二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 4話「無法の町」 ( No.104 )
日時: 2014/05/25 13:09
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「ここが神話空間……思ったより、雰囲気あるじゃん」
 立体化されている五枚のシールド。手札の移動もドローも、意志一つでオート操作可能。墓地もリスト化され、確認しやすいようになっている。
 そうして始まった、ミシェルとジャッキーのデュエル。
 ミシェルの場には《一撃奪取 マイパッド》《日曜日よりの使者 メーテル》。シールドは五枚。
 ジャッキーの場には《一撃奪取 ケラサス》。こちらもシールドは五枚。
「俺のターン。《ケラサス》の能力でコストを1下げ、マナ爆誕4! 《馬番の騎手 アリマ&キッカ》をマナゾーンから召喚!」
「ここで《アリマ&キッカ》……? なんかヤバい気がするな……」
 しかし今の手札に除去はない。できることをするしかなかった。
「《マイパッド》でコストを下げ、2マナで《フェイト・カーペンター》を召喚。カードを二枚引いて、手札を二枚捨てるが、この時《メーテル》の能力も発動する」


日曜日よりの使者(ビューティフル・サンデー) メーテル 水/火文明 (4)
クリーチャー:アウトレイジ 3000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分がカードを2枚引く時、2枚のかわりに、2枚引いてから自分の手札を1枚捨ててもよい。


「この能力で、カードを一枚引く代わりに二枚引く。この能力は一枚引くごとに発動するから、まず二枚引いて一枚捨て、その後に二枚引いてからさらに一枚墓地へ。最後に《フェイト・カーペンター》の効果で手札を二枚墓地へ」
 少々挙動がややこしいが、一気に山札を掘り進み、かつ墓地にカードを溜めていくミシェル。
「次に呪文《エマージェンシー・タイフーン》。これもカードを一枚引くごとに《メーテル》の能力が発動。カードを二枚引いて一枚捨て、さらに二枚引いて一枚捨て、最後に《エマージェンシー・タイフーン》の効果で手札を一枚墓地へ。これでターン終了」
 《メーテル》の能力を生かし、この早い順目、僅か1ターンで大量に墓地を増やすミシェル。彼女にとって墓地が増えるということは、今後の戦略が組み立てやすくなるということだ。
 だが、
「その程度か、遅いな。俺のターン、呪文《ヒラメキ・プログラム》!」
「《ヒラメキ・プログラム》……まさか……!」
「そのまさかだ。《アリマ&キッカ》を破壊し、山札を捲るぜ」
 破壊された《アリマ&キッカ》のコストは7。なので山札から呼び出されるのは、コスト8のクリーチャー。ここでコスト8のクリーチャーと言えば、
「無限のビートを刻むぜ! この俺《無限皇 ジャッキー》をバトルゾーンに!」


無限皇(インフィニティ・ビート) ジャッキー ≡V≡ 水/火文明 (8)
クリーチャー:アウトレイジMAX 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を墓地に置いてもよい。そのカードが進化ではないアウトレイジであれば、バトルゾーンに出す。
W・ブレイカー
相手の呪文を唱えるコストは無限のマナを必要とする。


「出たか……!」
『行くぜ! この俺で攻撃! その時、山札の一番上を墓地へ送る!』
 そしてそれが、進化でないアウトレイジならば、コストを踏み倒してバトルゾーンに出せる。
『さあ出てきな! 《天災超邪 クロスファイア 2ed》! こいつもスピードアタッカーだぜ! 俺でWブレイク! さらに《クロスファイア 2ed》でもWブレイクだ!』
「っ! S・トリガー《黒神龍オドル・ニードル》を召喚!」
『なら《ケラサス》で《オドル・ニードル》を攻撃! 互いに破壊だ!』
「くっ……!」
 《ジャッキー》を早出しして高速で打点の高いアタッカーを並べられ、ミシェルには少々苦しい状況だ。
「あたしのターン」
 ミシェルは山札からドローすると、相手の《ジャッキー》を見遣る。
「《ジャッキー》がいるせいで、マナコストを支払って呪文が唱えられない……《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。山札の上から三枚を墓地に送り、墓地のクリーチャーを回収。《マイパッド》《メーテル》《フェイト・カーペンター》でシールドをブレイク!」
『ふん、俺がクリーチャーを攻撃することを期待しているのか? 残念だが、この状況なら攻めあるのみだ。俺のターン《正々堂々 ホルモン》《ケラサス》を召喚。そして俺で攻撃!』
 その時、の山札が捲られる。それがアウトレイジなら場に出るが、ここでスピードアタッカーが出ればまずい。
(《ホネンビー》こそいるが、これ以上打点が増えたら防ぎ切れない。さあ、なにが出る……?)
 《ジャッキー》の咆哮でデッキトップが吹き飛ばされる。そして、墓地に落ちたのは、
『……スピードアタッカー《規格外 T.G.V》だ!』
「な……っ!?」
 恐れていたクリーチャーが現れてしまった。
 直後《ジャッキー》の拳が繰り出される。
「っ、《ホネンビー》でブロック!」
『無駄だぜ! 《クロスファイア 2ed》で最後のシールドをブレイク! そして《T.G.V》でとどめだ!』
 《クロスファイア 2ed》がミシェルの最後のシールドを砕く。
 そして《T.G.V》のとどめの一撃が放たれようとする、その瞬間。
「……S・トリガー《インフェルノ・サイン》! 《ホネンビー》を復活しブロック!」
『っ、耐えたか……』
 ただ耐えただけではない。この1ターンを耐えることは、ミシェルにとっては非常に大きな意味を持っている。
「あたしのターン……ところで《ジャッキー》、突然だがあたしの墓地にクリーチャーは何体いる?」
『……? 数えるのも面倒なくらい多いな。それがどうした』
「そうだな。あたしの墓地にはクリーチャーが大量に落ちている。だから、こいつが1マナで出せるんだよ」
 そう言って、たった1マナだけタップし、ミシェルは自身の切り札を呼び覚ます。

