二次創作小説(紙ほか)

Re: 散りゆく蘇芳色の灯 (銀魂)  ( No.1 )
日時: 2014/03/09 00:07
名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: 5D.A9gym)
プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11791153623.html

 

 零




 
 真選組一番隊隊長を背負うという事は、常に生死の境に立っているようなものだ。戦場(いくさば)では戦いの火蓋をきることも少なくなければ、最前線にて命のやりとりを行うことは当たり前の事。寧ろ俺はそんな状態を一度も苦に感じた事はなく、どちらかと言うと、また一つ命を狙われる立場へと化す副長の座につきたいくらいだ。
 それはただ、近藤さんに一番近い場所にいられるから。そして彼を俺の手で護りたいからということが最も大きな理由だ。俺の命を落としてでも護り抜き、俺の命を落としてでも生かし続けたい存在。第一、俺が真選組にいるのは近藤さんが真選組にいるからであって、決して幕府を護りたいとか、市民の安全を第一に考えてだとか、そういうものではない。だからこそ近藤さんを失った時を考えるのが正直言って恐い。まぁ、そんなことにさせるつもりは微塵もないのだが。



「おい、総悟。この間の攘夷浪士討伐の任務の報告書、まだ出てねぇぞ。いつまで待たせるつもりだ、とっとと出しやがれ」



 本日も絶好調にウザってぇ土方さんにとりあえず一発バズーカをお見舞いしておいてから、俺は局長室へと向かった。
 穏やかな春の陽光。屯所の庭の木には桃色の蕾がつきはじめているようだ。もう少ししたらあれが開くのだろう。暖かな今日(こんにち)の気候につられてか、特に仕事のない隊士達は庭で談笑をしている。山崎はいつもより激しくミントンを振っているようだ。あ、土方に追っかけられてる。



「近藤さん」
「お、総悟」



 縁側で胡座をかいて隊士達を見つめていた近藤さんの瞳が、俺へと向けられた。俺とは違う優しい瞳だ。隣に静かに腰掛けると、優しい笑みがその口元に浮かんだ。この笑顔を見るだけで心がぽわ〜んと温まる俺は、幸せ者なのだろうか。



「今日はいい天気だなぁ、総悟。ほら、庭の木を見てみろ。暖かい日が続いているから、もう蕾が出来始めているぞ。アレが咲く頃にはいつものお花見スポットも満開だろうなァ。今年も恒例のお花見に行こうな。あ、もしかしたらまたお妙さんに出会えるかも!」



 グフフフッと嬉しそうに笑っている近藤さんを見ていると、俺も笑いがこみ上げてきた。そんなちっぽけなことで笑えるなんざ、本当にこの人は幸せもんだ。そしてそんな近藤さんを見て笑える俺も、やはり幸せ者なのだろう。



「去年は旦那達に出会って、ひでぇ目にあいやしたからねェ。叩いてかぶってジャンケンポンをしやしたっけ」
「そうだったなァ。で、確か俺はジャンケンで負けて即座にそれを判断してヘルメットをかぶり見事にセーフになり、その素早い行動力にお妙さんが俺に惚れ……」
「幸せな夢ですねィ」



 実際はセーフになったにも関わらず、頭を物凄い力で殴られて失神していたと思う。いや、でも姉御は正直恐ろしいや。絶対に調教できない気がする。第一、調教しようとした瞬間に近藤さんに止められるだろう。



「今年も行こうな、お花見」



 想像するだけでワクワクするのだろうか。白い歯を見せて豪快に笑いながら、近藤さんが明るい声で言ってくれた。勿論だ。それを言おうと思って来たのだが、先を越されてしまった。まぁ、いい。またみんなで馬鹿やって、酒飲んで、叩いてかぶってジャンケンポンでもすればいい。そうだ、今年は俺が初めから姉御や旦那に声をかけておこうか。



「そうですね、行きやしょうぜ」



 土方に首を絞められている山崎や、談笑をしている原田さんや、日向ぼっこをしている永倉さんや、桜の蕾を見ている藤堂さんや、刀の手入れをしている神山や。皆を誘って行こう。きっとまた、楽しい花見になるだろう。きっとまた、近藤さんは豪快に笑ってくれるだろう。それでいい。というより、それがいい。って、あ。土方を入れるの忘れてた。



「楽しみだなぁ」



 素直な人だ。あぁ、本当に俺はこの人を護りたい。死ぬ時はこの人を護って死ねれば、きっとそれは本望だ。



「、ケホッ」



 風邪かな。ほんの少し、体調が優れないようだ。