二次創作小説(紙ほか)

32話「牙英雄」 ( No.125 )
日時: 2016/03/11 23:12
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)

「さて、それじゃあ少し、攻め方を変えてみようかな」
 サソリスは、自身が除去されたために、そんなことを言い出す。そして、次なる古代龍が目覚めるのだ。
「《連鎖類覇王目 ティラノヴェノム》を召喚」
 地面から引っ張り出したジュダイナを、広大な大地へと振り下ろす。
 すると次の瞬間、地中より新たな古代龍が復活した。
「お、大きいです……!」
 現れたのは、ティラノサウルスにも似た恐竜型の巨大なドラゴン。しかし紫色の毒々しい爪や、尻尾から伸びる刃、緑色の鱗から蝙蝠の如き小さな翼まで、《オトマ=クット》以上に凶暴で禍々しい容姿をしている。
「《ティラノヴェノム》がバトルゾーンに出た時、マナゾーンからコスト6以下の自然クリーチャーを呼び出すよ。出て来るんだ《連鎖類大翼目 プテラトックス》!」
 再びサソリスがジュダイナを振り下ろす。すると地中から、巨大な翼と《ティラノヴェノム》と同じ紫色の刃を備えた尻尾を持つ、翼竜が大空へと舞い上がる。
「ま、またですか……っ!?」
「これだけじゃ終わらないよ。《プテラトックス》の登場時能力で、マナゾーンからコスト4以下の自然クリーチャーを呼び出せる。外の世界に出ておいで《連鎖庇護類 ジュラピ》!」


連鎖類覇王目 ティラノヴェノム 自然文明 (8)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、コスト6以下の、進化でも多色でもない自然のクリーチャーを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
このクリーチャーが、このクリーチャーよりパワーの大きいクリーチャーとのバトルに負けた時、相手クリーチャーを持ち主のマナゾーンに置く。


連鎖類大翼目 プテラトックス 自然文明 (6)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト4以下の進化でない自然のクリーチャーを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーが、このクリーチャーよりパワーの大きいクリーチャーとのバトルに負けた時、バトル相手のクリーチャーを持ち主のマナゾーンに置く。


連鎖庇護類 ジュラピ 自然文明 (1)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 6000
このクリーチャーを召喚することはできない。
W・ブレイカー


 連鎖類目のジュラシック・コマンド・ドラゴンは、マナゾーンから同類のクリーチャーを呼び出すことで、その名の通り“連鎖”してクリーチャーを展開することができる。
 現にサソリスは、《ティラノヴェノム》の召喚だけで三体ものドラゴンを並べた。さらに、サソリスの場には《ピーア》と《エッグザウラー》がいる。そしてこのターンにサソリスが並べたのはすべてパワー5000以上のコマンド・ドラゴン。
 つまり《ピーア》と《エッグザウラー》の能力が発動し、三体並んだことで3マナ加速、手札も三枚補充されたのだ。
 クリーチャーの展開に必要なマナと手札を、展開するという行動で補充するサソリスは、さらなる追い打ちをかける。
「増えたマナで《連鎖の面 ブルザッソ》《矢毒の面 イロケロ》を召喚。これでクリーチャーが十体だ」
「あ、あうぅ……」
「そして、《オトマ=クット》でWブレイク!」
 唐突に、今まで大人しかった《オトマ=クット》が大きく咆哮する。そしてその勢いのまま、柚のシールドを二枚、引き裂いた。
「っ、S・トリガーです! 《大きくて小さな農園》! パワー3000以下のクリーチャーをすべてマナゾーンへ送りますっ!」
 幸運にも全体除去のS・トリガーを引き当てた柚。一気にサソリスのクリーチャーはマナゾーンに送られ、場数が半減したが、それでもまだ五体だ。
「ふむ……じゃあターン終了だ」
「わ、わたしのターン……」
 それ以上サソリスは攻めてこなかったが、しかし柚の劣勢、サソリスの圧倒的有利は変わらない。
「とりあえず……呪文《リーフストーム・トラップ》で、わたしの《ミルドガルムス》とサソリスさんの《ティラノヴェノム》をマナゾーンへ! さらに」
 大地が揺れる。しかしそれは、サソリスが呼び覚ます古代龍の胎動ではない。
 なにもジュラシック・コマンド・ドラゴンを使うのは、サソリスだけではないのだ。柚もまた、古代龍を切り札としている。

