二次創作小説(紙ほか)

41話「勝利天帝」 ( No.148 )
日時: 2014/11/03 09:59
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 例の小部屋までたどり着いた暁。この場所へ足を運ぶのは、これで何度目となるだろうか。
「……で、そのドラゴンっていうのは?」
「オレもどこにいるのか分からねーぞ?」
『ちっ、てめぇら揃いも揃って……右5、上5だ! さっさとしろ』
 ガイムソウに急かされ、コルルは壁面へと飛んで行く。そしてガイムソウが指示した場所まで来ると、
「こいつか。大丈夫なのか? こいつを目覚めさせて」
『それはこの女次第だな。奴に認められる力を見せられるかどうかだ』
「そうだなぁ……暁なら大丈夫だろ。なんたって、既にオレたちが認めてるんだからな」
『俺は認めた覚えはねぇぞ』
 そんなやり取りをしながら、コルルは壁面の一部に手をかざす。すると、その箇所が淡く発光し、赤い炎を噴きだした。
「うわ……っ!」
 炎はどんどん膨張していき、やがて一つの姿を作り出す。
 炎を取り払い、そこに立つのは一体の龍。見上げるほどに巨大で、背には金色の輪、二対の腕を持ち、身体の各所を鎧のような武具で覆っている。
「……な、なに?」
「《Gメビウス》だ」
「ガイアール……?」
 聞き覚えのあるような、ないような名前だった。さらに言うと、目の前の龍の姿も、どことなく覚えのある雰囲気がある。
『《勝利天帝 Gメビウス》……アポロンさん率いる火文明の中で、最強のドラゴンの一体とされるクリーチャーだ』
「さ、最強って、なんか凄そう……」
『凄そうじゃなくて凄いんだよ!』
 ガイムソウが怒鳴る。
 なにはともあれ、このGメビウスがガイムソウの言う、彼と相性の良いクリーチャーのようだ。それならば、仲間にしない手はない。
『だが、勿論Gメビウスもただでお前に従ったりはしないだろうがな』
「じゃあ、どうするの?」
『決まってんだろ。俺たちは戦闘龍、ガイアール・コマンド・ドラゴンだ。強い奴に従うのが世の定め、ならば』
「戦ってどっちが強いかを決めるんだ」
『俺の台詞を取るんじゃねぇ!』
 ともかく。
 このGメビウスと戦い、勝つ。
 自分がすべきことはそれだけだと、暁はデッキを手に取る。
「コルル! お願い!」
「おうよ、任せとけ!」
 そしてコルルが展開する神話空間へと、突入する——



「呪文《勝負だ!チャージャー》! 対象なしで撃ってマナを追加!」
「呪文《メテオ・チャージャー》だ。対象なしで撃ち、マナを増やす」
 暁とGメビウスのデュエルが始まった。
 まだ序盤。互いにシールドは五枚あり、クリーチャー数ゼロ、マナ数とも同じ。どちらも動きのない状態だ。
「《熱血龍 バクアドルガン》召喚! スピードアタッカーの《バクアドルガン》で攻撃! その時、山札を捲ってドラゴンなら手札にできるよ!」
 捲られたのは《竜星バルガライザー》。ドラゴンなので手札へ。
「よしっ、そのままシールドブレイク!」
 とりあえず、暁が先手を取ってシールドを割ることができた。
 一方、Gメビウスも動きを見せ始める。
「《爆竜兵ドラグストライク》を召喚」


爆竜兵ドラグストライク 火文明 (5)
クリーチャー:ドラゴノイド 1000
このクリーチャーが破壊された時、ドラゴンを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。


