二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 4話「無法の町」 ( No.103 )
日時: 2014/05/25 04:18
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「《一掃する炎上 デロリアン》召喚! 《ギーガ》と《レールガン》そしてスピードアタッカーの《デロリアン》でシールドをブレイク!」
「っ……ちょっと、やばいかな……」
 一騎と門番のデュエルは、一騎が少し押されていた。
「相手は四枚で、こっちは残りシールドは二枚。きつい状だけど、ここであれを引ければ……」
 来い! と力強く念じながら、カードを引く一騎。そして、
「……来たよ。《トップギア》でコストを下げて《龍覇 グレンモルト》を召喚!」
 狙い澄ましたように、切り札を呼ぶドラグナーを引き当てた。
「《グレンモルト》の能力で、コスト4以下のドラグハートを呼び出す。《銀河剣 プロトハート》を装備! そして《ファルコン・ボンバー》で攻撃する時、《グレンモルト》をスピードアタッカーに! シールドをブレイク! さらに《グレンモルト》で《レールガン》を攻撃!」
「ちぃ!」
「各ターン初めてタップした時《プロトハート》の効果でこれを装備した《グレンモルト》をアンタップ。さらに俺の火のクリーチャーがバトルに勝ったから《猛トラック》の能力で一枚ドロー。次は《デロリアン》を攻撃!」
 《グレンモルト》と《プロトハート》による連続攻撃で、門番の場は全滅してしまう。
「《猛トラック》でシールドブレイク!」
「調子に乗るな! S・トリガー《ミラクル・バーストショット》! 相手のパワー3000以下をすべて破壊!」
「でも《グレンモルト》はこのターン二度攻撃したよ。ターン終了時、龍解条件クリアで龍解する」
 このターンの終わり、《グレンモルト》の装備する《プロトハート》の秘める龍の力が、解放される。

「宇宙の星々、熱き血潮を漲らせ、銀河の鼓動を解放せよ。龍解——《星龍解 ガイギンガ・ソウル》!」

 《プロトハート》が龍解し、秘めたる龍——《ガイギンガ・ソウル》が顕現する。
「くそっ、まだだ! 《超電磁砲台 ゲンツキ》を二体召喚!」
「俺のターン。《爆裂B—BOY》を召喚、そしてそのまま《涙の終撃オニナグリ》に進化! 《オニナグリ》で攻撃する時、相手のクリーチャーをコスト合計が6以下になるように破壊するよ! 《ゲンツキ》二体を破壊!」
「ふはははは! バカめ! 《ゲンツキ》がシールド・ゴー持ちのクリーチャーだ! 破壊されたシールドになるんだよ! これで生き残るぜ!」
「それはどうかな? 《オニナグリ》でWブレイク! さらに《ガイギンガ・ソウル》でもWブレイク!」
 これで門番のシールドはゼロで、一騎の場にアタックできるクリーチャーもいない——ように思われるが、
「《ガイギンガ・ソウル》は各ターン初めてタップした時、アンタップする。つまりもう一度攻撃できるよ」
「なんだと!?」
「そういうわけだから《ガイギンガ・ソウル》でダイレクトアタック!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
 断末魔の叫びと共に、やられたクリーチャーが倒れる。同時に、神話空間も閉じた。
「ふぅ……終わった。ミシェルたちを追いかけなきゃ」
「……一騎! 周り!」
「え?」
 テインに促されて周囲を確認する。そこには、数多のアウトレイジクリーチャー。
「……やば」



