二次創作小説(紙ほか)
- 30話「理英雄」 ( No.116 )
- 日時: 2014/06/14 03:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
ビリビリと電光を走らせながら、他の龍素記号と共に現れる《理英雄 デカルトQ》。
(遂に英雄が出たか……確か、《ガイゲンスイ》はマナ武装7を持っていたな)
リュンの発言と先日の《ガイゲンスイ》の能力から、恐らくマナ武装が英雄たちの持つ力なのだろう。
(奴のマナは五枚、もしマナ武装7が奴の能力なら、それは今発動できない)
だが、それ以外の能力があるとすれば、それは問題なく発動できる。
『《デカルトQ》能力発動。手札、シールド、交換』
「シールド入れ替えか……」
《デカルトQ》によって睨みつけられたシールドから、軽く火花が散り、電光が迸る。その動作で、シールドと手札が入れ替わったのだろう。
「都合よくS・トリガーを持っていなければいいが……俺のターン」
「ご主人様、どうしましょう……」
泣きそうになりながら、浬に縋りつくエリアス。
《デカルトQ》の場には、ブロッカーでWブレイカーを持つ《デカルトQ》自身を含め、ブロッカーが三体、アタッカーが三体。攻めも守りも準備万端だ。
だが、準備ならこちらもできている。
「聞いてますか? ご主人様ぁ……」
「変な声を出すな。大丈夫だ、俺に任せろ」
ゆっくりと、浬はカードを引く。ここであのカードが引ければ、まだ逆転のチャンスがあるはずだ。
「……来たか」
少しだけ、浬は微笑む。だがすぐに鋭い表情へと戻り、その手にしたカードを投げつけるようにして顕現する。
「さあ出て来い! 《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚!」
龍覇 メタルアベンジャー 水文明 (6)
クリーチャー:リキッド・ピープル閃/ドラグナー 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト2以下のドラグハート1枚、または、コスト4以下の水のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。(それがウエポンであれば、このクリーチャーに装備して出す)
呪文の効果で相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
水流と共に飛び出したのは、閃くリキッド・ピープル、そして龍と心通わすドラグナー、二つの種族を併せ持つ《メタルアベンジャー》。
「《メタルアベンジャー》がバトルゾーンに出た時、超次元ゾーンからコスト4以下の水のドラグハートを呼び出す」
刹那、超次元の扉が開かれ、封じられていた龍の武器が呼び起こされる。
「来い——《真理銃 エビデンス》!」
真理銃 エビデンス ≡V≡ 水文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
このドラグハートをバトルゾーンに出した時、または、これを装備したクリーチャーが攻撃する時、カードを1枚引いてもよい。
龍解:自分のターンの終わりに、そのターン、自分の水のクリーチャーまたは水の呪文を合計3枚以上、召喚または唱えていれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
結晶の檻に封じられた、水のドラグハート・ウエポンは銃。真理を求め、真理に辿り着くための銃だ。
その名も《真理銃 エビデンス》。
「《エビデンス》はウエポン、よって《メタルアベンジャー》に装備! さらにその能力でカードをドロー!」
《メタルアベンジャー》は、手にした《エビデンス》で浬のトップデックを撃ち、弾き飛ばす。そして浬は、そうして弾かれ、宙を舞い、落ちていくカードを掴み取った。
「狙い通りだ。さあ、まずは式を組み立てるぞ。呪文《セイレーン・コンチェルト》」
浬が残った1マナで唱えるのは《セイレーン・コンチェルト》。マナ回収をしつつ、手札を一枚、マナゾーンに置く呪文だ。
「マナゾーンの《ライヤ》を回収し、手札の《アヴァルスペーラ》をマナゾーンへ。そして、これで1マナ回復した。さっき回収した《アクア忍者 ライヤ》を召喚」
