二次創作小説(紙ほか)
- 42話「最終龍理.+3D龍解」 ( No.153 )
- 日時: 2014/11/04 21:39
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
聖霊龍王 アルカディアスD(ディー) 光文明 (6)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 12500
進化—自分の光のドラゴン1体の上に置く。
T・ブレイカー
誰も光以外の呪文を唱えることができない。
神々しき光の下に現れたのは、《聖霊龍王 アルカディアスD》。
容貌はかの有名な、光文明を代表する進化クリーチャー、《聖霊王アルカディアス》によく似ているが、その姿は「D」の力——即ちドラゴンの力に目覚めたことで、龍化している。
とはいえ他の龍化したクリーチャーとは違い、《アルカディアスD》はオリジナルとほぼ同じ性能である。いや、むしろ強化されていると言ってもいい。
「《アルカディアスD》がいる限り、誰も光以外の呪文を唱えられない……」
「なんだと……くそっ!」
これで水単の浬は呪文を唱えられない。一方ラヴァーのデッキは、どう考えても光単色。《アルカディアスD》の影響は一切受けない。
「じゃあ……《アルカディアスD》で、《Q.E.D.+》を、攻撃……」
《アルカディアスD》の光線が、《Q.E.D.+》を撃ち抜く。それにより《Q.E.D.+》は破壊されてしまうが、
「《Q.E.D.+》が場を離れる時、龍回避が発動する!」
破壊されるはずの《Q.E.D.+》は、その姿を変形させていく。まるで破損した部位を修復するために、形態を変化させるかのように。
そしてその姿は、瞬く間に《龍波動空母 エビデゴラス》へと変形した。
「龍回避は一部のドラグハート・クリーチャーのみが持つ特別な能力だ。《Q.E.D.+》は場を離れる時、超次元ゾーンへは戻らずフォートレス側に戻る」
つまり、いくら除去しようとも《エビデゴラス》の状態で除去しなくては場から離すことができないのである。しかしその、肝心の《エビデゴラス》もフォートレスなので、そう簡単に場から離すことはできない。
正に難攻不落の要塞。水文明の誇る最強の拠点である。
「……ターン終了」
「なら、俺のターン。そしてこのターンの初めに、俺の手札は五枚ある」
前のターン《パシフィック R》で自爆覚悟の特攻をしてまで増やした手札。《エウクレイデス》の力によって五枚を保っている。
「それにより、《エウクレイデス》の龍解条件成立!」
今度は《エウクレイデス》だった。《エウクレイデス》はターンの初めに手札が五枚以上あれば龍解する。
だが、この《エウクレイデス》は2D龍解と呼ばれる、ウエポンからフォートレスへと変化した姿。ならばその先はどうなるのか——それが今から、証明される。
「見せてやる、ウエポンからフォートレス、フォートレスからクリーチャー。2D龍解のその先を! 《龍素戦闘機 エウクレイデス》——3D龍解!」
浬はフォートレス状態で広がっているドラグハートを掴み取る。そして《エウクレイデス》はそれに反応するかのように、高速旋回を始める。
浬の手札から得た大量の知識を糧とし、《エウクレイデス》は龍素の力を動力源にすべて注ぎ込む。それにより、《エウクレイデス》は真の姿を現すのだ。
「勝利の方程式、新たなる龍素、すべての要素を用い証明せよ——《龍素記号 Ad ユークリッド》!」
龍素記号 Ad ユークリッド 水文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 7000
自分のクリーチャーが攻撃する時、カードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー
《龍素戦闘機 エウクレイデス》が更に広がり、2Dを超える3D、最終形態へと龍解する。それはAdの龍素記号を与えられし結晶龍、《龍素記号 Ad ユークリッド》。その姿は、ホーミング弾内臓ミサイルポッド、追尾式レーザー砲、奇襲用口腔搭載型ビームキャノンと、数多くの遠距離専用兵器を搭載した龍であった。
「龍解——完了。そしてターン初めに《エビデゴラス》の能力で一枚ドロー、そして通常ドロー」
これでドロー枚数は二枚。
「《Q.E.D.》の能力で、手札からノーコストで水のクリーチャーを召喚できる。《アサシングリード》を進化、《超閃機 ヴィルヴィスヴィード》! 《シール・ド・レイユ》をバウンスし、《蒼神龍ヴェール・バビロニア》召喚! お前の手札にある《シール・ド・レイユ》を山札送りだ!」