「ターンエンド」
「破壊されるとドラゴンをタダで出せるんだ……」
 とんだ不発弾が投下されたものである。
「でもまあ、そんな都合よく高いコストのドラゴンもいないでしょ。7マナくらいだったらなんとかなりそうだし、とりあえずは放っておこう。私のターン!」
 その考えは浅はかとしか言いようがないのだが、気にせず暁は自分のターンを進める。
 しかし、現在暁の手札はあまりよくない。今のマナで召喚できるクリーチャーがいないのだ。
「なら、呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札をすべて山札に戻して、戻した数だけドロー!」
 暁は手札二枚を山札の下に置き、今度は上から二枚を引く。
「よし来た! 《コッコ・ルピア》を召喚! さらに《バクアドルガン》で攻撃! 山札を捲って……ドラゴンの《フルボコ・ドナックル》だから手札に加えるよ! そしてそのままシールドブレイク!」
 手札を補充しつつ、二枚目のシールドも叩き割る暁。Gメビウスのシールドは残り二枚。火単のGメビウスなら防御は薄いはずなので、シールドの差二枚は大きなアドバンテージだ。
 代わりに、Gメビウスに大きなチャンスを与えてしまったが。
「《ガイアール・アクセル》を召喚。さらに《ドラグストライク》で《バクアドルガン》を攻撃」
「え? 《バクアドルガン》のパワーは4000だよ? パワー1000の《ドラグストライク》じゃバトルに負けて、破壊されるだけ——」
 そこで、ハッと暁は気付いた。
「やっちゃった……!」
 気付いた時には、時すでに遅し。
 《バクアドルガン》が《ドラグストライク》を返り討ちにし、破壊する。そう、《ドラグストライク》が破壊されたのだ。
「《ドラグストライク》の能力発動。手札より《熱血龍 グランドスラム》をバトルゾーンへ」
 《ドラグストライク》をわざと自爆特攻させることで、手札からさらにドラゴンを呼び出すGメビウス。もしも暁が不用意に攻撃しなければ、こんなことにはならなかった。
「《ガイアール・アクセル》の能力で、味方ドラゴンはすべてスピードアタッカー。《グランドスラム》で《バクアドルガン》を攻撃」
「っ、《バクアドルガン》!」
 《グランドスラム》の打つ闘魂の火球が《バクアドルガン》を砕く。しかも《グランドスラム》がバトルに勝ったことで、Gメビウスは手札をすべて捨てる代わりに、新たに四枚のカードを引いた。
「やばいよ……」
 しかし、今の手札ではどうしようもない。このままでは、ドラゴンを次々と出されて押し切られる。
「こうなったらもう一度……呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札をすべて山札に戻すよ!」
 今度はなけなしの一枚を山札に戻す。そして引いたカードは、
「んぅ、うー……まあいいか。《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚! 効果で《ガイアール・アクセル》とバトル!」
 《バトラッシュ・ナックル》《ガイアール・アクセル》、どちらもパワーは6000。なので相打ちとなり、共に破壊される。
「これでとりあえず、ドラゴンがスピードアタッカーになることはなくなったね。ターン終了」
 ひとまずドラゴンで怒涛の如く攻められるということはなくなりそうだが、まだ安心はできない。今の暁に手札はなく、場にいるのも《コッコ・ルピア》だけなのだから。
「呪文《ネクスト・チャージャー》で手札を入れ替える。そして《爆竜兵ドラグストライク》を召喚し、ターンエンド」
「攻撃しないのか……」
 どうやら暁に手札を与えるつもりはないらしい。手札切れで暁の動きが鈍いうちに準備を整えるつもりなのか。それとも、暁のシールドを一気に吹き飛ばす手段があるのか。
 どちらにせよ、暁の苦しい状況は続く。
「なんとかしないと……私のターン!」
 この辛い状況を吹き飛ばすかのように、勢いよくカードを引く暁。
 その意気込みにデッキが応えたのか、ここで暁は最高のカードを引き当てる。
「……やった! これなら行ける! 《コッコ・ルピア》でコストを2減らして」
 8マナをタップする。そして現れるのは、

「暁の先に、龍の世界を——《龍世界 ドラゴ大王》!」

 現在、暁のデッキで最重量のドラゴン。《ドラゴ大王》だった。
「君がいれば安心だね。頼んだよ、《ドラゴ大王》!」
『貴様に指図されるまでもない。我が能力発動! 我と《グランドスラム》をバトルさせる!』
 その結果、当然《グランドスラム》が一方的に破壊される。
 手札がないという状態は変わりないが、これだけ大きな切り札を出したことは大きい。このまま《ドラゴ大王》のパワーで少しずつ制圧していけば——暁はそう考えていた。
 しかし、ここでGメビウスの戦術も、最終段階に入る。
「……呪文《チェーン・デスマッチ》を発動」
「《チェーン・デスマッチ》?」


チェーン・デスマッチ 火文明 (4)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある一番パワーの大きいクリーチャーを1体選ぶ。その後、バトルゾーンに残っているクリーチャーの中から一番パワーの大きいクリーチャーを1体選ぶ。同じパワーのクリーチャーが2体以上ある場合、そのうちのどちらかを選ぶ。そのクリーチャー同士をバトルさせる。


 あまり聞きなれない呪文に首を傾げる暁。
 テキストは複雑だが、要するにバトルゾーンにある、パワーの高さが一位と二位のクリーチャーをバトル刺せるというものだ。普通は自分のパワーの高いクリーチャーで、パワーの低い相手クリーチャーを除去するために使われるが、
「《ドラゴ大王》と《ドラグストライク》をバトル」
「っ、まさか……!」
 今の場でパワーが一番高いのは《ドラゴ大王》。次点が暁の《コッコ・ルピア》かGメビウスの《ドラグストライク》で、普通は暁のクリーチャー同士をバトルさせ、《コッコ・ルピア》の除去を狙う場面。
 しかしここでGメビウスは、《ドラグストライク》を《ドラゴ大王》とバトルさせた。なぜなら、
「バトルに敗北した《ドラグストライク》は破壊され、能力発動。手札からドラゴンをバトルゾーンへ」
「そ、そんな方法で《ドラグストライク》を破壊するなんて……!」
 完全に盲点だった。
 さらにここで、遂に彼が戦場へと現れる。爆炎を放ち、その姿を顕現させる。

「我が身よ出でよ——《勝利天帝 Gメビウス》!」