「増殖します、帝王様——《帝王類増殖目 トリプレックス》!」

 大地を揺るがし現れたのは柚の切り札、《トリプレックス》。
 召喚された《トリプレックス》は、大地を割ってしまいそうなほどの咆哮を放つ。
「《トリプレックス》の能力で、マナゾーンから《幻想妖精カチュア》をバトルゾーンへ! そして《バルガザルムス》でシールドブレイクですっ!」
「……へぇ」
 《トリプレックス》と《カチュア》。柚の二体の切り札がどちらも並んだが、しかし盤面的には今更出て来ても遅い。
「なかなかやるね。でも、もう手遅れだよ。僕のターン」
 今でも十分な戦力を揃えているサソリスは、柚を威圧するかのように、さらにクリーチャーを展開する。
「《陽動の面 ヒッヒー》《護鏡の面 ミラレス》《長鼻類 マンモスドン》《節食類怪集目 アラクネザウラ》を召喚」
 大量のマナを得て次々と召喚されるビーストフォーク號とジュラシック・コマンド・ドラゴンたち。その様子に、ただでさえ劣勢で心が折れそうな柚は、さらに圧倒されてしまう。
「……っ」
 もはや声も出ない柚は、ぱくぱくと口を開閉するだけだった。
 そして、
「まずはクリーチャーを掃除しておこうか。《オトマ=クット》で《バルガザルムス》を攻撃」
 再び雄叫びを上げる《オトマ=クット》は、《バルガザルムス》に鋭利な爪を立て、引き裂いた。
「《バルガザルムス》……!」
「まだだ。《ジュラピ》でWブレイクだよ!」
 他のクリーチャーに庇護される《ジュラピ》は、《プテラトックス》に運ばれ宙を舞う。
 そして《プテラトックス》から離れると、落下しながらその小さな爪を柚のシールド目掛けて振り下ろした。
「っ……!」
「《プテラトックス》、最後のシールドをブレイクだ!」
 《ジュラピ》を運んできた《プテラトックス》が空中でターンし、折り返しながら柚のシールド目掛けて突撃。最後のシールドを叩き割った。
「さあとどめだ。《エッグザウラー》でダイレクト——」
「まだですっ! S・トリガー発動っ!」
 《プテラトックス》が砕いたシールドは、光の束となり収束する。そして収束した光は、大量の葉を巻き上げる木枯らしを発生させた。
「《リーフストーム・トラップ》! わたしの《カチュア》とサソリスさんの《エッグザウラー》をマナゾーンへ!」
「止められた……でも、せっかくのアタッカーを潰しちゃったね。《トリプレックス》だけじゃあ、僕にとどめは刺せないよ」
 《エッグザウラー》を除去することで柚はダイレクトアタックを防げたが、しかしその代償として、アタッカーを一体失ってしまった。これではとどめまで、一手足りない。
 だが柚には、その一手を埋める手段があった。
「大丈夫です、わたしには《トリプレックス》だけじゃないんです……っ! お願いします、プルさんっ!」
「ルー!」
「っ!?」
 仮面の下でだが、初めてはっきりとサソリスが驚きを見せた。
「わたしの自然クリーチャーがマナゾーンに送られたことで、《萌芽の語り手 プル》をバトルゾーンへ!」


萌芽の語りペタル・ストーリー プル 自然文明 (4)
クリーチャー:スノーフェアリー/アース・ドラゴン 1000
自分の自然クリーチャーがバトルゾーンからマナゾーンに置かれた時、このクリーチャーを手札からバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。その後、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。


 《カチュア》の抜けた穴を埋めるようにして、柚の手札から《プル》が飛び出した。
「《プル》さんの能力発動です! 山札の上から一枚をマナに置いて、マナゾーンの《ハックル・キリンソーヤ》を回収します。そして、私のターンですっ!」
 なんとかサソリスの攻撃を凌ぎ切った柚。このたった1ターンで、柚の起死回生の一撃が繰り出される。
「マナ進化《密林の総督ハックル・キリンソーヤ》を召喚! 《トリプレックス》で、Tブレイク!」
「っ、S・トリガー《ナチュラル・トラップ》! 《ハックル・キリンソーヤ》をマナゾーンに送るよ!」
 《トリプレックス》がサソリスのシールドを三枚、喰い千切るようにして粉砕する。サソリスはS・トリガーで、このターン出て来た《ハックル・キリンソーヤ》こそ除去できたが、
「……ふむ」
 ここまでだ。
 仮面の隙間から、どこか納得したような、認めたような瞳をの覗かせるサソリス。
 そして彼には《語り手》の妖精が、とどめの一撃を放つ。

「《萌芽の語り手 プル》で、ダイレクトアタックです——っ!」