二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.58 )
- 日時: 2014/09/15 21:35
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
「ちょ、まっ! ギブギブギブギブ!」
えっと、沖田さんに首決められてるなう。頭撫でたら沖田さんの逆鱗に触れちゃったみたいです。
てか、ちょっと沖田さん? 真顔で、しかも無言で技決めてくんのやめてください。おっかねぇー。死ぬ。死ぬって! その、鋭い視線に殺されるゥゥゥ!
「沖田さん、死ぬから! 私そろそろ死ぬからァァ!」
「死ねポニーテール」
「アンタ前回からそれしか言ってないよね? まじでギブだって」
「死ねポニーテール」
「テメェが死ねよこのサド野郎!」
相変わらずの強さで技を決めてくる沖田さん。首からギチギチって聞こえるんだけど。なにこれ怖い!
私の首に回された沖田さんの腕をバシバシ叩き、それでもほどかれない腕に噛みついてやろうかと思ったその時。
ドオオォォォン。
最近では聞き慣れた銃声が鼓膜に響く。
咄嗟に音がした方を見ると、近藤さんの体が宙に舞って、肩から赤い、赤い、血が……。
え、血?
「……近藤さん?」
自然と呟かれた私の声に、弾かれたように沖田さんが駆け出す。もちろん沖田さんが向かう先には、廊下に横たわる近藤さんが。
何がなんだか分からぬままその場に立ち尽くしていると、土方さんの指示で犯人を追いに出た山崎さんが私の隣を走る。次第に騒がしくなる周りにようやく、脳が追い付く。
近藤さんが、撃たれた? 誰に?
そんなの決まってるじゃないか、あのガマの命を狙っている攘夷浪士の誰かが撃ったんだ。それで、近藤さんはガマを庇って……。
俯いていた顔をばっと上げ、ガマの姿を探す。アイツは倒れ苦しむ近藤さんから少し離れた場所で、近藤さんとその周りに集まる隊士たちを、ただただ見下ろしていた。
「フン、猿でも盾代わりにはなったようだな」
そう言ったガマの、禽夜の目は笑っていた。
○
あのあと、近藤さんは医務室へ運ばれた。
幸い傷は浅く、命に別状は無かったものの、未だに目を冷ましていないらしい。
今回の件で隊士たちが受けたショックは大きく、みんな近藤さんの周りにへばりついて離れない。
沖田さんなんか、禽夜のあの言葉を聞いた途端に刀に手をかけて土方さんに諌められていた。あと少しでも土方さんの制止が遅れていれば、あのガマは真っ二つになっていたかもしれない。
そして私はというと、ガマの真後ろに立ってるなう。
右手は刀にかけられている。抜くつもりはさらさらないが。ただし、ガマが大人しくしていればの話である。
「禽夜様、」
至極小さな声で名を呼ぶと、ガマはあっさりと振り返る。その眉間には僅かに皺が寄っているのが、暗闇の中でもよく分かった。
「貴様は昼の女か。フン、女などを雇うとは幕府の奴等も何を考えているのだか」
苛立ちを隠そうともしない声で、ガマが忌々しいと続ける。顔は嫌そうに歪んで、まるで私がゴミだとでも言いたげにしている。
けれど、そんなことは気にならない。自然と溢れた笑みは自分でも驚くほど、穏やかだった。
「ハハハ、まあそう怒らないでくださいよ。それと勝手に歩き回らないで。いつまた浪士に狙われるか分からないんですよ」
「うるさい! 何をしようと私の勝手だろうが!」
確かにそうなんだけどねぇ。確かに、このガマが何してようが私には知ったこっちゃない。
けれど、コイツは今真選組の護衛対象である。
それと同時に真選組の仇みたいなもんなんだよなぁ。
鼻を鳴らして去ろうとするガマの首に刀を当てる。とはいっても、この刀は兄からもらったもので、錆びだらけの刃では人の首など到底斬ることはできない。
まあ、傷くらいは付けれるだろうけど。
ひっ、と短く叫んだガマにゆっくりと近づく。
知ってるかガマ、女は一度怒らせるとめんどくさいんだよ。
