二次創作小説(紙ほか)
- 烏ヶ森編 10話「フォートレス」 ( No.142 )
- 日時: 2014/10/25 05:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)
「《龍素記号Bg ニュートン専用パンツァー》を召喚!」
龍素記号Bg ニュートン専用パンツァー 水文明 (6)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 6000
相手がカードを引いた時、同じ枚数のカードを引いてもよい。
W・ブレイカー
ミシェルとドロダブルBros.のデュエル。
現在どちらも準備段階で、シールドは五枚ずつ。ミシェルの場には《フェイト・カーペンター》が一体。ドロダブルBros.の場は、先ほど召喚した《ニュートン専用パンツァー》のみ。
「…………」
見たところドロダブルBros.の使用文明は水と自然。マナブーストとドローを重ねてアドバンテージを取っていくデッキのように見えるが、
(マナゾーンに《ドンドン打つべしナウ》……成程、そういうデッキか)
まだ確定はできないが、十中八九ミシェルの考えるデッキ構成だろう。
「なら、さっさと決めたいところだが……あたしのターン。ドロー——」
「《ニュートン専用パンツァー》の能力発動。相手のドローに反応し、私もドローする」
ミシェルがカードを引くのと同時に、《ニュートン専用パンツァー》から射出された光線がドロダブルBros.のデッキトップを弾き、それがそのまま手札となる。
「こうなるんだよなぁ」
ミシェルはこのまま一気に勝負をつけるために動きたいが、そのためにドローを重ねると相手に大量の手札を与えることとなる。かといってちまちまやっていれば、それはそれで相手の長期的なアドバンテージへと繋がる。
「……ま、もう少し様子を見るか。《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。山札の上三枚を墓地へ送り、墓地から《トップギア》を回収。ターン終了だ」
「私のターン。呪文《ブレイン・チャージャー》、カードをドローし、チャージャーをマナゾーンへ。続けてシンパシーでコストを1軽減、呪文《エナジー・フォーメーション》、カードを二枚ドロー。ターンエンド。」
「あたしのターンだ。ドロー——」
「《ニュートン専用パンツァー》の能力でこちらもドロー」
着々と手札を溜めていくドロダブルBros.。手札を増やすだけでそれに見合った手札消費をしていないが、しかしそのことが、ミシェルの中では自分の考えが確信に変わっていく根拠となりつつあった。
「だったら、やっぱ引けないか……《一撃奪取 トップギア》を二体召喚。ターン終了だ」
「私のターン」
どちらも特別な行動はまだ起こしていない。精々ドロダブルBrosu.が《ニュートン専用パンツァー》を呼び出した程度だ。
しかしここで、ドロダブルBrosに更なる追い討ちをかける。
「この私《龍素記号Tb ドロダブルBros.》を召喚!」
《ドロダブルBros.》が繰り出すのは、《ドロダブルBros.》自身。蒼く輝き紅く煌めく、二頭一対の結晶龍だ。
とはいえこれでマナはほとんど使い切ってしまった。《ニュートン専用パンツァー》で攻撃することもせず、《ドロダブルBros.》はそのままターンを終える。
「じゃ、あたしのターン。ドロー——」
と、その時。ミシェルのドローに対し、二体の結晶龍が反応した。
『そのドローにより、まずは《ニュートン専用パンツァー》の能力、こちらも一枚ドロー。さらに私の能力も発動だ』
龍素記号Tb ドロダブルBros.(ブロス) 水文明 (8)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 8000
相手がカードを1枚引いた時、自分はカードを2枚引いてもよい。
自分の山札の最後の1枚を引く時、かわりに好きな枚数の呪文を自分の墓地から山札の一番上に好きな順序で置き、その後カードを1枚引く。
W・ブレイカー
《ニュートン専用パンツァー》とは違い、《ドロダブルBros.》は相手のドロー一枚に対し、こちらは二枚引くことができる。つまり、手札のアドバンテージを二倍の速度で得ることができるのだ。
そこに《ニュートン専用パンツァー》も加わり、ミシェルがターン初めにカードを引いただけで、《ドロダブルBros.》はカードを三枚も引いてしまった。
「ったく、過剰ドローだっつーの。《ホネンビー》を召喚、墓地を増やし、墓地から《日曜日よりの使者 メーテル》を回収。《トップギア》二体でコストを減らし、《メーテル》を召喚」
ターン終了、と淡々とターンを終えるミシェル。まだ静かな動きだが、なんだかんだ、それでも彼女の場には六体のクリーチャーが並んでいる。ドローを介さずに墓地も増やし、かなり準備が整っていると言えるだろう。
一方で、《ドロダブルBros.》は
『私のターン、ドロー』
このドローで手札が八枚。マナは多くあるが、それでも使い切るには厳しい。しかし、それでいいのだ。
使い切らず、手札を増やすことそのものが、《ドロダブルBros.》の狙いなのだ。
『呪文《ライフプラン・チャージャー》、山札の上から五枚を見て、その中の《偽りの名 iFormula Ⅹ》を手札に』
「……!」
この瞬間、ほぼ確信に近い状態だったミシェルの考えは、完全に確信へと変質した。
(やっぱアイフォーミュラエクストラウィンか)
