二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 9話「大番長」 ( No.111 )
日時: 2014/06/08 08:38
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「《四つ牙》を手札に戻すっすよ! そして自分のターンっす!」
 S・トリガーで出た《ドンドン吸い込むナウ》で《「四つ牙」》をバウンスし、八のターン。
「《ヤッタレ・ピッピー》を召喚! 続けて《氷結カッチ・コチーン》と《狩猟のガイア・エッグ》も召喚! 《カッチ・コチーン》の効果で《諸肌の桜吹雪》をフリーズ! 次のターン、アンタップできないっすよ!」
 相手の攻撃を止めつつ、クリーチャーを並べていく八。次は攻撃に移るが、
「《俊足の政》でシールドを——」
「無駄じゃ、われの攻撃はシールドには届かん」
「え?」
 「四つ牙」の言葉に、動きが止まる八。
「われが《諸肌の桜吹雪》を除去せんで助かったわ。《諸肌の桜吹雪》がタップされている時、われの攻撃はすべて《諸肌の桜吹雪》に向くんじゃ!」


諸肌の桜吹雪フキスサブ・ハナフブキ 自然文明 (4)
進化クリーチャー:ビーストフォーク/ハンター 6000
進化—自分のビーストフォーク1体の上に置く。
ガードマン
W・ブレイカー
このクリーチャーがタップされていて、相手のクリーチャーが攻撃する時、そのクリーチャーは可能であればこのクリーチャーを攻撃する。


「マ、マジっすか……!」
 これでは八の攻撃が「四つ牙」に届かない。どうにかして《諸肌の桜吹雪》を除去しなければならなくなった。
「さっきの《ドンドン吸い込むナウ》でそっちを戻してれば……」
「今更悔いても無駄じゃぁ、われがそうやってもたもたしているうちに、わしの必殺の一撃が——」
「ま、ミスったのは仕方ないっすね。次のターンに除去カードを引くことを祈るっす。ターン終了っすよ」
「っ、ぬ、ぬぅ……」
 わりと致命的なミスなのだが、八の反応はあっさりしたものだった。その後腐れのなさに、「四つ牙」も少し戸惑っている。
 だが、いくら八が折れなかろうと、「四つ牙」の有利は変わらない。
「わしのターン! 《青銅の鎧》を召喚し、そのまま《スーパー大番長「四つ牙」》に進化! さらに《突進するシシガミ・ホーン》《無頼勇騎ゴンタ》も召喚じゃあ!」
 大量のマナでクリーチャーを展開する《「四つ牙」》。強気に出ているが、彼のシールドも残り三枚だけだ。
 だが《「四つ牙」》には、《諸肌の桜吹雪》という防壁が存在する。このクリーチャーが存在する限り、《「四つ牙」》が負けることはない。
『わしでシールドをWブレイクじゃあ!』
「っ……!」
 これで八のシールドは一枚。かなり追い詰められてきた。
 次のターンには《「四つ牙」》の並べたクリーチャーたちが襲い掛かってくるだろう。その前に勝負を決めたい八だが、スピードアタッカーでアタッカーを増やしても《諸肌の桜吹雪》が邪魔だ。
 しかし逆に言えば、《諸肌の桜吹雪》さえどうにかしてしまえば、八にも勝機が見えるはずだ。
「自分のターンっす。この時、《狩猟のガイア・エッグ》の能力発動っす」


狩猟のガイア・エッグ 自然文明 (3)
クリーチャー:エッグ 1000
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。そのカードが進化ではないハンター・クリーチャーであれば、このクリーチャーを破壊して、そのハンターをバトルゾーンに出す。
このクリーチャーは攻撃することができない。


 《ガイア・エッグ》が揺れる。狩人の存在に反応し、その力で殻を破り捨てるのだ。
 そして、八の山札の一番上が捲られる——
「……来たっすよ。最高のカードっす」
 そう言って、ふっと笑う八。それからなにか言おうとしたようだが、なにも思いつかなかったのか、そのまま捲ったカードを繰り出した。

「《ガイア・エッグ》から、《熱血ボス!バルス・カイザー》が誕生っす!」

 現れたのは、ハンターたちのボス《バルス・カイザー》。彼の咆哮は仲間のハンターに呼応し、新たな狩人を呼び寄せる。
「《バルス・カイザー》はパワー6000でハンティング持ちっす。《諸肌の花吹雪》も一方的に殴り倒せるっすよ」
『だが、《バルス・カイザー》は召喚酔い、このターンに攻撃はできないんじゃ』
「どうっすかね? やってみないと分からないっすよ。《若頭の忠剣ハチ公》を召喚! その能力で、山札から《ハチ公》を手札に!」
 《ハチ公》は山札から同名クリーチャーを呼べるハンター。サーチ対象が限定されているが、山札から次々と後続を呼ぶことができる能力は決して弱くない。
「さらにこの手札に加えた《ハチ公》も召喚! 山札から《ハチ公》を手札に!」
『そんな雑魚をいくら並べようと、攻撃できなければ無意味じゃ!』
「そーゆーことは、最後まで見てから言うっすよ。《アクア・ジェット》召喚!」
 次に現れたのは、アクア三兄弟の一体《アクア・ジェット》。登場時に味方のハンターの数だけカードを引くことができる。
「自分のハンターは七体、七枚ドローっす!」
 一気に大量の手札を得た八。しかしこれだけ手札があっても、流石にもうマナが尽きかけている。残っているのは1マナだけ。
 だが、それでよかった。八はたった一枚のカードが必要だったが、そのカードを使うためには、1マナあれば十分だ。
 そして、そのカードとは、

