二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.8 )
日時: 2014/08/07 19:53
名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)

 攘夷とは、二十年前の天人襲来の時に起きた、外来人を排そうとする思想である。
 高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を感じた侍は、彼らを江戸から追い払おうと一斉蜂起して戦った。


 しかし、天人の強大な力を見て弱腰になっていた政府は、天人との不平等な条約を締結。天人の台頭と廃刀令により、主だった攘夷志士は大量粛清された。



 そして、未だに残る攘夷志士を即時処分する対テロ用特殊部隊こそ、武装警察「真選組」である。










 第七訓【お前らテロなんてやって幕府の犬に噛みつかれても俺は知らねぇからな】










 バン!!!



「御用改めである! 神妙にしろテロリストども!!!」



 土方さんによって蹴破られる襖。テロリストを取り囲むように、散らばる隊士たち。
 緊迫した空気の中、私は土方さんの後ろからテロリストを覗き見ていた。


 何故なら、これが初任務である私は、最前線に立つことを禁じられているから。




 というのは建前で、土方さんの本音は「女の私に用はない」というところだろう。




「どいつもこいつも、人のこと除け者にしやがって…」

「なんか言いやしたかポニーテール」

「べっつにィー?」







「一人残らず討ちとれェェ!!」



 土方さんの指揮でテロリストへと食らいつく隊士たち。そのあとを、少し遅れて追いかける。

 意外にも、テロリストたちの逃げ足は速く、普段から訓練をしているはずの隊士たちも苦戦しているようだ。




「オイ」




 ズガン、と何かが突き刺さるような音が聞こえる。
 音がした方を見れば、土方さんがテロリストの一人に刀を向けていた。




「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ、楽しもうや」

「オイオイおめーホントに役人か」




 何なの!? ウチの副長超怖いんですけど!
 これじゃ、そこら辺のチンピラと変わんねーぞオイィーー!!




「よく面接通ったな。瞳孔が開いてんぞ」

「人のこと言えた義理かてめー! 死んだ魚のよーな瞳ェしやがって!!」

「いいんだよ、いざという時はキラめくから」

「ちょっとォォー! 何やってんのアンタら!? 仲良しなの? 漫才でもしてんの!?」



 敵だよねこの人たち!? なんか真選組副長とテロリストの会話とは思えないくらい息ピッタリだよ!?



 アァーー!! と頭を抱えていたら、沖田さんが「どきなせィ」と言いながら私の前に出てきた。
 その肩に担がれているのはバズーカ。



「土方さん危ないですぜ」



 いやいやいや。まさかとは思うけどコイツ……!!




 ドゴンッ!!!




「やっぱりかァァーー!!」



「生きてやすか土方さん」

「バカヤローおっ死ぬところだったぜ!」

「チッしくじったか」

「なんてことしてんのアンタ!? 狙うならちゃんと狙って!」

「しくじったって何だ!! 遥てめーも何さらっと言っちゃってんの!? こっち見ろオイ!!」










 〇










「副長ここです」



「テロリストも、土方さんも、残念ながら無事でした」

「オイ、心の声だだ漏れだぞ」

「てへぺろっ」





 テロリストが逃げた先には、タンスやら段ボールやらが積み重ねられていて、容易に侵入することはできない。



「遥、てめー隙間から上手く入れねーんですかィ」

「いや、いくら私が細いからってこれは無理」

「俺が引き伸ばしてやりまさァ」

「ンなことしたら殺しますよ」



「オイッ出てきやがれ!」

「無駄な抵抗は止めな!」

「ここは十五階だ!? 逃げ場なんてどこにもないんだよ!」



 次々とバズーカを構える隊士たち。
 私たちの説得にも、テロリストたちが出てくる様子は全くない。


 そろそろ帰りたいのになー。



「オーイ出てこーい」

「マジで撃っちゃうぞー」

「土方さん、夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」

「あ、あれ面白いですよね」

「やべェ。ビデオ予約すんの忘れてた」

「えー。だから、毎週予約しとけって言ったじゃないですかー」

「よし、さっさと済まそう。発射用意!!」





 その瞬間、目の前の襖からテロリストたちが飛び出してくる。何人かの隊士を襖の下敷きにして、こちらへ猛ダッシュしてくる三人。

 不意を突かれて動けずにいる隊士たちに、土方さんの激が飛ぶ。





「とっ…止めろって言ったって!!」

「止めるならこの爆弾止めてくれェ!! 爆弾処理班とかさ…なんかいるだろオイ!!」

「おわァァァ! 爆弾もってんぞコイツ!!」

「ぎぃやァァァーー!! こっち来んなばかァーー!!」

「ちょっ待てオイぃぃぃ!!」





 ガラスが割れる音と、誰のものとも分からぬ奇声が聞こえ、咄嗟に伏せる。
 爆音がビル中に響き、煙が割れた窓から入りこんでくる。





「わ、私生きてる……!?」





 自分の無事を確認してから、土方さんたちの元へ駆け寄る。
 隊士の視線の先には、もくもくとした煙が浮かんでいる。

 そして、足元に目をやれば、垂れ幕に必死にしがみつくテロリストもとい、銀髪の侍が見えた。





「もしかして、あの人被害がでないようにあんなこと……」



 思わず、笑ってしまう。なんて馬鹿な人なんだろう。


「……面白いなぁ」