《偽りの名 iFormula Ⅹ》は、自分の手札が十枚以上あり、ターンの終わりに《iFormula Ⅹ》がタップ状態であれば、そのままゲームに勝利するクリーチャー。その能力を生かした戦術やそのデッキを、アイフォーミュラエクストラウィンと呼ぶ。
カードを十枚引くという点は存外難しいが、狙えば簡単だ。《ドロダブルBros.》は相手のドローを利用する戦術を取っていたが、それ以外にも単純にドロースペルを連打したり、他のゾーンのカードを纏めて回収する行為でも手札を増やせる。恐らく、そういった手札増強の手段も組み込まれているのだろう。
しかし難しいのが、ターン終了時のタップ状態。単純に攻撃すればタップされるが、相手のシールドを割ればS・トリガーで除去される恐れがあり、また召喚してから1ターンのラグが発生する。それでは戦術として安定はしない。なので、能動的に自分のクリーチャーをタップできるカードを入れることが定石だが、最もポピュラーなのは、1コストと軽く、マナ加速と組み合わせやすい自然の呪文《ドンドン打つべしナウ》。
(はっきり言って《iFormula Ⅹ》と組み合わせることしかないような呪文だし、それが見えた瞬間そうだと思ったが、ビンゴだったな。なら)
次のターンに決めないとまずい。
『続けて呪文《セイレーン・コンチェルト》、マナゾーンの《ドンドン打つべしナウ》を回収し、手札のカードを一枚マナゾーンへ』
これでコンボパーツをすべて揃えた。次のターンには《ドロダブルBros.》の手札も十枚を超えるはず。となると、ミシェルに残されたターンはあと1ターン。
『さらに呪文《ストリーミング・シェイパー》、山札の上四枚を捲り……すべて水のカードなので手札へ』
捲られた四枚は《龍素記号Bg ニュートン専用パンツァー》《龍素記号Va ジェラード》《龍脈術 水霊の計》《パーロックのミラクルフィーバー》。ものの見事にすべてが水のカード。これで手札が九枚になり、次の《ニュートン専用パンツァー》と《ドロダブルBros.》の効果で十二枚。コンボパーツの二枚を使用して、ちょうど十枚になる。
「ま、このターンに決めれば問題ない。あたしのターン、ドロー——」
『《ニュートン専用パンツァー》と《ドロダブルBros.》の能力発動、合計で三枚ドローだ』
これで十二枚。完全に準備が完了してしまった。ハンデスカードをほぼデッキに積んでいないミシェル出は、もう止めることは不可能だ。
ただし、だからと言って負けが確定したというわけではない。
ミシェルはカードを引く直前、その手を止める。
「——する時、《メーテル》の効果で一枚引く代わりに二枚引く」
『ならば、こちらも引かせてもらおうか。さらに三枚ドロー』
「勝手にしろ。こっちは手札を一枚捨てるぞ」
相手のドローに反応してドローする《ドロダブルBros.》に対し、追加ドローの代償として手札を捨てるミシェル。手札の差はどんどnついていく。
「呪文《スクランブル・タイフーン》! カードを五枚引いて三枚捨てるが、これも《メーテル》の能力でさらに五枚引き、捨てる枚数は各追加ドローごとに一枚で合計八枚だ」
『ならばこちらもドローさせてもらうぞ!』
一気に山札を掘り進むミシェルに対し、《ドロダブルBros.》も山札がなくなるほどにドローする。
だが、《ドロダブルBros.》の山札が切れることはない。なぜなら《ニュートン専用パンツァー》も《ドロダブルBros.》も効果は任意、加えて《ドロダブルBros.》には山札がなくなると、墓地の呪文を山札に戻す能力があるので、山札切れの心配はないのだ。
(つっても、どうせ相手は手札十枚以上をキープすればそれ以上ドローの必要はないし、それ以上引いても関係ない。こっちはこっちで好きにやらせてもらう)
ミシェルの山札も残り二枚とかなり削られたが、しかし大量のドローしたわりに、手札はたったの三枚。それもそのはず、ドローしたカードの半分は《メーテル》の能力によるものなので、追加ドロー分のカードを捨てなければならないのだ。
だが、これでいい。ミシェルにとって重要なのは、カードを引くことではない。カードを“墓地に送り込むこと”なのだから。
「これで墓地のカードは十分! 《トップギア》も合わせてマナコストマイナス11! 1マナでこいつを召喚だ!」
凄まじい叫びで大地が鳴動する。絶対的な無法の力が、数多の屍を超えて、今ここに現れる。
「暴走せし無法の龍よ、すべての弱者を焼き尽くせ——《暴走龍 5000GT》!」
地に降り立つ《5000GT》。彼が叫びをあげた瞬間、ミシェルのクリーチャーが一瞬で消し飛んだ。
「《5000GT》の能力でパワー5000以下のクリーチャーは生存できなくなる。だからあたしのクリーチャーは消し炭になるが、こいつはスピードアタッカーのTブレイカーだ。さらにG・ゼロ発動! 《百万超邪 クロスファイア》を召喚!」
『っ、だが、まだ打点は足りない——』
「どうだかな。このターン、あたしはカードを六枚以上引いている。さらにG・ゼロで《天災超邪 クロスファイア 2ed》召喚!」
これでスピードアタッカーのTブレイカーが一体、Wブレイカーが二体。五枚のシールドを突き破り、とどめを刺すだけの戦力が揃った。
「さあ、これで決めるぞ! 《5000GT》でTブレイク!」
『ぐ……S・トリガー《アクア・サーファー》——』
「それは無理だ。さっき言ったろ、《5000GT》がいる限り、弱者は生き残れない。パワー5000以下のクリーチャーは召喚できない!」
残りのシールドからS・トリガーが出ることもなく、《ドロダブルBros.》のすべてのシールドが粉砕された。
そして、とどめの一撃が放たれる。
「《クロスファイア》で、ダイレクトアタック!」