二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【質問受付中!】 ( No.41 )
日時: 2014/08/07 21:33
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

「え? 斬っちゃうんですか!?」



 今は土方さん、沖田さんと一緒に見回りをしているところだ。
 そんな最中に聞こえた物騒な単語に、私は思わず土方さんに聞き返してしまった。


 当の土方さんは、無言で電柱の貼り紙をビリッと破りとる。近藤さんの件で殺気立った隊士たちが作ったものだ。
 てめェコノヤローから始まり、最後には一族を根絶やしにするとまで書いてある。

 とても警察官が作ったものとは思えない……。



「ああ斬る」

「件の白髪の侍ですかィ」

「斬るって、近藤さんがちょっと怪我しただけでしょう?」

「真選組の面子ってのもあるが、あれ以来隊士どもが近藤さんの敵とるって殺気立ってる。でけー事になる前に俺で始末する」


 貼り紙をグシャグシャに丸めながらそう言う土方さんに、少しだけ呆れた様子の沖田さん。


「土方さんは二言目には斬るで困りまさァ。古来、暗殺で大事を成した人はいませんぜ」

「暗殺じゃねェ。堂々と行って斬ってくる」


 沖田さんの言葉を聞いても、土方さんは意志を変えるつもりはないらしい。

 近藤さんがちょっと頬腫らしてきただけなのに、そこまでしなくてもいいんじゃ……。もしかしてもしかしなくても、この人斬りたがりか?


「あ。そんなことしないで、白髪頭の人適当に連れて帰りましょうよ。それでみんなも落ち着くかもしれないし」

「だったらこれなんてどーです」


 沖田さんが指差したのはホームレスっぽい一人のおじさん。
 帽子を被ってはいるけど、確かに白髪頭の侍に見える。



「ホラ、ちゃんと木刀もちな」

「もうちょっと足開いた方がそれっぽいですよ」

「ジーさん。その木刀でそいつらの頭かち割ってくれ」

「パッと見さえないですが眼鏡とったらホラ」



 そう言って、沖田さんがおじさんの顔から眼鏡を外した。



「武蔵じゃん」

「おークオリティ高いっすね。まんま武蔵じゃん」

「何その無駄なカッコよさ!!」




 結局私の提案は却下され、武蔵っぽい人と別れた。最後まで武蔵だった。




「で、マジで殺る気ですかィ? 白髪って情報しかこっちにはないってのに」

「そうですよ。見つかりっこないですって」

「近藤さん負かすからにはタダ者じゃねェ。見ればすぐわかるさ」

「えー無理っしょー」



 三人で白髪の侍について話しながら歩いていたら、いつのまにか工事現場の前までやって来ていた。
 そういえば、この前からこの辺りで工事してるって山崎さんが言ってたなぁ。





「おーい兄ちゃん危ないよ」





 突如上から聞こえた気だるそうな声。それとほぼ同時に落ちてきた材木の束。

 ちょうどその真下にいた土方さんが、すんでのところでそれを避ける。



「あっ……危ねーだろーがァァ!!」

「だから危ねーっつったろ」


 はしごを使って降りてくる作業員。


「もっとテンションあげて言えや! わかるか!!」

「他人からテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」




 そう言って、ヘルメットを脱いだ人物は————。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 土方さんがすごい形相で叫ぶ。


「てめーは……池田屋の時の……」

「坂田さん!」


 はしごから降りてきた作業員は、先日ライブハウスで食恋族を倒した坂田さんだった。
 昨日も会ったばっかりだから、大した感慨もないんだけどね!



