二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.20 )
日時: 2014/08/08 00:05
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

「ハッピーバースデートゥーミー」

「ハッピーバースデーディア遥ちゃーん」

「ハッピーバースデートゥーミー」







 今日は、4月18日。ただいまの時間、夜の11時。
 もう少しで、私の誕生日が終わってしまう。










 番外篇【誕生日って祝われる方はもちろん、祝う方も幸せになれる魔法みたいなもん】










 ちなみに、真選組の皆さんからは何ももらってません。



 別に期待はしてなかったけどね! どうせそんなことだろうと思ってた!

 コンビニで買ってきたケーキにフォークを突き刺す。ふわふわのスポンジケーキが少しだけへこんで、ぎゅうっと潰れた。最後の一口を頬張る。




 みんなが私の誕生日を祝ってくれないのは、当たり前のこと。だって、私、誰にも言ってないし。

 いや、山崎さんには言った。あの人が隊の中では一番まともそうだから、「私、18日が誕生日なんですよー」って4月に入ってからずっと言ってたっけ。





 まあ、その努力も無駄になったわけですけど?





「遥ちゃんいるー?」


 真っ赤ないちごを口に放り込んだ瞬間に、襖の外から声がかかる。声的に山崎さんかな。


「ひまふほー(いますよー)」

「んじゃ、開けるよ」


 すーっと開いた襖から、山崎さんが入ってくる。その後ろには、近藤さんと沖田さんもいる。



「遥ちゃん、はいこれ」

 山崎さんから、綺麗にラッピングされた袋を手渡される。割りと大きめだけど、厚みはそんなにない。


「これは俺からだぞ!」

 今度は、近藤さんが金色のリボンがかけられた小さな箱をくれる。


「ほらよ」

 沖田さんも、赤い小さな箱を投げて寄越してくる。



「え? どうしたんですか皆さん?」

「だって、今日誕生日なんでしょ」



 山崎さんが不思議そうな顔をして尋ねる。



「お、覚えてたんですか!?」

「遥ちゃんが言ってたんでしょ。あんだけ言われれば、さすがに覚えてるよ」

「ありがとうございます! 開けてみてもいいですか?」


 と尋ねつつも、私の手はすでに山崎さんからもらったプレゼントに向かっている。




「……山崎さん。これ何すか?」

「ミントンのラケットだよ」


 山崎さんからのプレゼントは、ミントンのラケットでした。嬉しいけど、私、ミントンできないよ?
 とりあえず、今度山崎さんが教えてくれるらしい。暇潰しになっていいかも。



「さーて、近藤さんのは何かなー」


 気を取り直して、今度は近藤さんからのプレゼントを開ける。

 そして、無言でしまい直す。



 誕生日プレゼントに毛抜き持ってくる馬鹿がどこにいる。しかもこれかなり頑丈だぞ。ストーカーなみの剛毛抜くのに使うやつだろこれ。

 「どう?どう?」とドヤ顔をしてくる近藤さんの顔
面にミントンのラケットを投げつける。あ、これ案外役に立つわ。

 最後に、沖田さんからのプレゼントに手を伸ばす。



「……あれ?」


 どうせ沖田さんのことだから、ビックリ箱でもしかけてるんだろうと思って恐る恐る箱を開けると、中に入っていたのはこじんまりとした櫛だった。漆が塗られてつやつやしたそれには、桜がデザインされている。



「そこらへんに落ちてたんで、拾ってきたんですぜィ」

「落とし物なんですかこれ? 持ち主現れなかったらもらえる感じですか?」



 落とし物にしては綺麗なそれを箱にしまい直す。山崎さんからもらったマイラケットも、机の隣に立て掛けておく。毛抜きは引き出しの奥の方に封印した。さらば毛抜き。










 〇










 あれから続々と隊士たちがやってきて、ハンカチやらお菓子やらをたくさんくれた。
 時計を見れば、もうすぐ12時になってしまうところだった。


 そろそろ寝るかと布団をひき始めたとき、襖ががらりと開く。何事かと思い咄嗟にマイラケットを手に取り構える。



「……あれ? 土方さんどうしたんですか?」



 部屋に入ってきたのは、刀を持った土方さんだった。
 私の質問には答えず、無言で刀をつきだしてくる土方さん。不思議に思いながらも刀を受けとると、土方さんはそのまま部屋を後にしようとする。



「え! ちょっ!? 土方さん?」

「フン。そのちゃちな刀じゃ切れるもんも切れねェだろーが」



 いつものように鼻を鳴らし、ぶっきらぼうに言う土方さん。プレゼントかどうか聞きたかったけれど、そうしたら土方さんが怒りそうなのでやめておいた。



「ありがたく頂戴します! 大切にしますね」



 土方さんの背中に向かって声をかける。返事も何もないまま襖が閉まり、静かになった部屋に12時を告げる時計の音楽がなる。


 後ろを見ると、みんなからもらったプレゼントの山ができていた。小さい山だけど、気持ちはいっぱい込められている。と、信じたい。







「ハッピーバースデー私。と、愛すべき片割れ」