二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【守りたい約束篇】 ( No.53 )
日時: 2014/08/23 19:09
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

『えーみんなもう知ってると思うが、先日宇宙海賊“春雨”の一派と思われる船が沈没した』

「どうやったら土方さんはくたばるんですかねぇ沖田さん」

『しかも聞いて驚けコノヤロー』

「さあねィ。バズーカでもぶっ放せばいいんじゃないですか」

『なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい……』

「えー。それ沖田さんがいつも失敗してるやつじゃないですか。私はもっとこうスマートに抹消したいっていうかー」

「だったら呪い殺せばいいんじゃないですかィ」

「あーなるほど。でももっとスタイリッシュに抹消したいっていうかー」



「……驚くどころか誰も聞いてねーな。トシ」

 あ、近藤さんの話全然聞いてなかった。そろりと視
線を移すと土方さんと目があった。しかも土方さんがバズーカかついでる。




 …………やばい。殺られる。










 第十二訓【イライラしてる人に「カルシウム足りてないんじゃないの」っていう奴と好き嫌いがある人に「えーアレ食べたことないとか人生の半分損してるわー」っていう奴はたいてい同一人物】










 えっと、会議中に話をしていたら近藤さんと土方さんに怒られました。バズーカでバキューンとね。


 土方さん殺る前に私が死にそうで怖いです。まだ睨んでるし、隣に座ってる沖田さんは普通の顔をしてしてるけどやっぱ慣れてるから?
 ちらりと辺りを見渡すと小さく震えている山崎さんが見えた。

 ……なるほど。沖田さんがただ馬鹿なだけか。

 それにしても、私と沖田さんの周りだけ見事に畳が焦げてるんですけど、これってどういうことなんですかね。イジメですかね。


「はいセンセー! 土方君が明らかに私と沖田君を集中攻撃してました。これってイジメだと思います!」

「……えーみんなもう知ってると思うが、先日宇宙海賊“春雨”の一派と思われる船が沈没した」


 おいちょっと、近藤先生無視しないでよ。寂しいじゃないですか。
 てか春雨っておいしそうな名前だよね。スープに絡めて食べるとすごいおいしそうだよね。カロリーも低そうだし。そういえばお腹すいたなぁ。


「しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい……」

「「「「「え゛え゛え゛え゛え゛!! マジすか!?」」」」」

「しらじらしい。もっとナチュラルにできねーのか」

「トシもういい。話が進まん」


 土方さんの妙な副長魂という名の監督魂に火がついてしまったのを近藤さんがとめる。
 そうですよ。早く話を進めましょう。確か今日のお昼ご飯の話してましたよね。あれ、違ったかも。


「この二人のうち一人は攘夷党の桂だという情報が入っている」


 桂小太郎。こないだのテロ事件の首謀者。
 いまだに近くで顔を拝んだことはないけど、あの人どんな顔してるんだろう。髪の長さじゃ負けてないと思うんだけど。もちろん顔も負けてないだろうけどね! わ、私のほうがイケてますよきっと!


「その麻薬の密売に幕府の官僚が一枚からんでいたとの噂がある」


 だって所詮は男ですよ。どんだけきれいな顔してたって限度があるでしょ。
 でもなぁ、隣にベビーフェイスがいるもんなァァァ。性格悪いくせになんで顔だけはいいのかなこの人は。クソ! うらやましい。

 やっぱ土方さんの前に沖田さん殺るべきかなァァァ!