「暴走せし無法の龍よ、すべての弱者を焼き尽くせ——《暴走龍 5000GT》!」

暴走龍(ライオット) 5000GT ≡V≡ 火文明 (12)
クリーチャー:アウトレイジ 12000
このクリーチャーを召喚するコストは、自分の墓地のクリーチャー1体につき1少なくなる。ただし、コストは1より少なくならない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、サイキック・クリーチャーを全て破壊する。その後、パワー5000以下のクリーチャーを全て破壊する。
誰もパワー5000以下のクリーチャーを召喚できず、サイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出すことができない。
スピードアタッカー
T・ブレイカー


『な……《5000GT》だと!?』
「同じアウトレイジのお前なら分かるよな、こちの能力」
 弱者を許さない無法者《暴走龍 5000GT》。その能力は、すべての弱者を根絶する力。即ち、
「パワー5000以下のクリーチャーをすべて破壊だ!」
『だ、だが俺と《クロスファイア 2ed》は残って——』
「悪いが、そいつらも潰すぞ。G・ゼロ《百万超邪 クロスファイア》!」
 墓地にクリーチャーが六体以上いるので、G・ゼロで《クロスファイア》が現れる。
「《5000GT》で《クロスファイア 2ed》を攻撃! 《クロスファイア》で《ジャッキー》を攻撃! パワーアタッカーで攻撃時のパワーはプラス百万だ!」
『ぐあぁぁぁぁ!』
 《クロスファイア》の炎に焼かれ、破壊される《ジャッキー》。返しのターン、スピードアタッカーで勝負を決めたいジャッキーだが、
「《T.G.V》は手札にあるが……《5000GT》のせいで出せねぇ……!」
 《5000GT》はパワー5000以下を破壊するだけではない。その後も、パワー5000以下のクリーチャーを召喚することができなくなるのだ。
 結局なにもできずにジャッキーのターンが終わる。
「あたしのターン。《クロスファイア》でWブレイク!」
「ぐぅ……!」
 S・トリガーも出ず、これでジャッキーのシールドはゼロ。
 そして最後に、暴走龍が駆け抜ける。
「《暴走龍 5000GT》で、ダイレクトアタック!」



 神話空間が閉じ、ミシェルとジャッキーが戻ってくる。
「くっ、まさかこの俺が負けるとはな……!」
「忘れてないよな。あたしが勝った、一騎を離せ」
「……約束だからな。おいてめーら、さっさとその手ぇ離しててやれ」
 ジャッキーの指示で、一騎とテインが解放される。
「助かったよミシェル……ありがとう。流石だよ」
「そうっす! 格好良かったすよ!」
「やめろよ、そういうの……つーか一騎、おまえ簡単に捕まりすぎだ」
「ごめん……」
 一騎が解放され、めでたしめでたし……で、終わりはしない。
 そもそも今回ここに来た目的は、別にあるのだ。
「で、もう一つの約束も忘れてませんよね、ジャッキーさん」
「アリスについてだな……悪いが、アリスのことは俺も知らねぇ」
「えっ!? そうなの?」
 ジャッキーは首肯すると、胡坐をかいて頭を掻きながら答えた。
「俺たちアウトレイジも、神話戦争が終結してからバラバラになっちまってな。なんとか生き残った連中を集めてこの町を作ったんだが、まだ見つかってねぇ奴も多い。アリスもそのうちの一人だ」
「そうですか……」
「悪ぃな。つーかお前ら、アリスになんの用だよ」
「実は、人を探してて……あ、この女の子なんだけど、見たことないかな?」
 一騎が携帯片手に、保存されている写真のデータファイルを開くと、それをジャッキーに見せる。もしかしたらなにか知っているかもしれないと淡く期待したが、
「……いや、知らねぇな。俺はこの町からほとんど出ねぇし、外の情報もほとんど入ってこないからな」
「そう……」
 がっくりと肩を落とす一騎。結局、バタバタしていただけで今回は収穫ゼロだった。
 そんなこんなで、今回は一旦帰ることとなったのだが、屋敷を出た時、ふとリュンが思い出したように振り向いた。
「そういいえば、言い忘れてたんだけど」
「なんですか? リュンさん」
「僕と君との付き合いは、今回が最後だ」
 …………。
 一瞬、思考がフリーズする。
「え、あの……それって、どういう——」
「つまりね」
 要約すると、とリュンは続けた。

「明日から、僕は君らとクリーチャー世界に来ることはないってことだよ」