二次創作小説(紙ほか)

プロローグ とある思考 ( No.1 )
日時: 2014/04/14 00:19
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「——ここは……?」
 仄かな光が散りばめられた闇の中に、一つの存在が浮かぶ。
 それは生命体と呼べる程度の自律した思考を持ってはいたが、しかし肉体という面で見ると、酷く不安定だった。
 それは、気が遠くなるほど長い時間をかけて、元いた世界から違う世界へと渡って来たため、肉体というものは移動の妨げにしかならなかったからだ。しかしこうして、別の世界へと存在している以上、いつかは肉体も必要になるかもしれないと思考する。
「……微かだが、クリーチャーの気配を感じる。この世界にはクリーチャーが存在しているのか……? だとしたら、相当ラッキーだ」
 空気は振動しない。この声にも似た感覚は、あくまでその存在が自ら行っている思考に過ぎない。ゆえにこの一場面は、とある生命体によるとある思考の一部である。
「しかし妙だ。微かであるとはいえ、クリーチャーの気配があるのに、マナはまったく感じられない……いや、本当に微かだが、マナも感じる。しかし弱い……この程度のマナでは、クリーチャーなんて存在できないだろうに……不思議な世界だな」
 この世界の者からすれば、その存在こそが不思議なのだが、しかしそんな見る面の違いを示したところで意味はない。
「詮索は後回しだ。とにかく今は、目的を遂げなければいけない」
 そのために自分はこの未知なる世界へとやって来たのだ。遥かなる時を経て、この世界に。

「神話の神々が残した星を救う勇者を探さないと——」