二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.62 )
日時: 2014/10/28 07:34
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

「オイ遥、あいつら今すぐ退けてこい」


 うむ。やはり土方さんはご立腹のご様子。
 だからと言って、休みの日まで土方さんにわがままを聞くのはやだなぁ。てか自分で行けよ。


「えー? 自分で行けばいいじゃないですかぁ」

「そうですよ。ほら、土方さん逝ってきなせぇ」


 ぶーぶー文句を言う私と、いつも通りの態度をとる沖田さん。そんな私たちには構わず、土方さんはしばらく黙って万事屋メンバーを眺めていたけれど急にこちらを振り向いて、


「いいからとっとと行け」

「……あい」


 久しぶりにマジな目をした土方さんを見た。これは行かないと強制的に逝かされるやつですね、分かります分かります。
 あー、めんどくせェェェ!!










 ○










「えっと、あの、銀さん?」

「ん? 誰だお前」


 万事屋の皆さんを真選組(主に土方さん)から避難させるために声をかけたら、銀さんにすごい変な顔されました。
 うん、予想はしてたけどね! 予想はしてたけどマジでこの人バカなの? バカなんでしょ、ねぇ!!


「遥だよ! アンタが日頃ポニーテールって呼んでる、真選組のイノセントガールこと真選組一番隊所属掛井遥だよ!」

「あー! お前、ポニーテールか」


 通りで見たことあると思ったと言いながら、一人で頷く銀さん。この人は私のことをポニーテールとしか認識してないらしい。
 てか反応薄いな、殴るぞオイ。

 そんなダメな雇い主と違って新八くんと神楽ちゃんは私のことをちゃんと覚えてくれているらしく、顔見た瞬間に挨拶してくれたけどね!

 それよりも、


「初めまして、ですよね? 私、掛井遥って言います」


 さっきから気になっていたこの美人さんはどなた? すっごいおしとやかに座ってるけど、万事屋とどんな関係が……ハッ!

 まさか、この人が銀さんの裏で万事屋を牛耳ってるとか! 女番長とかかっけーなオイ!


「あら、貴方が遥さん? 私は新八の姉の志村妙です。いつも新ちゃんがお世話になってます」


 と、たくましい妄想を繰り広げていた私に美人さん改めお妙さんが自己紹介をしてくれる。どうやらこの人は万事屋を影で操る女番長ではなく、新八くんのお姉さんだったようだ。

 小さく微笑みながら会釈する姿はずいぶんと大人びて見えるけど、新八くんの話によるとお妙さんは私と同い年らしい。
 でもほんとにこの人18歳なの? なんか素敵なお姉さんって感じで全然実感わかないんだけど。
 まあさっきの妄想のせいで、お姉さんってか姐さんって感じだけども。

 あ、でも胸元は私と同じくらい慎ましいっていうか、むしろ私より小さいんじゃ……。


「————何かおっしゃったかしら?」

「な、なんにも言ってませんよ? あははははは」


 今、一瞬お妙さんが般若に見えました。

 お妙さんはあら? と小首をかしげて不思議そうな顔をした。とりあえず誤魔化せたみたいでよかった。
 と思いきや、急に怪しく黒光りする重箱を取り出すお妙さん。え、これで私の頭ぶっ叩くとか? やめてよ、ちょっと。


「ああそうだ! 遥さん卵焼きはお好きですか? もしよかったらこれ、食べてくださいな」


 お口に合えばいいんだけど、と不安そうに差し出された重箱を受けとるまでは良かったが、中身を見たとたん私は思わず固まってしまった。


「……えっと、これはアートですか?」

「いいえ? 卵焼きですよ」

「で、ですよねーあはは、はは」


 ははは、なんだこれ。わ、笑えねーよオイィィィィ!

 何これほんとに卵焼き? “卵焼き”つか“焼けた卵”でしょ? 正直“焼けた卵”でもないからね? ただの“かわいそうな卵”にしか見えないからねェ!?

 これ食べなきゃだめ!? てか食べれるの? お口に合う云々の前に私の体に合うの? 私のお腹と喧嘩しない? 大丈夫なのか!?
 しかし、人から出されたものを食べないというのは失礼にあたるよね。いくら見た目が可哀想だからって卵とお妙さんに罪はない!

 ……でもやっぱ、これ食べるのは勇気がいるよなァァァ!!


「どうなさったんですか、遥さん」


 嗚呼、お妙さんが、心配そうに私を見上げている……! お願いだからやめてよぉ! そんな目で私を見ないでよぉ!

 仕方ない、もとは卵なんだ。卵焼きだろうと焼けた卵だろうとかわいそうな卵だろうと、みんなもとを辿れば卵なんだ。だから大丈夫、私は食べれる!

 覚悟を決め、お妙さんからもらった卵焼きを口の中へと放り込む。その瞬間、口内を鈍器で殴られたような衝撃に襲われた。



 ————まずいとかの次元じゃなかった……! もはやこれは武器だよ武器ィ!!

 う゛う゛、今すぐこれを吐き出したい……。


「どうかしら? 私の卵焼きのお味は」

「お、いじいでず。グス、う゛う゛」


 にこにこと笑うお妙さんに本当のことなんて言えるはずもなく、私は泣きながら卵焼きを咀嚼し続けた。そんな私に新八くんが水をくれる。

 その水で卵焼きを一気に喉へ流し込んだあと咳をしていたとき、私の手の上にあった重箱が誰かによってとられた。


「ガハハハ! 全くしょーがない奴等だな。どれ、俺が食べてやろう」

「え、ちょっとアンタ何して、」

「何レギュラーみたいな顔して座ってんだゴリラァァ!!」

「たぱァ!!」

「えェェェ!? 近藤さ、え? えェェェ!?」


 突然現れた近藤さんに、近藤さんの頬をグーで殴るお妙さん。そんな二人にえ、としか言えない私。
 そして私たちの方、というか近藤さんとお妙さんを見てこそこそと小声で話す銀さんと新八くん。

 ストーカーがどうのとか、警察がどうのとか聞こえるけど何のことだ?

 …………嗚呼、思い出した。
 そういえば銀さんと知り合う前に近藤さんがある女の人をストーカーしてて、その人をかけて戦ったのはいいけど銀さんに卑怯な手を使われた近藤さんが負けて、それに怒った土方さんが銀さんを斬りに行ったけど結局返り討ちにあった事件があったなぁ。

 じゃあ、お妙さんがそのときのストーカーの被害者ってこと?

 よ、


「よかったァァァ! 近藤さんのことだからてっきりメスゴリラでもストーカーしてるのかと思ってたけど、ちゃんと人間のメス、しかも美人さんを求愛対象に選んでたんですね!」

「いや、こいつはメスゴリラみてーなもんだよ」


 そう呟いた銀さんももれなく近藤さんと同じ運命を辿りました。


「てかまだストーカー被害にあってたのか。町奉行に相談した方がいいって」

「いや、あの人が警察らしーんスよ」

「世も末だな」

「悪かったな」


 相変わらずこそこそと話し続ける銀さんと新八くんの後ろから話に割り込んできたのは、


「げ、土方さん……」