二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【守りたい約束篇】 ( No.49 )
日時: 2014/08/13 18:05
名前: 春太郎 (ID: YUWytwmT)

 というわけで、ポニーテールに渡された紙の場所まで来たんだが……。





「え? 何もねーじゃん」










 ○










「どうでしたか銀さん。私の妹見つかりました?」

「それなんだけどよー。家がさ、燃えて無くなっちまってた」

「…………え?」

「火事で全焼だとよ」


 今日は久しぶりに休みがとれたので、万事屋に寄ってみたのだけど……。





 え? 火事? 全焼?
 銀さん何言っちゃってんの? いやいやいや、嘘でしょ。銀さんのお茶目な冗談でしょ。だって私、そんな話聞いたことないし。火事で全焼とか有り得ないって。ちょっ、お願いだから誰か嘘だって言ってよ。


「う、嘘ですよね?」

「住んでた奴らは全員死んだって」

「う、嘘だ! 歩が、そんな簡単に、死ぬわけない」



 新八君と神楽ちゃんがこちらを見てくれない。二人とも気まずそうに俯いて、私と目を合わせないようにしている。顔が見えないから二人が何を思っているのか全然分からない。それが余計に怖い。嘘でしょ歩が死んだなんて。
 気づけば、湯飲みの中のお茶がゆらゆらと揺れていた。いつの間にか私の手は震えていたみたいだ。
 新八君と神楽ちゃんはさっきから
黙りこんでいるし、私も少しパニック状態だ。冷静なのは銀さん一人だけ。銀さんは動揺を隠しきれない私をじっと見ている。その目はいつもの死んだ魚みたいな目とは少し違った。



「……遺体が、一つ足りなかったって近所の婆さんが言ってたな」

「足りな、い?」

「一つは背の高いオッサンの、もう一つは小太りのオバサンのだったらしい。婆さんが言うには、そこに住んでた夫婦だろうって話だ。でも、その夫婦と一緒に住んでた若い娘の遺体だけいくら捜しても出てこねェ」

「それって……」

「意外と、どっかで生きてんじゃねーの。お前の妹」





 どうでもいいような顔をして銀さんはそう言った。その言葉に全身の力がふっと抜けてソファに沈みこむ。



「……はー。銀さんがすごく真面目な顔して言うから焦っちゃったじゃないですかぁ。あー良かった」

「……あの、遥さん」

「なんだい新八君」

「遥さんの妹さんってどんな人なんですか? そもそも、どうして妹さん探しなんて……」



 そんな不安そうな顔しないでよ新八君。私も、私の妹も怪しい奴なんかじゃないんだからさ。
 でも探す立場からしたら気になるんだろう。神楽ちゃんも少し真剣な表情で私を見てくる。なにより、銀さんの視線がちょっぴり痛い。





「確かに、万事屋の皆さんには知る権利があるかもしれませんね。私達姉妹の昔話を」

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【守りたい約束篇】 ( No.50 )
日時: 2014/08/25 14:37
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

 田舎の村に琥珀色の髪をした双子がいた。なにをするにもいつも一緒で、やることなすことぜんぶが同じだった。どこか対称的に見えて似た者同士の姉妹。

 けっして恵まれた家に生まれたわけではないけど幸せだった。優しい両親のことも同じ顔をした妹のことも大好きだったから。





 ————姉妹が五歳のとき、二人の両親は死んだ。





 あまりにも突然のことだったから悲しんでる暇もなかった。とにかく、泣きじゃくる妹をなんとかしないといけない。ずっと二人で手をつないでいた。
 妹の右手は涙を拭くので忙しそうだったから、姉は妹の左手を握ってあげた。姉の空いた左手は、近所のお兄ちゃんが握ってくれていた気がする。今は涙を拭くための手が足りないから泣かなくてよかった。
 今日は泣けないから、明日いっぱいなけばいいや。

 幸い、父方の叔父夫婦が姉妹のどちらかを引き取ってくれるらしい。頭がよくて、礼儀正しくて、美人で、優しくて、とても出来のいい妹が叔父夫婦のもとへ行った。
 姉はひとり、田舎の村に残された。


 そして、琥珀色の髪をした双子は田舎の村からいなくなった。










「……とまぁ叔父夫婦に引き取られたのが私の妹で、出来の悪い姉ってのが私のことです」

 あ、でもすぐに近所のお兄ちゃんが私のことを引き取ってくれたんで本当に助かりましたよー、と今までの経緯を一通り話し終え、お茶をすする。いやー、一気にしゃべったからのど渇いちゃった。あはははは。あはは。はは。
 あれ? なんか万事屋のみなさんがすごく複雑そうな顔をしてるんですけど。伝わんなかったかな。わりと分かりやすく伝えたつもりなんだけどなぁ。



「……お」

 お? おって何? 銀さんどうしちゃったの?





「……重いわァァァァァ!! うちの従業員がおもっくそ暗い顔してんじゃねェか!」

「人の半生ナメんなァァ! 重いに決まってんだろーが!」

「テメェみてーな小娘の半生が重くてたまるかァァ! お前の半生なんかトイレットペーパーなみに軽いわ!」

「てめこのクソ天パァァ! トイレットペーパー馬鹿にすんじゃねー! トイレットペーパーはありとあらゆる用途に使えんだよ! 紙様と呼べ紙様と!」

「うるせェェェ! トイレットペーパーはトイレットじゃなきゃ輝けねーんだよ! トイレットとアイツはベストパートナーなんだよ!」

「ちがうネ銀ちゃん! トイレットペーパーの相棒は便所アル!」

「アンタらさっきからなに話してんだァァァァァ!!」



「フッ、アンタたちやるね。見直したよ」

「……お前もな」

「おうともよブラザー!」

 そして銀さんと神楽ちゃんの手をとる。そうだ私たちは…………。




「「「トイレ戦隊ベンジョンジャー!!!」」」

「いい加減にしてください」




 おうふ。新八君がわりとガチで怒っている。もうふざけんのやめとこ。てか、ベンジョンジャーってゴロ悪いな。なんかもっとカッコいいやつ今度考えよーっと。


「……こほん。でも遥さん、どうして今さらになって妹さんを探してるんですか?」

 もっと前から探せば良かったのに。新八君が不思議そうに首をかしげる。確かに十年以上も過ぎてから探すなんておかしいというのは私も分かってる。でもね新八君、

「約束しちゃったんですよねぇ、またどこかで会おうねって。この琥珀色の髪を目印にして」

 また会う日までこの髪は切らずにいよう。二人で笑ってそう指切りをしたのだ。最後の言葉はさよならじゃなくてまたね、だった。また会おうね。
 あれから、いつのまにか私の髪はこんなに長くなってしまった。ずっと真っ直ぐ探してきたつもりなんだけどなぁ。もう、あれから十三年も経つんだ。

「でもいい加減うっとおしいし、ばっさりとショートにしたいんでちゃっちゃと見つけちゃいたいんです」

 今頃あの子、どこでなにしてんだろうな。ひとりぼっちじゃないといいな。また泣いてたりしないかな。


「万事屋さん、改めてお願いします。何年かかっても構いません。私をたった一人の妹に、家族に会わせてください」

「もちろんネ! 遥の妹は絶対私たちが見つけてやるヨ。首洗って待ってるヨロシ」

「神楽ちゃん、洗ってじゃなくて長くしてだからね」

「そうだ。ジャックと豆の木のジャックくらい長くして待ってろ」

「ジャックじゃなくて木の方ですよね」



 ————ねえ歩、早く会いたいね。