「これで終わりっす! 《反撃の城 ギャラクシー・ファルコン》を要塞化!」

 八の唯一残ったシールドに組み立てられたのは、狩人の要塞《ギャラクシー・ファルコン》。
 この城がある限り、八のハンターはすべてスピードアタッカーとなる。
『な、なんじゃと……!』
「さあ行くっすよ! 《バルス・カイザー》で《諸肌の桜吹雪》を攻撃! その時、能力発動!」


熱血ボス!バルス・カイザー 火文明 (6)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 6000+
自分のハンターが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。そのカードが、攻撃している自分のハンターよりコストが小さい、進化ではないハンター・クリーチャーであれば、バトルゾーンに出してもよい。
ハンティング
W・ブレイカー


 《バルス・カイザー》は味方ハンターが攻撃するたびに山札を捲り、それが攻撃クリーチャーよりコストの低いハンターであれば、そのままバトルゾーンに出せる。
 《バルス・カイザー》が咆哮し、その衝撃で八の山札が墓地へと落ちる。その落ちたカードは《ニドギリ・ドラゴン》。
「《ニドギリ・ドラゴン》はコスト5、《バルス・カイザー》よりコストが低いんで、そのままバトルゾーンへ! そして《諸肌の桜吹雪》を破壊っすよ!」
『ぐぬぬ……!』
 《バルス・カイザー》の炎に焼かれる《諸肌の桜吹雪》。これで、《「四つ牙」》を守る邪魔者はいなくなった。
「《ギャラクシー・ファルコン》でスピードアタッカーになった《ニドギリ・ドラゴン》で攻撃! 各ターン初めてタップしたんでアンタップっす!」
 さらに《バルス・カイザー》の能力も発動する。八の山札が捲られ、出て来たのはコスト4の《斬込の哲》。
「《斬込の哲》をバトルゾーンへ! シールドをブレイク! さらにもう一度《ニドギリ・ドラゴン》で攻撃っす!」
 再び《バルス・カイザー》の能力が発動するが、今度はコスト5の《アクア・ジェット》だったので、そのまま墓地へ。
『ぐっ、S・トリガー発動じゃけぇ! 《スーパー炎獄スクラッパー》で、《俊足の政》《斬込の哲》《ハチ公》を破壊じゃ!』
「まだまだっす! 《アクア・ジェット》で攻撃っすよ! 《バルス・カイザー》の能力も発動っす!」
 だが、捲れたのは《反撃の城 ギャラクシー・ファルコン》。それでもシールドを砕き、これで《「四つ牙」》のシールドはなくなった。
『まだじゃぁ! S・トリガー《めった切り・スクラッパー》! 《ヤッタレ・ピッピー》と《カッチ・コチーン》を破壊じゃ!』
 連続でS・トリガーを発動させた《「四つ牙」》だが、残念ながらもう一手足りなかった。
 八の場には、まだ攻撃可能クリーチャーが一体だけ残っている。

「《若頭の忠剣ハチ公》で、ダイレクトアタックっす!」



「どうっすか先輩方! 自分、勝ったっすよ!」
 神話空間から出て来ると、八はグッと親指を突き上げた。
「うん、よく頑張ったとおも——」
「いや、まだまだよ」
 一騎が労おうとするのを、美琴の言葉が遮る。
「全体的にミスが多いし、デッキ構築の段階で既に穴があるわ。特にS・トリガーでせっかく《ドンドン吸い込むナウ》を引いたのに、《四つ牙》を戻すなんて普通はありえないわよ」
「ははっ、手厳しいっすね、美琴先輩」
「黒月さん、流石にそこまで言わなくても……夢谷君、勝ったんだし……」
「一度の勝利じゃまぐれかもしれないじゃないですか。それをまぐれではなく確実なものにするためには、すぐにその時の対戦を反省するべきです」
「それはそうだけど……」
「おい、わりゃあら」
 身内内で会話が繰り広げられている中に、「四つ牙」が入って来た。
「あ、忘れてた。あなたは人間の女の子を見たことあるの?」
「氷麗さん、ちょっとぶっちゃけすぎだよ……」
 忘れてた、とはっきり告げる氷麗。その発言にまた怒りだすのではないかと一騎は恐れたが、デュエルに負けた「四つ牙」は恐ろしいものだった。
「悪ぃが、わしは人間なんぞ見とらんでぇ。本当じゃ」
「そっか……」
 結局、今回も収穫なしだった。これ以上ここにいる意味もないので、一同はさっさと帰ることにする。
(恋、どこにいるんだ……)
 氷麗が携帯操作に四苦八苦している間、一騎の胸中には暗雲が立ち込める。探し人が見つからない焦りを種にして、乱層雲を形成していた。
 たった一人の少女の事だけを考思って——
(恋……!)