二次創作小説(紙ほか)

41話「勝利天帝」 ( No.147 )
日時: 2014/11/03 05:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「——よし来た! 《怒英雄 ガイムソウ》召喚! マナ武装7発動で、手札から《爆竜勝利 バトライオウ》をバトルゾーンに! スピードアタッカーになった《バトライオウ》でWブレイク!」
「おっと、これはなかなか手痛いわね」
「部長の場には《ツミトバツ》だけ。このまま一気に押し切るよ!」
「そう? じゃあ私のターン。《呪英雄 ウラミハデス》を召喚。マナ武装7発動、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を墓地からバトルゾーンへ」
「え?」
「《ツミトバツ》でWブレイク」
「ちょ……やば……! 《バトライオウ》を召喚!」
「《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の効果でタップ」
「そうだった……な、なら、《ガイムソウ》で《ツミトバツ》と相打ちに! ターン終了!」
「私のターン。《絶望の悪魔龍 フューチャレス》を召喚、手札をすべて捨てるわ」
「私の手札もなくなったよ!?」
「そして《ウラミハデス》《バトライオウ》を攻撃、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の効果で私の闇クリーチャーはスレイヤーだから相打ちね」
「まずいまずい……《撃英雄 ガイゲンスイ》召喚!」
「闇のクリーチャー以外はタップして出るわよ」
「あぅ……」
「それじゃあそろそろ終わりかしらね。《黒神龍アバヨ・シャバヨ》召喚、自身を破壊するから、暁の《ガイゲンスイ》も破壊ね。そして《フューチャレス》で攻撃、私には手札がないからTブレイクよ」
「S・トリガー……ない!」
「はい、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》でとどめ」
「負けたぁー!」
 ダイレクトアタックを受け、盛大に後ろに倒れ込む暁。
 場所はいつものピースタウンの工房。今日も今日とて荒くれクリーチャーを抑えに行く前に、暁と沙弓は肩慣らしと称して、互いに改造したデッキのテストプレイをしていた。
 ちなみに、今日はリュンはいない。
「やっぱ部長は強いなぁ、全然敵わないよ」
『違ぇよ! てめぇが腑抜けてっからだろうが!』
 体を起こしながら呟くと、散らばった暁のカードの一枚が、そう暁に怒鳴り込む。
「《ガイムソウ》……どゆこと?」
『どうもこうもあるか! てめぇ俺の扱いが雑なんだよ! なんで俺がわざわざマナ武装までして出すのが《バトライオウ》なんだ!』
『なんだ? 俺だと不満なのか?』
『ったりめーだ! てめぇなんざ俺がわざわざ呼び出すような奴じゃねぇんだよ!』
『言うじゃねえか……!』
「はいはいストップ、喧嘩はやめやめ。負けちゃったけど、ガイムソウもバトライオウも頑張ってくれたよ」
 今にも殴り合いを始めそうなガイムソウとバトライオウの間に、暁が割って入る。しかしそうすると、今度はガイムソウの矛先が暁に舞い戻って来る。
『なにが頑張っただ! 勝たなきゃ意味ねぇんだよ! そもそもだ! バトライオウは火のドラゴンが勝てば手札からタダで出せんだろうが! わざわざ俺で出す必要はねぇんだよ!』
「それは……確かに」
「一理あるわね」
 元々踏み倒し能力のある《バトライオウ》を、他の踏み倒し手段で出す必要が薄いというのはもっともだ。感情に任せて怒鳴っているようで、ちゃんとガイムソウにも考えはあるようだ。
「じゃあ、どんなクリーチャーがいいの?」
『それを考えるのがてめぇの役目だろうが……まあいい。ざっくり言うとだ、コストの高ぇ奴だな』
「うわ本当にざっくり。コストが高いっていうと、《ドラゴ大王》とか?」
 《ドラゴ大王》のコストは10、しかもTブレイカーで場に出ると相手一体とバトルすることで除去を放てる。7マナでそれが出るとなれば強いだろうが、
『なにを言うか小娘、我はこのような奴に呼ばれるほど安くはない』
 しかし、当人は不満のようだ。
『それに、ターンの終わりに手札に戻るのでは、我が能力が生かし切れていない。我は場に君臨し続けることで龍以外の存在を封じる、それが本懐。そのことを失念するとは何事か』
『どうせドラゴン以外にも、呪文とかでやられてるじゃねぇかてめぇ。しかも封じられないドラゴンにも普通に負けるしよ」
『我に随分と不遜な口を聞けるようになったな、ガイムソウ。我が王権で叩き潰してくれようか』
『やってみやがれ。てめぇの古臭いカビの生えた王権なんざにやられる俺じゃねぇ』
「あーもう、だから喧嘩はやめなって!」
「なんと言いますか、あきらちゃんのクリーチャーって、いつもこうですね……」
「本当大変だよ、もう……」
 火文明、それも戦闘龍と呼ばれるドラゴンたちゆえに、どれもこれも血気盛んで喧嘩っ早い。こんなことはしょっちゅうだ。
「だが、確かに《ドラゴ大王》の強さはそのロック能力にある。場に維持し続けられないのであれば、その力をすべて引き出しているとは言い難い。選択肢の一つにはなるだろうが」
「浬……うーん、でもあんまりコストの高いドラゴンを入れると、デッキが回らなくなっちゃうんだよね。それに《ガイムソウ》で踏み倒したいドラゴンっていうのも思いつかないし」
 暁がそう呟くと、ガイムソウは、
『……心当たりなら、なくはない。俺のマナ武装でよく呼び出していた奴がいる』
「え? そんなクリーチャーいるの?」
『あぁ。ただし、今のてめぇの下にはいねぇようだがな。あいつの力は俺も認めるほどだ。手元に置いておかねぇ手はねぇ』
 思い立った日が吉日、そして善は急げだ。
 早速、そのクリーチャーを仲間とするために、暁たちは工房から発ったのであった。