「…………」
数少ない除去カードを潰されるラヴァー。さらに浬は、次々とクリーチャーを展開していく。
「《アクア少年 ジャバ・キッド》を召喚! 効果で山札を捲り、リキッド・ピープルなら手札に加えることができる」
そう言って捲られたのは《超閃機 ヴィルヴィスヴィード》。進化リキッド・ピープルだ。
「よし。《ヴィルヴィスヴィード》を手札に加え、《ジャバ・キッド》を進化! 《超閃機 ヴィルヴィスヴィード》! 《ヴァールハイト》をバウンス!」
立て続けにラヴァーの重量級カードが場から排除されていく。呪文を封じられながらも、浬はクリーチャーのみで彼女と渡り合っていた。
「行くぞ! 《Q.E.D.》で攻撃! 《ユークリッド》の能力で一枚ドロー!」
「《バロンアルデ》でブロック……」
「《ヴィルヴィスヴィード》で攻撃! 《ユークリッド》の能力で一枚ドロー!」
「《コッコルア》でブロック……」
「二体目の《ヴィルヴィスヴィード》で攻撃! 《ユークリッド》の能力で一枚ドロー! そしてこのドローで、俺はこのターン、カードを五枚引いた! 《エビデゴラス》の龍解条件成立!」
連続で攻撃を仕掛け、《ユークリッド》の能力で手札を引き入れつつ、《エビデゴラス》の龍解条件を満たす浬。
「勝利の方程式、龍の理を解き明かし、最後の真理を証明せよ。龍解——《最終龍理 Q.E.D.+》!」
《エビデゴラス》が龍解し、《Q.E.D.+》へとその姿を変形させる。
そしてこれで、浬の水のドラゴンはすべて、ブロックされなくなった。
「今度こそ終わりにしてやる。《Q.E.D.+》で最後のシールドをブレイク!」
《Q.E.D.+》が龍波動の力を圧縮し、一気に解き放つ。その一撃によってラヴァーの最後のシールドが吹き飛ばされた。
「これでとどめだ! 《龍素記号 Ad ユークリッド》で、ダイレクト——」
「ダメ……S・トリガー、発動……」
《ユークリッド》がとどめを刺そうとするが、
「《音階の精霊龍 コルティオール》を、召喚……《ユークリッド》と、《メタルアベンジャー》を、タップ」
「っ、また止められたか……!」
相変わらず、次に来るカードが読めているかのようだ。
ともあれ、これで浬はこれ以上攻撃できず、ターンを終える。
「私のターン……《龍覇 エバーローズ》を、召喚……」
「ドラグナー……!」
「来て……《不滅槍 パーフェクト》」
超次元の彼方より、不滅の生を与える槍が飛来し、《エバーローズ》がそれを掴み取る。
「《パーフェクト》を、《エバーローズ》に装備……そして、《コッコルア》でコストを1、下げて……《コルティオール》、進化」
またしても、ラヴァーのクリーチャーが光に包まれる。しかし、今までの光とは似ているが、しかしその輝きは段違いだ。
「私の世界を照らし出す——《聖霊龍王 バラディオス》」
眩い閃光より現れたのは、明らかに今までのクリーチャーとは格の違う、上位の進化エンジェル・コマンド・ドラゴンだった。
「《バラディオス》の登場時能力、発動……相手クリーチャーをすべて、フリーズ……」
「っ!」
これでまた、浬のクリーチャーはすべて、完全に動きを止めてしまった。もはや《Q.E.D.》も、半ば置物状態だ。
さらにラヴァー攻める。しかしそれはシールドではない。
「《バラディオス》で《Q.E.D.》を攻撃……《アルカディアスD》で《ユークリッド》を攻撃……」
「ぐ、くそ……っ!」
いずれも龍回避を持たないドラグハート・クリーチャーが破壊されてしまう。しかも、
「ターン、終了……その時、私の場に、光のクリーチャーが五体……《不滅槍 パーフェクト》の、龍解条件、成立……」
《エバーローズ》は手にした《パーフェクト》を、天高く打ち上げた。《パーフェクト》は輝く軌跡を描きながらその姿を、正義を執行する天命の王へと変えてゆく。
「世界の王よ、正義を掲げ天より降り立ち、不滅の生と命を授ける。龍解——」
そして、一段と強い光が、稲妻の如く地上へと降り注いだ。その中から、《パーフェクト》に宿る正義の龍が顕現する。
「——《天命王 エバーラスト》」
ラヴァーの切り札の一体が、またも現れてしまった。《アルカディアスD》《バラディオス》も厄介だが、一番辛いのがこの《エバーラスト》。これで浬は、バウンスではラヴァーのドラゴンを除去できなくなった。
「龍解……完了……そして、ターン、終了……」
