二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 8話「裏」 ( No.108 )
日時: 2014/06/08 03:01
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 どこからか聞こえる声。その声は、一騎たちのよく知る彼の声に他ならなかったのだが、
「焔君……? え、どこにいるの?」
「ここです」
 ガコン、と。
 床のタイルが外れ、中から焔が這い出て来た。
「いやー、意外とこの城、抜け道多いですねー。部下に裏切られた時の事でも考えていたんでしょうか? ハハハ」
 などと白々しく笑う焔は、エスポワールに向く。
「まーこんなことだろうとは思ってましたけどー、寸分違わず僕の読み通りに行動してくれるなんて、あなた黒幕には向いてないですよー」
「一人足りないと思っていたら……流石に、少々驚きました」
 エスポワールは静かに口を開く。確かに彼は驚いた。この状況で空護が現れるとは夢にも思わなかった。
 だが、それはそれだ。
 一騎たちと同じように、対処すればいいだけの話。
「アンドロム」
「おっと、危ないですねー」
 しかしアンドロムの対象をフリーズさせる光を、空護は軽く避ける。それが避けたという動作だと認識するために時間を要するほど、自然な動きだった。
「……アンドロム聖歌隊、一斉——」
「させませんよ」
 と、次の瞬間。
 瞬間的に駆け出し、一息でエスポワールとの距離を詰めた空護。そしてその手には、デッキが握られていた。
「氷麗さんに力を貰っといて良かったですー……いや、あれはリュンさんのでしたっけ? なんでもいいですけどー」
 なんにしても、これで誰にも邪魔されず、エスポワールを叩き潰せる。
 胸中でそう呟いた刹那、空護とエスポワールは神話空間の中へと引きずり込まれるのだった。



「まさか、このような伏兵がいるとは……」
「そういう性分というか、性というか、まあ僕はそんな奴なんですよー」
「……まあいいです。この場所での戦闘だからといって、私が負けるということはあり得ません」
「それ、死亡フラグっていうんですけどねー」
 そんなこんなで始まった、空護とエスポワールのデュエル。
 互いにシールドはまだ五枚。ただし空護は《エメラル》でシールドを一枚仕込んでいる。
 空護のバトルゾーンには《土隠妖精ユウナギ》《土隠雲の超人》。
 エスポワールの場には《蒼天の翼 ラウ》《聖歌の翼 アンドロム》《封魔聖者シャックル・アーマ》
「さあ、そろそろ本番ですよ。私のターン! 《シャックル・アーマ》でコストを下げ、呪文《ドラゴンズ・サイン》!」
 《ドラゴンズ・サイン》は、光の新たな踏み倒し呪文の一つ。手札から光のドラゴンを一体コストを踏み倒して呼べる呪文だ。
「その能力で、手札よりこの私《天団の精霊龍 エスポワール》をバトルゾーンに!」
「早速出ましたねー」
 相手の切り札が出たが、さしたる焦りは見せない空護。そのまま、マイペースに自分のターンを進める。
「んー……とりあえず《エマージェンシー・タイフーン》を撃っときますかー。カードを二枚引いて、手札を一枚墓地へ。さらに《アクア・スーパーエメラル》を召喚して、ターン終了ですー」
『そんなことでいいのですか? 私のターンですよ』
 これで、前のターンに呼び出した《エスポワール》が攻撃可能となった。遂に攻めてくる。
『《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚。《ユウナギ》を手札に戻し、私で攻撃。その時、私の能力が発動します』


天団の精霊龍 エスポワール 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 9500
ブロッカー
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある自分の「ブロッカー」を持つクリーチャー1体につき、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。
W・ブレイカー