「そぉか……そういやてめーも銀髪だったな」

「おー、ポニーテール。と、……えーと君誰?」



 不思議そうな顔をする坂田さんを見て、なぜか納得したらしい土方さん。
 それに対して、土方さんのことをすっかり忘れたらしい坂田さん。



 予想外の展開に固まる土方さんの横で、私は思わず吹き出してしまった。



「あ……もしかして多串君か? アララすっかり立派になっちゃって。なに? まだあの金魚デカくなってんの?」

「……ぶはっ! あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


 続く坂田さんの言葉に、今度は大笑いしてしまった。

 多串君って誰なの? 坂田さんの知り合いなの? 金魚すっごく気になるんですけどォォォ!?
 てか土方さんの顔が一番笑える。土方さんワロタ。





「オーイ!! 銀さん早くこっち頼むって」

「はいよ」



 相変わらずダルそうな坂田さんと、笑いが止まらない私。沖田さんも表情には出してないけど、少しにやにやしている気がする。


「じゃ多串くん、俺仕事だから」


 そう言ってはしごを登っていく坂田さんを、三人で静かに見守った。




「いっちゃいましたよ。どうしやす多串君」

「追いかけなくていいんですか多串君」

「誰が多串君だ」


 土方さんが私と沖田さんの頭をグッと掴んだ。髪の毛抜けるんですけども。痛いんですけども。
 これってパワハラなんですかね。



「あの野郎わずか二、三話で人のこと忘れやがって。総悟、ちょっと刀貸せ」



 不思議そうな顔をしながらも、言われた通り沖田さんは土方さんに刀を渡した。私はそれを黙って見つめる。




 沖田さんから刀を受け取った土方さんは、徐にはしごに足をかけた。

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【質問受付中!】 ( No.42 )
日時: 2014/08/07 21:37
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)


 ————ガキィィン。




 刀と刀の交わる音がする。それと同時に宙を舞う銀髪の侍。


 ガタゴトと屋根を転がりながらも、体勢を立て直す。屋根のギリギリで侍は止まった。


 銀髪の侍に対峙するのは黒服の侍。










 ————坂田さんと土方さんは、足元が不安定な屋根の上で戦っていた。










 土方さんが屋根に登ったあと独特な金属音が聞こえるまでに、そう時間はかからなかった。

 私と沖田さんは近くの家の屋根へと急いだ。そこにはなぜか近藤さんの姿もあった。


「近藤さん!? どうしてアンタまでここに……」

「お前らの考えることは全部分かっちまうんだよ」



 つまり、近藤さんには全部お見通しだったってことか。
 屋根の上では、土方さんが坂田さんへと近づいている。一歩ずつ、確実に。




「叩き斬るのみよォォォ!!」



 土方さんが坂田さんへと刀を降り下ろす。凄まじい音と共に上がる砂煙。



「斬った!?」

「いや、まだですぜィ」



 土方さんの背後、砂煙の中から坂田さんが飛び出してきた。土方さんの後頭部に、坂田さんの飛び蹴りが決まる。
 けれど、そう簡単に負ける土方さんではない。

 土方さんは空中でくるりと半回転すると、坂田さんの左肩を斬った。油断していたのか、坂田さんはそれをモロにくらった。上がる血飛沫。


 お互いに弾かれるように、土方さんと坂田さんは飛んだ。二人とも屋根に叩きつけられる。





 坂田さんが何かを叫んでいるけれど、うまく聞き取れない。


「アイツら何話してんだ?」

「ダァァ!! もう! 気になる!!」

「そんなことより……あの人、まだ刀抜いてやせんぜ」



 そうだ。まだ坂田さんは刀を抜いていないんだ。
 土方さんが一方的に斬りかかっている、否、命を狙っているっていうのに。



「あっ! 刀抜きましたよ!!」



 私が坂田さんの抜刀を確認したとき、既に土方さんは坂田さんへと斬りかかっていた。



「今度こそ斬ったか!?」

「いや、あの人の方が速ェ……」

「ひ、土方さん!!」

















 ————カラン。






 無機質な音が辺りに響く。土方さんの刀が折れて落ちた。



 何事も無かったかのように坂田さんが去っていく。
 坂田さんは、土方さんを斬らなかった。



「なんで、なんで斬らないの?」

「……フフ、面白ェ人だ。俺も一戦交えたくなりましたぜ」

「やめとけ。お前でもキツいぞ総悟。アイツは目の前で刃を合わせていても全然別のところで勝手に戦ってるよーな男なんだよ」


 近藤さんがまっすぐ前を見つめて言う。


「勝ちも負けも浄も不浄も越えたところでな」

「……カッコつけてますけど近藤さん、負けましたよね」

「しかも刃なんか合わせてねーですぜ」

「木刀折られただけですしね」

「「…………カッコ悪ぅ」」

「ちょ、ちょっとォォォ!! 二人とも!?」