二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.60 )
- 日時: 2014/09/20 22:58
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
「オイ遥、起きてるか」
起きてません。まだ私は夢の国なうです。そしてこの声もきっと夢です。
まだ寝れる、うん。今日は休みだしいつもみたいに起こされることはない。うん、大丈夫。
まだ寝れる。
と自分に暗示をかけていると、誰かに肩をゆさゆさと揺すられる。最初は軽くだったそれは、だんだん大きくなって最終的にすごく乱暴になった。夢にしてはリアルだ。てか、肩痛いんですけど!
ちょっと、今日は休みだよ。なに、何なの。何しに来たの。
「オイコラ、起きやがれ」
「っ! もうちょっと寝かせてよ、兄さん!」
いきなりめくられた布団を咄嗟に奪う。そのままの勢いでガバリと起き上がり兄さんを睨み付けると、
「今日はや、すみ……」
あれ、なんで兄さんそんな黒いの?
服もそうだけど、頭も黒い。それに瞳孔開いてるし……。
ん?
「——なんだ夢か、二度寝しよ」
「夢じゃねーよ。……紛れもない現実だよ」
「やめてェェェ! お願いだから現実逃避させて!! 恥ずか死ぬからァァァァ!!」
第十三訓【酔ってなくても酔ったふりして上司の息の根止めろ】
……掛井遥、最凶の黒歴史だ。
土方さんのこと兄さんって呼んでしまった。土方さんもそんな生暖かい目で見ないでください。いつもみたいに怒ってくれた方がマシだったよ。
「……で、なんで私は起こされたんですか」
「ん? あ、ああ」
てか何ちょっと動揺してんだよ、土方さんよぉ。
……それにしても今日は良い天気だなぁ。現実逃避にもってこいの天気だ。気温もだいぶ高くなって、中庭の桜もちょこちょこ咲いてきたし。そういえば公園の桜も結構咲いてたなぁ。
「花見に行くぞ。さっさと準備しろ」
「へ? 花見?」
土方さんはそうだ、花見だ、と一度だけ頷き、部屋を後にしようとする。出る直前に、さっきのは忘れといてやるから、と話をぶり返してきたので後で息の根を止めようと思う。
○
さて、今日の私の着物はいつもの赤地に金の刺繍が入ったものではなく、萌木色の大人しいものだ。
桜が主役なのに真っ赤な着物着ていったら悪目立ちしちゃうからね。
桜色の着物もあるにはあるんだけど、なんだか他の花見客たちもここぞとばかりに着てきそうだったので却下。変に目立つのも嫌だが他と被るのもナンセンスだ。
よって、悪目立ちすることも他と被ることもないだろう萌木色の着物を選んだのだ。この色だったら桜にも映えるしね。なかなか良いチョイスなんじゃない、これ。
髪の毛もちゃーんとお団子に結ってきたんだよ! シニヨン風に決めてみたんだよ! いつものポニーテールじゃないんだよ!
てか私、勤務中以外は髪下ろしてるのにどうしてこんなにポニーテールが定着しているんだろうか。
ちょっと不服。
「でも、みなさんも花見とかするんですねぇ。ちょっと意外」
「みんな、毎年この時期になると花見したがるんだよ。真っ昼間から酒飲む口実ができるからな」
そう新入りの私に教えてくれるのは原田さんだ。
初めはその厳つい容姿にやたらとビビったりもしたけれど、中身はただの気さくな優しいおっさんだと気づいてからはとても仲良くさせてもらっている。隊は違うけど尊敬してるし、頼もしいなぁとも思う。
そして私は親しみをこめて原田さんのことを、密かに心の中で原ちゃんと呼んでいる。
「へえ。じゃあ花より団子なんですね」
「まあ、そういうことだな」
言われてみれば、みなさんいつもよりテンション高めかも? これ、お酒飲めるからだったんだ。
確かに沖田さんが酒瓶抱えてホクホクしている。ずいぶんと幸せそうだし、これはすごく珍しい反応だ。もうすごい浮かれまくってるじゃないですか。
もちろん、沖田さん以外のみんなの浮かれようも尋常じゃない。
でもこんなにお酒を飲むのを待ち望んでいても、みんな勝手に飲み始めたりはしない辺りさすがというか、待てを命じられてる飼い犬みたいというか………。
幕府のお犬さまっていうのもあながち間違いじゃないよね、これ。
「そういえば場所取りしなくてよかったんですかねぇ。この混みようじゃ、宴会する場所なんてないんじゃ……」
公園内に足を踏み入れると、そこは花見客でごった返していた。ちょっとしたお祭りみたいだ。
こりゃ、今年の花見は立ち見かなぁ。
「それなら、山崎が場所取ってるだろ。真選組には毎年ここと決まった場所があってな、ほらあそこ」
だから山崎さん朝から居なかったのか。なるほど。原田さんに言われるまで全然気づかなかったけど。なんかいつもと違うなぁとは思っていたけれど。
てか、真選組御用達の桜ってどんなのなんだろう……。すっごい気になる。
期待に胸を弾ませて原田さんが指差す方向を見てみれば、一本の大きな木があって、それで……。
「あの、あそこに居る団体は山崎さんですか」
「……違うな」
「ですよねぇ」
見る限り、万事屋のみなさんたちにしか見えないんですが。
なんか綺麗なお姉さんとでかくてキュートなわんこもいるけど、どう見ても万事屋メンバーだよね、あれ。
ふと感じた殺気に目の前を見ると、列の先頭に立っていた土方さんが万事屋メンバーを見ながら、黒いオーラを滲ませているところでした。
————こ、これは……とんでもない花見になりそうだなぁ。