アクア忍者 ライヤ 水文明 (1)
クリーチャー:リキッド・ピープル閃 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体、バトルゾーンから手札に戻す。
「そのカードは……ご主人様」
それは、さっきエリアスが間違えて出したカードだった。
「お前の失敗を、正解の道に正してやる。《ライヤ》の登場時能力で、《アクア・ジェスタールーペ》を手札に戻すぞ」
《アクア忍者 ライヤ》は、召喚時に自分のクリーチャーを一体戻さなくてはならないクリーチャーだ。なので軽くても序盤のビートダウンには向かず、むしろ中盤以降にクリーチャーの登場時能力を使い回すために使われる。浬はその使用法に違わず、連鎖持ちの《ジェスタールーペ》を手札に戻した。
だがこの時、浬にとって重要なのは、“水のクリーチャーを召喚すること”だ。
「……式は組み上がった。ターン終了」
する時に。
このターン、浬は水のクリーチャーを二体召喚し、水の呪文を一度唱えた、つまり水のカードを合計三回使用したことになる。
なので、
「《真理銃 エビデンス》の龍解条件達成! 勝利の解を求める方程式は完成した、これより証明にかかる」
浬の号令のもと、《メタルアベンジャー》は遥か彼方の空に向けて《エビデンス》を構えた。
放出された水のマナより龍素を装填した《真理銃》は、銃弾ではなく銃身そのものが《メタルアベンジャー》の手を離れ、射出される。
「勝利の方程式、龍の素なる解を求め、王の真理を証明せよ。龍解——」
そして《真理銃 エビデンス》は、龍素を最大まで充填し、その力のすべてを解放する——
「——《龍素王 Q.E.D.》!」
龍素王 Q.E.D. ≡V≡ 水文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 11000
呪文の効果で相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
各ターン、自分の水のクリーチャー1体目を、コストを支払わずに召喚してもよい。
各ターン、自分の水の呪文1枚目を、コストを支払わずに唱えてもよい。
W・ブレイカー
《真理銃 エビデンス》が龍解し、両肩に砲身の長い砲を装備した結晶の龍が姿を現す。その龍はすべての龍素の元となり、自身の記号を持たず、あらゆる龍素記号の頂点に立つ王となった。
「龍解——完了」
そして《龍素王》の顕現によって、今ここに、勝利の解を導く真理が証明された。
『——自ターン認識。ドロー』
驚きという概念がプログラムされていないのか、《Q.E.D.》の登場になんの反応も示さない《デカルトQ》。《デカルトQ》は、その行動信号に従って動き続ける。
『《龍素記号JJ アヴァルスペーラ》召喚。山札確認。《ブレイン・ストーム》入手。呪文《ブレイン・ストーム》。再ドロー。山札設置』
ブロッカーを並べつつ、呪文を唱える《デカルトQ》。これで《フィボナッチ》の能力が発動し、《フィボナッチ》はパワー8000のWブレイカーとなった。
『《龍素記号Pu フィボナッチ》攻撃。Wブレイク』
「っ、ぐ……!」
呪文に反応して龍素を増大させた《フィボナッチ》二体の攻撃が炸裂し、浬のシールドが一瞬で四枚砕け散った。その衝撃で、何度目になるのか、眼鏡が吹っ飛ぶ。
「ご主人様!」
「少し視界はぼやけるが……大丈夫だ、問題ない」
「それ、シボーフラグって言うらしいですよ」
「そんなことは知っている」
こんな時にボケるなと言いたいが、浬は言わなかった。
この状況で軽口が叩けるだけの余裕があるのなら、それでいいだろう。
なぜなら、浬の組み立てた勝利の方程式は、今まさに証明されようとしているのだから。
『——ターン終了』
《デカルトQ》は自身では攻撃せずにターンを終える。このターンでは決めきれないので、もしものことを考えてブロッカーを残しておこうという魂胆だろう。
「その選択が、正解であればいいな。俺のターン」
《デカルトQ》のターンが終わり、浬のターン。
《Q.E.D.》が現れ、遂にその力を解き放つ時が来たのだ。それはつまり、
「さあ、そろそろ証明の最終段階に入るぞ——」
浬の勝利を導く方程式が証明が、完了に向かうことを意味していた。