 攻撃時、ブロッカーの数だけ相手クリーチャーをタップするのが《エスポワール》の能力。《エスポワール》の場には三体のブロッカーがいるので、
『あなたのクリーチャーはすべてタップですよ! そしてWブレイク!』
「……S・トリガーは、ないですねー」
『ならば《ラウ》で《土隠雲の超人》を、《アンドロム》で《アクア・スーパーエメラル》をそれぞれ攻撃! 破壊します!』
「うーん、やられちゃいましたねー」
 口ではそう言うものの、やはり口だけに見える空護。
「僕のターン。《エマージェンシー・タイフーン》でカードを二枚引いて、一枚を墓地へ。さらに《ユウナギ》を再び召喚。ターン終了ですー」
『やはりその程度ですか。ならばこのターンで私の勝利です!』
 そう高らかに宣言する《エスポワール》。そして、
『呪文《ダイヤモンド・ソード》!』
「……!」
 ここで、少しだけ目を見開く空護。
 《ダイヤモンド・ソード》の効果で、《エスポワール》のブロッカーはすべて攻撃可能となった。つまり、アタッカーが五体となったのだ。
 対する空護のシールドは残り三枚。
『私で攻撃! その時、《ユウナギ》をタップ! Wブレイクです!』
「…………」
『どうせこのターンで終わりますが、念のためです。《ラウ》で《ユウナギ》を攻撃!』
「おっと、それは通しませんよー。ニンジャ・ストライク4、《威牙忍ヤミノザンジ》を召喚。《ラウ》のパワーをマイナス2000して破壊」
 《ラウ》が《ヤミノザンジ》の吐き出す瘴気にやられ、墓地へと送り込まれる。
『む……』
 その様子を見て、《エスポワール》は少し考え込む。
『クリーチャーを潰してからの方が良いと思いましたが……シノビやS・トリガーでクリーチャーを削られて、とどめを刺せないなどという事態があるのは面白くありません。私のシールドはまだ五枚あることですし、ここは普通に攻撃しましょう。《テンサイ・ジャニット》で最後のシールドをブレイク!』
「……来た」
 ニヤリと、空護が笑みを見せる。
 《テンサイ・ジャニット》に割られた最後のシールド。それは、空護が一番最初に仕込んだシールドだ。
「やっと割ってくれましたねー、街に待って待ちくたびれましたよー」
『……? なにを言っているのですか?』
「こういうこと……S・トリガー発動」
 砕けたシールドの破片が、光の束となり収束する——

「——《霊騎秘宝ヒャックメー》召喚」

霊騎秘宝ヒャックメー 光/闇/自然文明 (5)
クリーチャー:アーク・セラフィム/パンドラボックス 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
S・トリガー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の手札をすべて捨てる。このようにして手札を1枚も捨てない場合、このクリーチャーを破壊する。
W・ブレイカー


 シールドから飛び出したのは、百の目玉を持つ異形のクリーチャーだった。
「《ヒャックメー》の登場時能力発動。僕の手札をすべて墓地へ」
『それは好都合ですね。自ら手札のシノビを捨てるとは』
「なにか勘違いしてません? 確かに僕の手札にはシノビがいますけどー、なにもシノビはニンジャ・ストライクしかしないわけじゃないんですよー」
 次の瞬間、《ヒャックメー》の吐き出す炎が空護の手札を焼き払う。しかし、そのうちの三枚だけは燃えずにバトルゾーンへと飛び込んでいく。
「《斬隠蒼頭龍バイケン》三を体バトルゾーンへ!」


斬隠蒼頭龍(きりがくれそうとうりゅう)バイケン 水文明 (6)
クリーチャー:ポセイディア・ドラゴン/シノビ 6000
W・ブレイカー
相手のターン中にこのクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。そうした場合、バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
自分のシノビの「ニンジャ・ストライク」能力を使った時、カードを1枚引いてもよい。


 手札から水飛沫を散らしつつ現れるのは、シノビの頭領。
「《バイケン》の能力で《バイケン》がバトルゾーンに現れた時、相手クリーチャーを一体手札に戻します。 三体いるので《アンドロム》《シャックル・アーマ》そして《エスポワール》をバウンス!」
「っ! そんな……!」
 一瞬でバトルゾーンのクリーチャーを吹き飛ばされるエスポワール。しかも、これでエスポワールのターンは終わりだ。
「ターン終了時に《ユウナギ》の能力で《ヤミノザンジ》を山札に戻す代わりにマナゾーンへ! そして僕のターン!」
 フッと空護の引くカードに陰りが見える。その影は、一気に戦況を巻き返した空護と共に、さらに追い打ちをかけるように表舞台へと姿を現すのだった。

「シノビ流狩猟忍法、毒ガマの影討ち! 現れよ、《ゲロ NICE・ハンゾウ》!」