「一騎の奴、大丈夫か……?」
「大丈夫っすよ! 部長を信じるっす!」
「いや、あいつ結構抜けてるところあるから、デュエルが終わった後に気付けば取り囲まれてた、みたいなことにならなきゃいいだが……」
 屋敷の中を走る三人。いい具合に一騎が囮になっているようで、思ったよりも屋敷の中にクリーチャーはいない。隠れたり回り道をして、クリーチャーと遭遇しないようにしながら奥を目指す。
 そして、今まで潜って来た扉の中でも、最も豪奢な扉の前まで辿り着く。
「……どう見てもここだよな」
「っすね」
 見るからにボスがいますよ、と言うような扉。ミシェルと八は、その扉を勢いよく横に引く。
 そして、部屋の中へと突入した。
「あ……ジャッキーさん! 奴らです! 奴らが侵入者です!」
「もうこんなところまで来ていたとは……!」
 中にいたのは、数名のアウトレイジ。ほとんどは見るからに下っ端の雰囲気を醸し出しているが、部屋の奥、その中央に坐する巨体のアウトレイジは、見るからにヘッドのような空気を発していた。
「騒ぐな、てめーら」
 ミシェルたちの登場でざわつくアウトレイジたちを、そのクリーチャーはたった一声で黙らせる。やはりこのクリーチャーが、ここの頭のようだ。
「お前たちが侵入者っつーのは、まあ見りゃ分かる。俺はジャッキー、自分で言うのもなんだが、この町の頂点に立つ男だ」
 クリーチャー——ジャッキーは、まっすぐにミシェルたちを見て名乗りを上げる。
「最初はこの俺が喧嘩吹っかけられたと聞いた時は、随分と俺を舐めてる野郎がいるもんだと思ったが……お前ら、本当に喧嘩しに来たのか?」
(……見抜いてる)
 心中でミシェルが呟く。このジャッキーというアウトレイジ、なかなか侮れない。
 だがこちらが戦いに来たわけではないということが伝わるのなら、むしろ好都合だ。
「そうなんですよ、僕たちは喧嘩をしに来たわけじゃないんですよ。門番の人がなかなか通してくれなかったので、ちょっと強引になっちゃったんですけど」
「リュン、あんた……下手に出るの上手いな」
「実は僕らは、とあるクリーチャーを探していまして……アリスって言うんですけど、ご存知ないですか?」
「アリスだぁ? 随分と懐かしい名前を引っ張って来たな——」
「ジャッキーさん!」
 と、その時。
 ミシェルたちが入って来た場所とは違う面の扉が開き、何人かのアウトレイジがやって来る。
「入口で暴れてた曲者を捕まえました!」
「っ、一騎!」
「あ、ミシェル、夢谷君、リュンさん……ごめん、捕まった……」
 アウトレイジに両腕を押さえられた一騎と、身体を完全に固定されて動けないでいるテイン。
「ジャッキーさん、こいつらどうしますか? 裏で消すか、公開処刑か、サンドバックか——」
「ちょっと黙ってろ。俺は今こいつらと話してんだ」
「っ……は、はいっ!」
「で、アリスだったか……まあその名前は知ってるぜ」
 ジャッキーは一騎を取り押さえているクリーチャーを黙らせると、再びミシェルたちの方へ向く。
「だが、あいつはあんまり外に情報を漏らしていいような奴じゃねえし、お前らに協力的なのは俺の面子に関わる。俺はこの程度のトラブルなんざ無視してもいいんだが、他の連中はそうはいかねえ。お前らをタダで返すわけにゃ行かねえんだ」
 つまり、ジャッキー個人としてはミシェルたちのことなどどうでもよく、このまま返してもいいくらいだが、他のアウトレイジからすればそうではない。なのでそのボスたるジャッキーも、面子と沽券のために表向きにはそれなりの対応をしなくてはならない、ということだろう。
「そこで、てっとり早く済ませようや。お前ら誰か一人と、俺が戦う。勝てばアリスのことも教えるし、そこの捕まってる野郎も解放してやろう」
「……話の分かる奴で助かった。いいよ、ならあたしが相手だ」
 そんなジャッキーの申し出に、ミシェルがデッキを構えて前に出た。
 ジャッキーも立ち上がり、今まさに戦いが始まろうという空気だが、
「……あ、でもミシェルさん。君じゃあクリーチャーとは戦えないよ」
「は? なんでだよ、一騎は戦ってたろ」
「君らとクリーチャーが戦うには、神話空間でないとダメなんだ。だけど神話空間を開けるのは、神話の意志を継ぐクリーチャーのみ……要するに《語り手》がいる必要がある」
 しかし当のテインは取り押さえられており動けない。
「おいおい、いくらなんでもこんな奴相手にガチの殴り合いじゃ勝てないって……」
 体格差があるとか、そんなレベルではない。素手で像と戦えと言っているようなものだ。
「どうした? かかってこないのか?」
「くっ、どうするんだよ……!」
 まさかの事態に、手も足も出ないミシェル。そんな時だ。
「……まあ、手がないわけでもないけど」
「どういうことだ?」
「今まで試したことないけど、僕の力の一部を君のクリーチャーに注いでみるよ。流石に実体化するようなことはないけど、神話空間は開けるようになると思う」
「そんな手があるなら最初から言えよ!」
 とにかく、リュンの力があればミシェルのクリーチャーでも神話空間を開けるようになるらしい。
 ミシェルは適当に一枚カードを抜き取ると、リュンへと投げ渡す。
「先に言っておくけど、成功するかどうかは分からないよ。初めてやるし」
「だからそういうことはもっと早く言えよ! 全然先じゃねぇ!」
 リュンは目を瞑り、手にしたカードに向かって念じるように力を込める。そして、
「……うん。たぶん成功したよ。はい」
「結構あっさりしてんな……もっとエフェクトとかないのかよ」
 なにはともあれ、これでミシェルも神話空間で戦えるようになった……はずだ。
「よく分からんが、準備は済んだか?」
「……ああ。待たせたな」
 ジャッキーの言葉に答えるミシェル。
 次の瞬間。歪む空間の中に、両者が飲み込まれていく——