 暁たちがやって来たのは、やはりというかなんというか、火文明の領地の一つ、太陽山脈サンライト・マウンテン。その一角にある洞窟だった。コルルの眠っていた、あの部屋のある洞窟だ。
「やっぱりここなんだね」
「まだまだアポロンさんと共に戦った仲間たちは、数多く眠っているからな」
 そう言いながら暁とコルルは洞窟に入っていく。その後に、柚や浬も続くが、
「……部長? どうした?」
「いや……暁」
「なに?」
「悪いんだけど、この先には一人で行って来てくれるかしら?」
「え? なんで?」
「まあ、ちょっとね。ほらほら、早く行きなさいな」
 沙弓は疑問符を浮かべている暁の背を、ぐいぐいと洞窟の奥へ早く行けと急かすように押す。
「わわっ、押さないでくださいよ」
「一人でも行けるでしょ。行ってらっしゃい」
「別に一人でもいいけど……まあいっか。とりあえず行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
 暁を見送るように手を振る沙弓。やがて、暁の姿は洞窟の闇へと消えて行った。
「……あ、あの、ぶちょーさん」
「なにかしら?」
「なんで、あきらちゃんを一人にしたんですか……? わたしたちは、行っちゃダメだったんでしょうか……」
「ダメということはないが、行かない方が都合は良かっただろうな」
 沙弓が答える代わりに、柚の疑問には浬が答えた。
「あら浬、気付いてたの」
「まあ、途中からですけど」
「? なんのことですか?」
 いまだ状況が分かっていない柚。しかし、この二人の言うことは、すぐに理解できた。
 ふっ、と。三人に影が差す。
「っ! え……?」
「やっぱりか」
 見上げると、そこにいたのは三体のクリーチャー。しかも、本来はここにいるはずもないクリーチャーたちだ。
「《衛兵の翼 ヴァニエ》《静謐の翼 ラーブラショク》《交錯の翼 アキューラ》……光のジャスティス・ウイングたちね」
 沙弓が暁を一人で行かせたのは、この三体のクリーチャーの存在に気付いていたから。なんの害もないクリーチャーならいいが、明らかにこの三体は殺気を放っている。
「確かリュンは、光のクリーチャーは他文明の領地を奪うために行動を起こすことも多いと言っていたな……こいつらはそういうことなのか?」
「さあ? ただ、なんにせよやる気はあるようだし、それなりに相手はしましょうか。柚ちゃん、行ける?」
「は、はひっ。大丈夫です!」

 新たな火文明の龍と出会うために洞窟を駆ける暁、突然の光文明の強襲を食い止める浬、沙弓、柚。
 そんな彼らの下へ、さらなる勢力が向かっていることは、まだ誰も知らないのであった——