じにすればいい……のよね」
と呟いて水葵は、次に自分が何をしようとしているのか手を明かしていることに気がつく。
慌てて口を閉じた。
しかし、男の反応は、
「何かのまじないか。どんなに祈っても、状況は変わらんな」
その召喚方法を知らない様子で水葵はほっとする。
なら、と張り切って引いたカードを召喚しようとした時、ルビー・カーバンクルから待って、と声がかかる。
「ルビー・カーバンクル、何の用?」
召喚を邪魔された水葵は、不機嫌な声でルビー・カーバンクルに問う。
『水葵。チューナーってなに?』
水葵は説明するのが面倒なので、質問には答えなかった。
カードホルダーからルビー・カーバンクルを取り出すと、ディスクの空いた部分に置く。ここからなら、ルビー・カーバンクルでも、デュエルが見えるはずだ。
「ルビー・カーバンクル、フィールドはよく見える?」
『う、うん。よく見える』「なら、そこでよく見て。チューナーモンスターを、ね」
今度こそ水葵は、引いたモンスターをフィールドに呼び出す。
「私はチューナーモンスター、ガスタの巫女ウィンダを召喚!」
『ガスタの巫女ウィンダ
☆2、風、サイキック族。ATK1000、DEF400』
フィールドに緑の髪を後ろで一つにした、若い少女が現れる。巫女、と言うが杖を持っているので魔法使いのように見えた。
「また雑魚か」
「あんた、チューナーモンスターを知らないの?」
「そんな雑魚、俺は知らんな」
水葵が率直に尋ねると、男は吐き捨てるように言った。チューナーモンスターを雑魚呼ばわりする辺り、本当にシンクロ召喚を知らないようだ。
ちょっとした優越感を感じながら、水葵は宣言する。
「私はレベル2のガスタの巫女に、レベル4のヒータをチューニング!」
男がたじろぐ。
「な、なんだ!何をするつもりだ!」
ウィンダが二つの光の球へと姿を変え、輝くヒータと交わる時、光が弾け、新しいモンスターが現れる。
それは、水色の身体を持つ龍だった。頭には氷のトゲを思わせる凹凸、閉じれば身体を覆ってしまいそうな翼がある。
「シンクロ召喚!氷結界の龍、ブリューナク!」
『氷結界の龍、ブリューナク。☆6、水、海竜族、シンクロ。ATK2100、DEF1400』
突如現れたブリューナクは、首を持ち上げ天に向かい鳴いた。
逆ギレパンダとは違う、畏怖を感じさせる鳴き声はさすが、龍と言ったところか。
(クラスの木村君がこれを入れたら強くなれる、ってくれたカード。ありがとう、木村君!)
余ったからあげる。
と、くれたデュエル仲間の木村君に礼を心の中で言う。
ブリューナクを前にした男は、たじろいでいた。
「し、シンクロ召喚だと!?な、何だ、この奇妙なモンスターは!」
『す、すごい!こんな召喚は初めて見たよ!』
一方、ルビー・カーバンクルは感嘆の声を上げた。
ふ、と勝利を確信したように笑うと、水葵はブリューナクのモンスター効果を発動する。
「ブリューナクの効果発動!」
ごくん、と男が生唾を飲む。その顔は恐怖からすっかり青ざめていた。
(シンクロ召喚も、ブリューナクも、今の遊戯王では普通なのに)
水葵は、男の反応を不思議に思う。クラスの男子と戦えばシンクロ召喚や、ブリューナクは当たり前のように出てくる。別段、驚くことではないのだが。
「私は、手札を二枚、墓地へ送る。そして、私が墓地に捨てた枚数分、あんたのフィールドのカードは、あんたの手札に戻る!」
「な、なに……」
男の顔から、血の気が失せる。
ブリューナクの効果で、フィールドにセットしたモンスターと、平和の使者、二枚が男の手札に戻った。これで攻撃を制限するカードも、モンスターもいない。——つまり、男のフィールドは、がら空き。
『そうか!永続魔法は、フィールドに存在しなければ意味がない。手札に戻してしまえば、その効果は無効だ!』
ルビー・カーバンクルが、嬉しそうに解説をした。
水葵はブリューナクに攻撃の指示を出す。
「これで決めるわ!ブリューナクで、あんたにダイレクトアタック!」
ブリューナクは軽く空気を吸うと、息と共に冷気を吐き出した。冷気は大量の雪を帯びながら渦巻き、吹雪となって男に吹き付ける。吹雪をくらった男は、呆然と己のD・ディスクを見つめていた。LPを現す数値が0となるのを、真っ青な顔つきで眺めていた。
男
LP650→0
「ば、バカな……この俺が敗北しただと……」
震えた声で呟き、男は足下を見る。
フィールドにある不思議な模様が、ゆっくりと収縮していた。模様は徐々に小さくなり、やがて男の足下まで来ると止まる。
男は意味不明な言葉を叫びながらその場から逃げだそうとするが、見えない壁に阻まれ動けなかった。
来るな、と何度も繰り返しながら後ずさるが勿論進めない。抵抗むなしく、模様が輝き、中から一本の光が伸びる。男は光の柱に飲み込まれた。
〜つづく〜