二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.5 )
日時: 2014/08/07 18:37
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

 あれから沖田さんに永眠させられるのを恐れた私は、仕方なく眠るのを諦めた。

 そして今は、土方さんに言われた任務を遂行中です。



 その任務というのが、「今のうちに要るもん家から取って来い」というもの。
 これから屯所内で生活するから、その準備がいるんだって。





「ただいま、兄さん」










 第四訓【兄弟ってのは不思議なもんだ】










 仏壇の上にある兄の写真に話しかける。

 写真たての中の兄は、相変わらず穏和そうな笑顔をしている。



「兄さん。私、あの真選組に入隊することになりました」

「あの、幕府のお犬さまだよ」

「兄さんからもらった刀、やっと役に立ちそう」

「兄さん、あんたの妹が帰ってきましたよー……」










 〇










「お兄ちゃん!」

 刀の手入れをしていた兄が、こちらを振り返る。背中に抱きつくと、ぽんぽんと頭を撫でられた。



「遥、お兄ちゃんが刀持ってるときは来ちゃ駄目って言っただろ」

「だって、暇なんだもん」

「あとで遊んであげるから」

「いつまでも子供扱いしないでくださいー」

「はいはい」




 ふて腐れる私を見て、可笑しそうに笑う兄。

 両親が一度に亡くなり預かり先の無かった私を、兄は一人でここまで育ててくれた。

 兄に引き取られたのが10年前。本当なら、そのときの兄はまだ大人からの庇護を受けているはずだった。
 それを周りの大人との縁を切ってまで、兄は私を引き取ってくれた。

 馬鹿な人だと思う。けれど、私は一生この人に頭が上がらない。




「いいなー。私も刀欲しいなー」

「女に刀は必要ないよ」

「護身用に一本!」

「木刀で十分ですー」




 兄の口癖は「女子供は笑ってるだけでいい」だった。
 笑ってるだけで、華になる。守るのは男の仕事。

 私が刀が欲しいとせがむ度に、兄はそう言った。


 私には、兄の意志がよくわからない。それで良いと兄は言う。
 お前は何にも知らずに笑ってればいいよ。そしたら、俺も頑張れる。




「じゃあ、後で稽古つけてください」

「うん、いいよ」










 〇










 何だか、懐かしい夢を見た。どうやら、いつのまにか私は眠っていたらしい。
 体を起こすと、周りには着物や、本が散乱していた。

 お気に入りの着物と、数冊の本。他に歯ブラシや、家中からかき集めたお金。
 まとめてみると、案外荷物は少ない。それらを大きなかばんに詰め込む。




「あー」



 兄さんも連れてかないと、怒るかな。

 仏壇から兄の写真を取り、かばんの中に入れる。ついでに線香をあげておいた。

 かばんを肩に引っかけ、戸締まりの最終確認を行う。次ここに帰れるのは、いつになるか分からない。





「行ってきます」




 誰もいない家に向かって挨拶を済ませ、屯所へ向かい猛ダッシュする。
 居眠りしたせいで、とんだ時間ロスをしてしまった。早く帰らないと土方さんに怒られちゃう。