ガマの耳元、本当にそれが耳なのかは知らないけれどとりあえず耳っぽい場所に届くくらいの声を出す。
その声音は意外と低くて、我ながらびっくりした。
「うるせぇよ。アンタには勝手に殺られちゃ困るんです、ゴチャゴチャ言ってねぇで大人しく守られてろやガマ」
「そうですぜィ。俺らが守ってやるって言ってるんです、ありがたく守られときなァ」
背後から聞こえた声に禽夜と共に振り返ると、そこに居たのは沖田さんだった。
それにしても沖田さん、何故か太く長い丸太を右肩に担ぎ、左肩には円状にまとめられた縄をかけている。正直、何がしたいのかさっぱり分からない。
「遥ァ、そのガマしっかり捕まえときなせェ」
沖田さんは担いでいた丸太を中庭に乱暴に下ろすと、左肩にかけていた縄をしゅるしゅると真顔でほどき始めた。
そして完全に伸ばされたそれを両手に持ち、まるでムチを扱うかのように左右に引っ張る。
スパン、スパンと一定のリズムで縄が音をたてる。
どこのSM嬢ですか? と聞きたくなるような良い笑顔をした沖田さんが、ゆっくりとガマと私に近づいてくる。
「お、沖田さん? 何しようとしてんですかアンタ、え、ちょっ! ヤメロこっち来んなほんと無理ごめんって、いやァァァ!!」
沖田さんがにやーと不敵な笑みを広げたのと同時に、私とガマの悲鳴が廊下中に響いた。
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.59 )
- 日時: 2014/09/15 21:52
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
「うわーすっげぇ綺麗に張り付けられてるぅ、うわー」
私と沖田さんの目の前には、十字に組まれた丸太に張り付けられたガマがいる。
なんでこんなことになったかというと、あのあとすぐに沖田さんはガマの足を蹴りとばし転ばせ、素早く両足を一つにまとめ上げた。さらに、抵抗しようとするガマの両腕を丸太にしっかりと縛り付けた。
ご丁寧にガマの口にガムテープを貼ると、沖田さんは丸太ごとガマを運んでいく。
その後を大人しく着いていってみれば門の前に着いたわけです。どういうわけかど真ん中に、さっきの丸太とは比べ物にならないくらいドデカい丸太がぶっささってました。
あとは皆さんの想像する通りです。
沖田さんが口に貼られたガムテープを乱暴に剥がしてやると、ガマは私たちのことを口汚く罵ってきた。
いや、私たちだけじゃない。真選組のみんなのことを馬鹿にしてきた。
————その中には自分を庇って撃たれた近藤さんに対する言葉もあるわけで。
「……沖田さん、カエルって燃えるゴミですか? それとも燃えないゴミですか?」
「さあ、燃えるんじゃないんですかィ」
「おい、貴様ら何をする気だ」
ガマの言葉を無視して、そこら辺から適当に拾ってきた薪をガマの足元に組み、ライターで火をつける。
パチパチと音をたてて燃え始める、細い枝たち。この様子なら薪に火が燃え移るのもすぐだろう。
「「燃〜えろよ燃えろ〜よカエルよ燃〜えろ〜」」
薪をくべながら沖田さんとキャンプファイヤー気分を味わっていると、煙草をくわえた土方さんが歩いているのが見えた。
「あ、土方さーん。こっちおいでよぅ」
私の声に足を止めた土方さんは、ゆっくりとこちらを振り向くと一瞬固まった。
かと思えば、土方さんは口をあんぐりと開けくわえていた煙草をポロリと落とした。
「何してんのォォォォォ!! お前ら!!」
「大丈夫大丈夫。死んでませんぜ」
すごい形相で叫ぶ土方さんに、沖田さんがへらへらと笑う。
「要は護ればいいんでしょ?」 続けて口を開く沖田さん。
「こうしとけば敵をおびき出せますし、パパッと一掃できますよ。パパッと」 私も沖田さんに続いて口を開く。
「まあ」
「「攻めの護りでさァ」」
「お前ら何でそんな息ピッタリなの!? 何なの打ち合わせでもしたの!?」
息ピッタリ? そんなつもりはないんですけど……。