「真選組の出番だ!!」


 おっといけない。いつのまにか話がすすんでるじゃないっすか。真選組の出番ってなんのこと? またテロでも起きたんですかね。










 ○










「オイ起きろコラ。警備中に惰眠をむさぼるたァどーゆー了見だ」

「なんだよ母ちゃん今日は日曜だぜィ。ったくおっちょこちょいなんだからー」

「今日は火曜だ!!」


 隣で寝ていた沖田さんを土方さんが起こしている。
 そうですよ。今日は火曜日です。週が始まったばっかで多くの人が憂鬱になっているだろう火曜日です。そして、私もその例に漏れず憂鬱になっています。てか軽くイライラしてるね、うん。


「総悟てめー、こうしてる間にテロリストが乗り込んできたらどーすんだ? 仕事なめんなよコラ」


 なんかすっごいイライラする。イライライライラ。カルシウム足りてないのかな。牛乳嫌いだからなぁ私。


「俺がいつ仕事なめたってんです?」


 てか、さっきから沖田さんも土方さんもうるさいよ。


「俺がなめてんのは土方さんだけでさァ!」

「よーし!! 勝負だ、剣を抜けェェェェ!!」



 …………イラっ。



「だァァァァァ!! さっきからうるせーんだよテメェらァァァ!」


 そう叫んだ瞬間に、鈍い音といっしょに後頭部にすさまじい痛みが走った。


「「「い゛っ」」」

「仕事中に何遊んでんだァァァ!! お前らは何か!? 修学旅行気分か!? 枕投げかコノヤロー!!」


 そう叫んだ瞬間、さっきの私たちみたいに近藤さんが短いうめき声をあげた。


「お前が一番うるさいわァァァ!! ただでさえ気が立っているというのに」

「あ、スンマセン」


 げっ。声の主を見上げると、近藤さんの後ろに立ってるのはあのガマガエルだった。そのまま睨み付けているとガマと目があった。最悪だ。


「まったく役立たずの猿めが! うるさい上に女など雇いよって」


 むっかァァァァァ!!  なんだあのガマうっぜぇー!! うっぜ! うっぜ! うっぜ!
 私のほう見ながら「女など」って言いやがったよ! しかもなにあの目! あの態度! 明らかに私、いや全宇宙の女のこと見下してるぞあの野郎。
 てかさっきの猿って近藤さんのことか? クソ! 近藤さんは猿なんかじゃなくてゴリラだっつーのに!


「あのガマぜってぇ殺す……!」

「落ち着け遥ちゃん……って本気の目してるし!  駄目だからね!? あれ護衛対象だからね!!」

「それにしてもなんだィありゃ。こっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」

「お前は寝てただろ」

「……殺す殺す殺す殺す殺す」

「オイ遥戻ってこいィィィィィ!!」

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【守りたい約束篇】 ( No.54 )
日時: 2014/08/25 14:31
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

「すんません。ちょっと我を忘れてました」


 あれから近藤さんたちに宥められやっと落ち着いてきた。私の隣には土方さんが座っている。


「お、おお。お前なんかカエルに恨みでもあんのか」

「いやあのガマが気に入らないだけです。カエルは好き」


 土方さんもまだ動揺しているみたいです。いやなんかほんともう、スミマセンデシタ。
 でも、あのガマが気に食わないだけで他のカエルは好きだからね。そう私が弁解すると土方さんに呆れられてしまった。

