二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【薄桜鬼】 夢幻泡沫 ( No.6 )
- 日時: 2014/08/06 15:32
- 名前: 瑠々 ◆sZgkRcXqJk (ID: fIG41VUw)
第三話 友との別れ
翌朝、楓は昨夜目覚めたときと同じ部屋で近藤と土方、そして総長の山南敬助と向かい合っていた。
昨夜いた他の幹部はその場にいない——のではなく、部屋にいないだけで何故か廊下にいる。
まず三人が楓に質問したことは、楓の身分、そして上洛した理由と男装している理由だった。上洛した理由を訊ねてきたのは楓が久留米藩出身、つまり西国の生まれだからだろう。長州や肥後に近いことから、尊王攘夷派の人間ではないかと思ったのだろう。
「…で、お前は昨夜、自分を襲ってきた浪人を斬ったんだな?」
土方の確認するような問いに、楓はコクリと頷く。
その後暫く近藤等は黙り込んで、何か考えていたが、山南が口を開いた。
「君は、新選組の隊士として働きませんか?」
「——はっ!?」
山南の台詞に、先程まで落ち着いた様子で質問に答えていた楓が驚きのあまり声を上げる。
しかし近藤、土方は山南の言葉に驚いていない。昨夜解散した後に三人だけで話して決めたことなのだろうが、しかし何故隊士なのだろうか。
「君のその腕なら隊士として、十分に活躍できると思いますよ」
「でも、新選組は女人禁制のはずですよね?確かに私は男として育てられてきましたが、一応性別は…」
そこまで言って、楓は口を閉じた。
彼らは今、性別に関しては一切気にしていない。彼らは楓には「その腕なら大丈夫だから、隊士として働いてみないか」と聞いているが、その真意は恐らく、「女だか腕はいいようだから隊士として新選組に置いて、監視しよう」という事だろう。
(つまり、これを断れば私は確実に殺される)
楓が土方をチラリと見ると、土方と目があった。
土方の目は「生きるか死ぬか、選ばせてやる」と言っているように見える。
(私が隊士になったら、二度と桂さんや晋作とは会えない)
楓は昔色々あって、長州の桂小五郎と面識があった。
そして脱藩し、上洛している途中、挨拶がてら桂の家へ立ち寄った際、彼と同じ松下村塾出身の高杉晋作と出会い、仲良くなった。
萩を立つ際、彼が結成した奇兵隊に勧誘されたが、「次に会った時までに考えておく」と言って、別れた。
楓には尊王や佐幕といった思想はない。
だがここで断れば死に、了承すれば彼らと敵同士になる。
暫く考えた後、楓は決心した目で近藤を見て、
「よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。
近藤はにこやかに、「うむ。これからよろしく頼む」と言っているが楓の耳には入っていない。
(ごめんなさい、桂さん、晋作。でも、いつか必ず…)
頭を下げている楓を、土方は黙って見ていた。