二次創作小説(紙ほか)
- 39話「怒英雄」 ( No.138 )
- 日時: 2014/07/12 05:39
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
というわけで暁たちは、サンライト・マウンテンの一角にある小部屋へとやって来た。
「《ガイゲンスイ》の言う通りだ。新しいドラゴンの反応を感じる」
「ルー」
「よし、じゃあコルル、頼んだよ」
「おう!」
コルルが壁面に手をかざす。すると、いつものようにその部分が光り、炎となって一つの形を作り出す。
面持ちは正に龍だが、人型に近い姿。《ガイゲンスイ》のように身体の各所には和風の鎧や籠手が付けられ、腰には一振りの刀。
そのクリーチャーは、ゆっくりと目を開く。
「……なんだぁ、てめぇら?」
そして、ドスの利いた声を響かせた。
「はぅ……っ」
「なんか、おっかないね……」
声もそうだが、そのクリーチャーは鋭い眼光で暁らたちを睨みつけている。柚なんかは、既に泣きそうになっていた。
さてどうやってこのクリーチャーと打ち解けようかと考えていると、
『ガイムソウよ、久しいな』
「あ? てめぇは《ガイゲンスイ》……」
デッキから、カードのまま《ガイゲンスイ》が出て来た。その口振りから察するに、このクリーチャーはガイムソウというようで、《ガイゲンスイ》とは見知った中のようである。
『此度はそなたに用があって来た』
「オレに? んだよ」
『儂らの……いやさ、彼女の仲間にならぬか?』
率直で単刀直入に、《ガイゲンスイ》はそう切り出した。
『彼女の名は暁。治安の乱れているこの世界を救うも者の一人だ。儂らは今、彼女の仲間となり、彼女の手足となって、この世界を乱す者と戦っている』
だが、と《ガイゲンスイ》は逆接し、
『不甲斐ない話ではあるが、儂ら先日、とある者と戦い、敗北を喫した。そこで、儂と同じ英雄であるそなたにも力を貸して欲しいのだ。儂だけでなく《バトライオウ》《ドラゴ大王》も彼女の仲間だ。そなたの力があれば、奴らの力も十全に発揮できることだろう。どうだろうか、ガイムソウよ』
《ガイゲンスイ》は真摯な眼差しで、真っ直ぐな目で、ガイムソウに訴えかける。
ガイムソウは顔に影が差しており、表情が読み取れない。口も開かなかったが、やがて、
「……ふっ」
「ふ?」
「ふっ——ざけんなッ!」
凄まじい声量で、怒鳴り声をあげる。
「っ……!?」
「はうぅ……っ!」
部屋が崩れるのではないかというほどの爆音だった。実際、天井から岩の欠片が少しだけ落ちて来た。
「やっと目覚めて、旧友のツラおがめたと思ったら、なにほざいてんだてめぇ! オレを馬鹿にしてんのか!」
「え、えっと……」
怒鳴り続けるガイムソウに、圧倒される暁。そんな暁のことなどお構いなしに、ガイムソウは続ける。
「見損なったぞ《ガイゲンスイ》! てめぇ、なにこんな女についてやがる! オレたちの主はアポロンさんだろうが!」
『……アポロン様はもうこの世界にはいない』
「だからなんだってんだ! オレは認めねぇぞ……こんな奴に、アポロンさんの代わりにつくなんて認めねぇからな!つーか!」
ビシッと、ガイムソウは暁——のデッキを指差して、叫ぶ。
「《バトライオウ》! 《ドラゴ大王》! あとは《バトラッシュ・ナックル》に《GENJI》の力も感じるな……てめぇら全員、腑抜けすぎだ! 少し見ねぇ間に、随分と落ちたものだなぁ、おい!」
『なんだと貴様……我らのどこが腑抜けだというのだ!』
「全部だよ! あの人を差し置いてそんなどこの馬の骨かも分からねぇ女に付き従うなんざ、どうかしてるぜ」
『ガイムソウ、お前は暁のことを知らないからそんなことを言えるのだ』
『確かにこいつは、ちっとばかし頼りないかもしれねぇがな』
『拙者たちの力を最大限に引き出してくれる、良き龍使いだ』
デッキから《ドラゴ大王》《バトライオウ》《バトラッシュ・ナックル》《GENJI》も飛び出し、ガイムソウと言葉をぶつけ合う。
だがその言葉も、ガイムソウには火に油を注ぐだけだ。
「その考えが腑抜けだっつってんだよ! そいつにアポロンさん以上の力があるとも、アポロンさん以上の主としての器があるとも思えねぇ!」
