二次創作小説(紙ほか)

Re: 散りゆく蘇芳色の灯 (銀魂)  ( No.5 )
日時: 2014/03/21 00:55
名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: SiB1Ygca)
プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11795352504.html










『そーちゃん。ほら、梅干しのおにぎりも作ってあるの。食べるでしょう?』



 母上と父上が亡くなり、取り残された俺と姉上。幼い俺を、姉上はそのか弱い身体からだで必死に護ってくれた。とても甘やかされたと思うし、俺自身も甘えていた。だから結局は、俺は何も気づくことができなかったのかもしれない。そんなんだから、俺は姉上の幸せを奪うだけ奪って、あんな終わりを迎えてしまったんだ。今思うだけで苦しくなる。



『よかったら、皆さんもおにぎりを食べてください。他にもウインナーとか、肉巻きとか、ちょっとしたお野菜とかあるので。あとお茶も持ってきてるので、どうぞ』
『ミツバ殿、ありがとォォォォォォォ!』



 あぁ、これは夢か。とても幸せだった頃の、夢だ。
 真選組結成前に武州にいた頃、姉上とみんなで一緒に行ったお花見。姉上がつくった料理が桜の下にたくさん並んでいて、心の底から感動したのを覚えている。確か、土方にだけは負けないように思いっきり食った。



『土方てめぇ! 姉上のりょーりは俺のもんだ!』
『知るかよ。クソガキが食い意地はってんじゃねェ』
『てめーに食わせるりょーりはねェ! お前のもんは俺のもんだ! ちなみに俺のもんは俺のもん!』
『何なんだよこのちっせェジャイアン』



 あの頃の俺は馬鹿だった。だがしかし土方に馬鹿にされるのだけは許すことができない。
 夢の中の幼い俺がふと姉上の方を見れば、彼女は視線に気づいてこちらを見ると、ふんわりと花が綻ぶかのような、優しい笑みを見せてくれた。幼い俺はその笑顔が本当に好きで好きで、えへへと言わんばかりにつられて笑ったものだ。ちなみに今もあの笑顔が大好きだ。



『お米がついてるわよ、そーちゃん』



 ふふっと微笑み、白く細長い綺麗な指で、俺の口の端についていた米をとってくれた姉上。夢の中の姉上も綺麗で、俺の心臓はギュッと誰かに掴まれているかのように痛くなった。そう、これは夢なんだ。この綺麗で優しい笑顔を、もう現実では見ることができない。そう思うと苦しくて悲しくて、そして罪悪感と嫌悪感に満ちてしまう。呼吸困難になりそうだ。



『あね、うえ』



 苦しい。息ができない。苦しい。なんだこれ、ホントに苦しい。








 死ぬ————————————————————

















「ん、……うべほッ!」
「うわ、死んでなかったアル」



 三途の川が見えましたけど何か。
 息が苦しかった原因はこれか。これというのも、言わずもがな、クソチャイナだ。ホントにジャンプ漫画のヒロインかと疑いたくなるほどの悪顔とニヤつきで、眠っている俺の鼻と口をおさえていたようだ。そりゃぁ息もできないといったもんだ。



「てめぇ、何しやがんでィ。死んだ駄菓子屋のばーちゃんが見えただろーが」
「そのままついていけばよかったアル。くたばれサド、消えろサド」
「その言葉そのまんまバットで打ち返してやらァ。お前が死んだら死んでやるよ、だから死ねチャイナ」



 会話しつつも辺りを見回せば、平隊士は片付けに入っている。どうやらかなりの時間眠っていたらしい。
 しかしまぁ、眠っている輩もいる。万事屋の旦那と土方さんはまた飲み比べでもしていたのだろうか、シートのど真ん中で二人仲良く大の字で豪快に眠っている。近藤さんも談笑している姉御から数メートル離れたところで眠っている、というよりかは殴られて失神している。



「オイ、サド」
「なんでェ」
「熱があんなら花見なんて来るなヨ。私に伝染ったらどうしてくれるアルか」
「熱……?」



 そんなものあるはずがない。朝から体はピンピンしている。とか思いつつ額に手を当てれば、なるほど、結構熱い。三十八度手前といったところか。平熱はそこそこ高いから、微熱である。この間の咳も、やはりこの風邪の予兆だったのかもしれない。



「お前の鼻つまんでたらかなり熱かったアル。帰れ馬鹿」 
「俺の風邪菌はな、伝染ると金持ちになれるっつージンクスがあるんでィ。だから伝染うつしてやらァ」
「お前からの菌というだけでもおぞましいアル。てか何だヨそのジンクス」
「流石はニートだ。俺の風邪菌のジンクスも聞いたことが……」



 そこから先は一旦とまってしまった。それも咳が出たからだ。この間よりも少しキツいか。しかしようはただの風邪だ、気にする必要はない。片手を口元にあてて、菌がなるべくとばぬように下をむいてそれをなんとかやり過ごした。



「っはぁ……。まじで、帰る。おめーのせいで体ダリーや」
「なんで私のせいアルかクソサド」
「じゃーな」



 チャイナの細足に一発軽く蹴りをいれ、平隊士に先に戻ると伝えて帰路についた。
 夕日は既に傾き始めている。昼間は暖かいが、やはり日が暮れてくると少々肌寒い。それともこの体調のせいなのか。



「、ゴホ…ッ」



 なんだろう。
 夢のせいか、さっきから姉上の顔が頭から離れねェんだ。