 私と土方さんが話していると、土方さんの向こうから沖田さんの頭がひょっこり出てきた。近藤さんと話してるみたい。



「近藤さん、幕府の高官だかなんだか知りやせんがなんであんなガマ護らにゃイカンのですか?」


 沖田さんが不服そうな顔をして言う。さっきのガマの態度が気に入らなかったんだね。分かりますよその気持ち。


「そーですよ。あのガマならたくましく生きていけますよ。ちょっと銃弾くらったくらいじゃ死にませんよ」

「いや死ぬだろ」


 ちょっと土方さんうるさい。



「総悟、遥ちゃん」


 土方さんとぎゃんぎゃん言い合っていたら、急に近藤さんに名前を呼ばれた。沖田さんと一瞬目を合わせてから近藤さんのほうへ視線を向ける。



「俺達は幕府に拾われた身だ。幕府がなければ今の俺達はない」


 近藤さんが拳を握りしめ力強く言う。


「恩に報い忠義を尽くすは武士の本懐。真選組の剣は幕府を護るためにある」

「でも……。だってあのガマ、私達のこと馬鹿にしてるじゃないですかぁ」

「おまけに海賊とつるんでたかもしれん奴ですぜ。どうものれねーや。ねェ土方さん?」

「俺はいつもノリノリだよ」


 土方さんそれ真顔で言う台詞じゃないっす。あとアンタがノリノリになるのは銀さんとか桂さんに敵意むき出しのときくらいでしょ。あ、沖田さんも忘れちゃいけないね。



「アレを見なせェ。みんなやる気なくしちまって」


 沖田さんが指差したほうを見るとちょうど山崎さんがミントンをやっているところだった。


「あ、山崎さんミントンやってる。ミントンミントン!」

「ア?」


 私の言葉に土方さんも沖田さんが指差したほうを見た。その瞬間、土方さんの顔が般若のようになった。



「山崎ィィィてめっ何やってんだコノヤロォォ!!」


 土方さんから逃げる山崎さん。きっとすぐに首根っこ捕まえられるぞあいつ。ごしゅーしょー様です。





「総悟よォ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ」


 土方さんたちを見守っていた近藤さんがおもむろに口を開いた。


「目の前で命狙われている奴がいたらいい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだよ」


 近藤さんが得意気に笑う。ドヤって効果音がつきそうだなぁ。
 ……ほんとうにムカつくくらいいい人だな、この人は。



「……私は悪いガマなんか助けたくありません」

「ガハハハ! まあそう拗ねるな」

「うわぁっ!」


 近藤さんに頭をがしがしと撫でられる。
 やってるほうはすごく楽しそうだけど、これやられてる本人はすっげー痛いんだからな! すっげー恥ずかしいんだからな! でもちょっと嬉しいけどな、ふふん!

 ぐしゃぐしゃになった髪の毛を直していると沖田さんに鼻で笑われた。……コノヤロォォォ!


「うらやましいんですかァァ? 私が近藤さんに撫でられたから悔しいんですかァァ?」

「死ねポニーテール」

「そんなにうらやましいなら私が撫でてやるよ! 今の私はすんごく機嫌がいいからな!」

「死ねポニーテール」


 沖田さんの頭に手を伸ばそうとするとがしりと右腕を掴まれた。左手を伸ばすとそっちも掴まれた。


「こんのクソガキィィィ! 大人しく撫でさせろやァァ! ガマのせいで癒しが足りねーんだよォォォ!」

「テメーの頭でも撫でてろよクソポニーテール」


 しばらく沖田さんと攻防戦を繰り広げていると、向こうの廊下の端にガマの姿が見えた。沖田さんもそれに気づいたようで私達は手を掴み合ったままガマのほうを見つめる。

 え、ちょっ、ガマァァァ!! アイツなにうろちょろしてんのォォ!? あれ自分から死にに行ってるようなもんじゃん! 僕を殺してくださいって言ってるようなもんじゃん!

 余計な仕事増やしてんじゃねェよこのクソガマがァァァ!



「あ゛っ!! ちょっと! 勝手に出歩かんでください!!」


 ようやくガマに気づいた近藤さんがガマを追いかけていく。私と沖田さんはそのままの格好で近藤さんの背中を見送った。


「はぁ〜。底無しのお人好しだあの人ァ」


 呆れ半分、感心半分といった様子の沖田さんがため息をついた。
 ほんとにね。何やってるんだろうねあの人は。

 それよりも私の腕を掴む沖田さんの力が緩んでいる。これチャンスじゃない? チャンスだよね?

 はっはっはっ! 私の前で油断するなんて沖田君もまだまだだね!



「すきあり!」


 沖田さんの視線が近藤さんのほうに向いているすしかに、思いっきり沖田さんの頭を触る。
 あ、髪の毛やわらかい。うらやましいなコノヤロー。うっわー犬とか猫撫でてる気分だぁ。ふわっふわしてるよぉ。沖田さんのくせに髪の毛ふわっふわだよぉ。うらやましいなコノヤロー。



 ふと殺気を感じて沖田さんの顔を見ると、土方さんなんて比べ物にならないくらいの般若がそこにいました。





 ………………あ、死亡フラグぇ。