隣でしゃがんでいる沖田さんと顔を見合わせ、二人で首を傾げて見せると土方さんは溜め息をついてしまった。
それでもへらへらとした笑みを浮かべる私たちに声を荒らげたのはガマだ。
「貴様らァ! 幕府の犬の分際で、こんなことしてタダですむと……もぺ!!」
「うるさいよ、ガマガエルの分際で」
ごちゃごちゃとうるさいガマの口に薪を突っ込む。ついでに喉の奥にぐりぐりと押し込んでやった。
ガムテープを剥がしてから、どうもうるさかったから黙ってもらえてとってもうれしい。
私が薪から手を離すと、今度は沖田さんがガマの口に薪を入れ始めた。
目の前の哀れなガマを真っ直ぐ見据え、私は再び口を開く。
「それと、何を勘違いしてるか知らないけど私たちは幕府の犬なんかじゃないですよ」
薪を突っ込まれ、喋ることができないガマににっこりと微笑んでやる。いい気味だ、このまま燻製になっちまえばいいのに。
「真選組は、幕府の“お犬さま”です。お前らが雇ってるんじゃない、私たちが雇われてやってるんだ。お前らを護るんじゃない、私たちは近藤さんがいる真選組を護るんだ」
言い聞かせるようにゆっくりと言ってやる。分かりましたか? と念を押してやれば、ガマはひたすら私を睨み付けてきた。
土方さんと沖田さんはというと、驚いた様子で私を見ている。特に土方さんの目が真ん丸になっていて、眺めていてとても面白かった。
沖田さんは一瞬だけ驚いたものの、再びガマの口に薪を突っ込み始め、そのままの姿で静かに土方さんの名前を呼んだ。
「……早い話、俺が真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねぇ。でもあの人ァ人が良すぎらァ」
沖田さんがふっと笑みを浮かべる。
「俺や土方さん、遥みてーな性悪がいて、それで丁度いいんですよ真選組は」
まあでも、遥は性悪すぎですけどねぇ。沖田さんが付け加えた言葉にむっとしながらも、私はそれを黙って聞いていた。
なんというか、何だかんだいってこの人たち近藤さんのこと大好きだよね。
私と同じように黙っていた土方さんが、おもむろに鼻を鳴らす。
「あー、なんだか今夜は冷えこむな……。総悟、遥。薪をもっと焚け」
「「はいよっ!!」」
ガマの呻き声が聞こえた気がしたが、そんなことは気にせずに二人してせっせと薪をくべる。
そのとき、チュインと甲高い音がした。
地面に転がる銃弾、ガマの口の中にある穴の開いた薪。極めつけに大量の攘夷浪士たちのご来場である。
天誅と叫びながら門へと進んでくる浪士たちを確認し、私は刀に手をかけた。土方さんと沖田さんも、それぞれ刀を構える。
「おいでなすった」
「天誅ですって。私たちやられちゃうかもしれませんよ、お二人さん」
「馬鹿野郎、やられんのはアイツ等のほうだ」
「ですよねー」
「それより遥、アイツ等俺らのこと幕府の犬って言いやしたぜ。いいんですかィ、放っといて」
「もちろん、ぶっ潰しますよ。徹底的に!」
私が声高々にそう宣言すると、土方さんに鼻で笑われた。沖田さんもちょっと私のこと馬鹿にしたような笑顔浮かべてるし。ほんとお前ら何なんだ。
「……まあ、派手にいくとしよーや」
「「はいよっ!!」」
私は後衛に回って二人のサポートをするか。そう考えながら刀を抜いたとき、背後から威勢の良い声が聞こえた。
「まったく、喧嘩っ早い奴等よ」
その声に弾かれるように振り向けば、後ろには黒くて大きな壁が見える。
壁、もとい黒の制服を着た隊士たちの先頭には、着流し姿の近藤さんが刀を構えて立っていた。
肩から胸にかけて巻かれた包帯は痛々しさを感じさせず、そこにはいつもの近藤さんが、真選組局長の姿がある。
「三人に遅れをとるな!! バカガエルを護れェェェェ!!」
近藤さんの指揮で一斉に駆け出す隊士たち。あっという間に私の周りにはみんなが来ていた。
もちろん、その先頭を走るのはあの近藤さん馬鹿の二人だ。
「いくぞォォォ!!」
「よっしゃァァァァ!!」
真選組一番隊女隊士、掛井遥。いざ参る!