二次創作小説(紙ほか)
- 烏ヶ森編 10話「フォートレス ( No.144 )
- 日時: 2014/11/02 17:19
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: d2sOH2lv)
要塞の通路を走り抜け、テインが眠っていた小部屋へと辿り着く一騎たち。
そこには、一見するとなにもない。しかし壁面の一部が、赤く燃えていた。
「な、なにあれ……? どうなってるの?」
「誰かの封印が解けるみたいだ。僕の仲間の戦士が目覚めるようだけど、一体誰が……」
そして、壁面の炎が一層強く燃焼した。
「っ!」
その光で思わず目を閉じる。次に開いた時には、炎の燃えていた場所になにかが立っていた。人型で、剣を携えたクリーチャーのようだが、
「あれは……?」
「《フィディック》だ……」
「フィディック?」
「うん。一騎、君の持っている《グレンモルト》の師匠だよ。僕も少しだけ手ほどきを受けたことがあって、マルス隊長と対等に話せる一人だった記憶があるよ」
《グレンモルト》の師匠だとか、マルス隊長と対等に話せるだとか、それがどれほど凄いのかは一騎にはピンと来なかったが、しかし目の前で黙しているだけで気迫を放つその立ち姿は、只者ではないということを感じさせるには十分だ。
「……久しいな、テイン」
フィディックは、ゆっくりとこちらを見据え、落ち着いた声でテインに呼びかける。
「お前たちの熱に当てられ、私もいつまでも寝ていられなくなってしまったよ」
軽く笑いながらそう言うフィディック。このように出て来たクリーチャーだと、最初に襲い掛かって来た《オニナグリ》の印象が強いが、フィディックはかなり落ち着いていた。
「それはそれとして、だ。私が目覚めた理由は他にもある」
「目覚めた理由?」
「ああ。今のお前の姿を見れば、早くした方いいだろう……マルスの置き土産だ」
その言葉を聞き、明らかにテインが反応を示す。
「隊長の……っ!? 一体なんなんだい、それは?」
「……私としてはすぐに渡しても構わないが、しかしあのマルスが私に託し、お前に残したものだ。なにもせずに渡すわけにはいくまい」
と、その時。フィディックの纏う空気が変わった。
ピリピリと肌に突き刺さるようなこの感覚。一騎にも分かる、これは戦う者の気迫だ。
フィディックは今から、一騎やテインと戦う気なのだ。
「安心しろ、少年よ。目覚めたばかりではあるが、今のこの世界がどういう者か、多少は理解している。貴様の土俵で戦うとしよう」
しかし、とフィディックは逆接し、
「だからと言って、私を侮るなよ——」
刹那。
一騎とテイン、そしてフィディックを、神話空間が包みこんだ——
一騎とフィディックのデュエル、序盤。互いのシールドは五枚ずつ。
一騎の場には《一撃奪取 トップギア》、フィディックの場には《爆山伏 リンクウッド》。
「呪文《ネクスト・チャージャー》。手札をすべて入れ替え、チャージャーをマナへ。《リンクウッド》で攻撃。マナ武装3発動、山札の一番上を捲るぞ」
捲られたカードは《爆打者 猛トラック》。ヒューマノイドなので手札へ加わる。
「シールドをブレイクだ」
「S・トリガーは……ないよ」
先手を取られてしまったが、まだ序盤だ。いくらでも巻き返せる。
「俺のターン。《爆炎シューター マッカラン》を召喚! マナ武装3発動で《リンクウッド》とバトルして破壊! 《トップギア》でシールドをブレイク!」
厄介な手札補充役の《リンクウッド》を破壊しつつ、こちらもシールドを削る一騎。しかし、
「甘い。《爆山伏 リンクウッド》《爆炎シューター マッカラン》を召喚。《マッカラン》のマナ武装3発動、貴様の《マッカラン》とバトルだ」
一騎の《マッカラン》はフィディックの《マッカラン》とのバトルにより、相打ちとなった。
「これでまた振り出しか……呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札をすべて山札の下に!」
現状、一騎の手札は重い。少しでもそれを改善すべく、手札を入れ替える。
「……ターン終了」
「私のターン。《爆打者 猛トラック》を召喚。《リンクウッド》で攻撃、マナ武装3発動」
山札の上を捲り、捲られた《爆師匠 フィディック》を手札に加える。
「シールドをブレイクだ」
「くっ……でも、まだまだこれからだよ」
一騎のターン。先ほど《ネクスト・チャージャー》で引き入れたあのカードを、解放する。
「《龍覇 グレンモルト》を召喚!」
爆炎と共に姿を現したのは、火文明を代表するドラグナー《グレンモルト》。その力により、超次元の彼方から彼の武器が呼び寄せられる。
「超次元ゾーンから《銀河剣 プロトハート》を呼び出し、《グレンモルト》に装備!」
一騎の切り札を呼び出す準備は整った。あとは攻撃するだけだ。
「ふむ……《グレンモルト》か。そやつを使役するとはなかなかだが、剣はいまだ《プロトハート》のようだな」
「“いまだ”……?」
フィディックの言葉に少しばかり引っかかる一騎だが、それに気を取られてもいられない。フィディックは次なる一手を繰り出す。
「《龍覇 スコッチ・フィディック》を召喚!」
「来たよ一騎」
「うん……」
現れたのは《フィディック》その人。それも、ドラグナーとしての《フィディック》だ。
「一体、どんなドラグハート・ウエポンを——」
『少年よ、ドラグハートがウエポンばかりだと思うな』
場に出た《フィディック》は、一騎の言葉に聡く反応し、指摘する。
「? どういうこと……?」
『ドラグハート・ウエポンは、ドラグハートの可能性の一つでしかない。姿形がなんであれ、龍の魂が込められているものであれば、それ即ちドラグハートとなる。私がこれから呼び出すものは、貴様が思うドラグハートとは違う姿をしているだろう。それをしかとその目に焼き付けよ』
そう言って《フィディック》は、目の前に炎を放つ。炎は導火線のように地面を走り、敷地を囲うように炎の範囲を規定する。
『出でよ、ドラグハートの次なる可能性——ドラグハート・フォートレス!』
「ドラグハート……フォートレス……?」
刹那、大地が鳴り動く。炎によって規定された場所から、火文明の城が現れる。
『ここに建て、我らが牙城! 《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》!』