『それは……』
言い淀む《ガイゲンスイ》。
アポロンは十二神話とまで呼ばれた、この世界を統治していたクリーチャーだ。そんなクリーチャーと暁を比べれば、どうしたって暁の方が見劣りしてしまう。
それだけは、覆らない。
「……なんでもいいけどな。てめぇらには失望したぜ」
『貴様、言わせておけば……!』
「だから」
《ドラゴ大王》が噛みつくのをガイムソウは半ば無視するように、暁を睨みつける。
「オレがてめぇらに喝をいれてやる! 覚悟しやがれ、腑抜けドラゴンども!」
「っ!」
次の瞬間、ガイムソウが飛び掛かった。
「暁!」
だがその間にコルルが飛び込む。そして、
「仕方ないか! 行くよ、みんな!」
彼を中心とした、神話空間が展開される。
そして、暁とガイムソウは、その空間の中へと誘われていくのであった。
かくして、かなり強引に始まった暁とガイムソウとのデュエル。
まだどちらもシールドは五枚だが、暁は既に《コッコ・ルピア》を召喚している。
一方ガイムソウは、クリーチャーゼロ。しかし《ネクスト・チャージャー》でマナを増やし、手札も入れ替えている。
「私のターン! 《爆竜 GENJI・XX》を召喚! スピードアタッカーの《GENJI》で、シールドをWブレイク!」
『はぁっ、斬!』
気勢を発しながら、ガイムソウのシールドを二枚ブレイクする《GENJI》。早速、暁が一歩リードしたが、
「はんっ、しばらく見ないうちに腕が落ちたな《GENJI》」
『なに……?』
「その刀、錆びてんじゃねぇのか? 効かねぇよ! S・トリガー発動《天守閣 龍王武陣》!」
ガイムソウの切り裂かれたシールドのうち一枚が、光の束となって収束する。
《天守閣 龍王武陣》の能力で山札が捲られ、ガイムソウはそのうちの一枚を弾き飛ばす。
「選ぶのはパワー7000の《ガイアール・ゼロ》だ! 消えろ!」
『くっ、不覚……!』
ガイムソウのマナは四枚なのでマナ武装は発動しないが、《GENJI》は破壊されてしまった。
「オレのターンだ! まずは《メテオ・チャージャー》を空撃ち、続けて呪文《爆流剣術 炎熱の技》! パワー2000以下の《コッコ・ルピア》を破壊だ!」
「《コッコ・ルピア》までやられちゃったよ……だったら代わりに《フレフレ・ピッピー》召喚!」
返しのターン、暁は《コッコ・ルピア》の代わりとして《フレフレ・ピッピー》を呼び出すが、
「呪文《超次元ボルシャック・ホール》! 《フレフレ・ピッピー》を破壊だ!」
即座に破壊されてしまった。さらに、
「超次元ゾーンから、コスト7以下の火のサイキック・クリーチャーを呼び出す! 出て来い《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》!」
「遂にドラゴンが出ちゃったよ……」
ここで初めてガイムソウがクリーチャーを繰り出してくる。しかも《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》がバトルに勝てば、覚醒されてしまう。
「迂闊にクリーチャーを出しにくくなったけど……その前に決めちゃえば関係ないよ! そっちがサイキックなら、こっちはルピアだ! 《ボルシャック・NEX》を召喚! 効果で山札から《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに!」
確かに《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》は厄介だが、シールドの枚数では暁が有利だ。ならば手数で攻めて、押し切ってしまえばいい。
しかし、
「遅いんだよ! このターンで終わりにしてやるぜ」
「え……?」
ガイムソウから放たれる勝利宣告。
刹那、ガイムソウのマナゾーンが、怒り狂うように燃え盛る。
「我が力、怒りの炎で燃え上がれ! 勝利を呼ぶ龍たちよ、英雄たる我に続け! 炎を纏い武装せよ!」
幾本も立つ火柱から、一体の龍が飛び出す。龍を呼び、仲間を呼び、そして勝利を呼ぶ英雄。それは——
「——《怒英雄 ガイムソウ》!」