二次創作小説(紙ほか)

Re: 【カゲプロ】目を止めた双子の話 ( No.2 )
日時: 2014/04/14 16:16
名前: 木蓮 (ID: 1SUNyTaV)


<1> 目を疑う咄

その日は、今日だった。

8月15日、私の誕生日だ。

それはもちろん、私だけじゃない。
今、隣で照れ笑いしている『陽菜子』もである。

陽菜子と私は双子であり、どんなときでも一緒にいた一番の理解者同士だ。

「ねぇ、どこ行くんだっけ?」

「はぁ!?コンビニだって今言ったじゃん!」

陽菜子は首をかしげた。

「ああ!そうだっけ」

私と陽菜子はまるっきり性格が違っていた。
私は(自分で言うのもなんだが)頭は良い方で、クラスの委員長を務めていたりもする。
それに対し陽菜子は成績は下の方で、いつもオロオロしているせいか相手にされていない。

ただ、そんなことを本人は察していないのか、特に変わった様子がみられなかった。

「ねぇ、どこ行くんだっけ?」

何回目だろうか、そろそろ答えるのも疲れてきた。

「聞いてる?…奈菜美」

「……うるさい。黙ってついてくればいいでしょ」

「………はい…」

これもいつものパターンだ。
苛立つ気力もなくなったらこういうと私の中で決めている。

でないときりがないのであるこの会話は、特に。

「はい、これ。なくすなよ」

私は陽菜子に小さなメモを渡す。

「なぁに?これ」

「買うものだよ」

陽菜子はジーっとメモを見つめた。

「卵、牛乳、バター、メープルシロップ…何作るの?」

「当てたら教えてあげる」

当てたら教える必要ないんじゃ…?
とか思う人もいるだろう。
けれど、陽菜子はその意味を理解していないようで、何に使うのかをじっくりと考えていた。

いつもこう静かだと良いんだけどな…。私はクスリと笑った。
と、突如、人間まで飛ばされてしまうのではないかと思う位の強い風が吹いた。

「うわっ!風つよ…」

「ああああぁぁぁ!!メモがぁ!」

陽菜子は左右の確認もせず、メモの飛ばされていった方向へ駆け出した。

「ちょっと!危ないってば」

私も遅れて陽菜子の後についていく。が、当人は道路の真ん中で立ち止まり、しゃがむとパアァァと嬉しそうな顔をした。

「あった!遠くに飛ばされなくてよかった〜」

「ああ、そう。よかったね”お姉ちゃん”」

「奈菜美冷たい…」

こんなのが姉だなんて信じたくもない。むしろ、自分の娘のようである。
私は呆れたようにため息を吐いた。

……どうしてこの時、気が付かなかったのだろうか。
すぐそこに、居眠り運転をしていたトラックが存在していたことを……。