PR
二次創作小説(紙ほか)
- Re: 12歳。〜もう1つのカップル〜 ( No.3 )
- 日時: 2014/03/09 14:18
- 名前: 薫 (ID: f30p0hGp)
修学旅行当日
「うわあ〜!おっき〜……ねっ、織ちゃん、結衣ちゃん」
花日ちゃんは、宿泊先の旅館を指差し、言う。
大げさだと思う?
全く、大げさ何かじゃない。
本当に、大きいのだ。
「皆さん!しおりに書いてある部屋に、向かってください!後は、スケジュール通りです!」
騒がしい皆に聞こえるよう、先生が叫ぶ。
「行こう、皆」
何かよくわからないけど、無理やり班長にされた私は、皆を誘導する。
「うわ。部屋ひろーい」
珍しく、部屋に入って第一声をあげたのは、結衣ちゃんだ。
そう言われてから、私は部屋を見回した。
確かに、広い。
6人が泊まるには、十分な広さだ。
とりあえず、集合時間まで、部屋で自由行動。
私は、荷物の中から、折り畳み式のキーボードを取り出す。
まず、簡単な基礎練習から。
スケール……カデンツ。
そんなことをしていたら、皆聞いてるし。
「ね、何弾くの!?」
花日ちゃんは、興味深々。
「織ちゃんって、ピアノ弾けるんだ?」
うーん……
普通の弾けるより、少し上くらいかなあ。
私、ピアニストだもの。
……なんて言えないけど。
「……弾くのは、『ラフマニノフ』」
私の言葉に、皆は首を傾げる。
知らないか。
そんな皆の反応を無視して、弾き始める。
第一音!!
私の得意な、ラフマニノフ。
私の小さな手は、ギリギリオクターブ和音に届くくらい。
今はキーボードだから、ペダルもない。
それでも、"私"の世界は創れるはずだ。
ピアノに向かってしまえば、国際コンクールもここも、私にとっては同じこと。
ピアノの以外、何も見えない。何も聞こえない。
ピアノが好き。
深く……、広く……。
今の私に奏でられる、最高のラフマニノフ。
深いため息と共に、最後の1音を弾き終えた。
PR