勝ちの目が次々と潰されていく。もはや勝ち筋を拾うことは困難だ。しかし、
「まだ終わりじゃない……俺のターン!」
浬はまだあきらめていない。ラヴァーのシールドはゼロ、一撃でも通せれば勝てるのだ。
「俺の場にリキッド・ピープルは四体。よってコストを4軽減し、4マナで召喚! 浬の知識よ、結晶となれ——《龍素記号IQ サイクロペディア》!」
まずは一体。《サイクロペディア》さえ場に維持できれば、ブロックされない攻撃でとどめを刺せる。
さらに、
「海里の知識を得し英雄、龍の力をその身に宿し、龍素の真理で武装せよ——《理英雄 デカルトQ》!」
山札が残り少ないのでマナ武装は発動させず、シールドだけ入れ替える。これも恐らく無意味だろうが。
「ターン終了……!」
「……私のターン」
もはやこの対戦に置いて、最も勝利に近づいているラヴァーは、しかし淡々と、表情一つ変えずにカードを操るだけだった。
「……《導きの精霊龍 サリヴァン》を召喚。カードを二枚引く……そして、《聖龍の翼 コッコルア》《聖歌の翼 アンドロム》を、バトルゾーンに、《アンドロム》のマナ武装3で、《デカルトQ》をフリーズ……さらに《天運の精霊龍 ヴァールハイト》、召喚……山札の上から二枚、見る……一枚をシールドに、一枚を手札に。最後に、《サリヴァン》を、《聖霊龍王 スタグネイト》に、進化……」
もはや絶望だった。この数のクリーチャーを除去する手段は浬にはないし、仮になんとかできたとしても、《バラディオス》とシールドが一枚残ったことで、どうしたって最後の一撃は届かない。
「……《バラディオス》でTブレイク……」
「く……っ!」
《バラディオス》が光輪を放ち、浬のシールドを三枚打ち砕く。
「……《アルカディアスD》でTブレイク……」
《アルカディアスD》の光線でさらに三枚が砕かれ、
「……《スタグネイト》でWブレイク……」
《スタグネイト》によって最後の二枚が粉砕された。
「……S・トリガー《アクア・サーファー》を召喚、《エバーローズ》を手札に……!」
しかし、《エバーローズ》を一体除去した程度では、ラヴァーの圧倒的優勢も、浬の絶望的劣勢も、変わりはしない。
そして、守るものをすべて失った浬に、正義の裁きを下す一撃が、放たれる——
「《天命王 エバーラスト》で……ダイレクトアタック——」
神話空間が閉じる。出て来るのは、冷たい表情のままのラヴァーと、膝をつく浬。その構図と、浬の様子を見るだけで、勝敗の如何は理解できるほどに、その間の空気は圧倒的だった。
「浬!」
「かいりくんっ!」
沙弓と柚が駆け寄る。しかし浬の鋭い眼は、いまだラヴァーに向けられている。
「また、負けた……!」
「…………」
冷たく見下ろすラヴァー。今だけ、少しだけ暁の気持ちが理解できた気がする。
「……少しは強かった、けど、負けは負け……邪魔」
「く……っ!」
毒づく言葉も出て来ない。
敗者にものを言う資格はないのだ。
「次は……誰……? 誰でも、いいけど……」
もはやラヴァーは浬に目もくれず、沙弓と柚を交互に見遣る。その昏い眼差しに、柚は怯えきっていた。
「……私が行くしかないようね」
「ぶ、ぶちょーさん……」
柚を下がらせ、前に一歩進み出る沙弓。
浬とのデュエルは見ていたが、ラヴァーの強さは確かだ。暁も浬も連敗していて、沙弓でも勝てる自信はない。
と、その時だ。後方の洞窟から、足音が聞こえてくる。
「——え、浬? どうなってるの……?」
「暁……!」
「あきらちゃん……」
膝をついている浬と、沙弓の背に隠れて怯えている柚らを見て、怖くの表情を見せるのは、目的を達し洞窟から出て来たらしい、暁だった。
どういう状況なのかわからず首をひねっている暁だったが、ラヴァーの姿を見つけるや否や、即座に理解した。
いや、実際は理解していないのかもしれないが、直感で感じた。そして気づいた時には、デッキを握っていた。
「ラヴァー……会いたかったよ」
「……私は、別に……」
お前には興味がない、とでも言うかのように視線を逸らすラヴァー。
しかし暁はそんなこと意にも介さず、前に進み出る。
「部長。私が行ってもいいですか?」
「構わないけど……大丈夫?」
「はい! 私にはみんながいますし」
ピッと、一枚のカードを掲げる。
「新しい仲間もできました! 今度こそ、勝ってみせます!」
暁はそのカードを流れるような動作でデッキに組み込むと、ラヴァーと相対する。もう、沙弓は止めないし、止めることもできそうになかった。
あとはただ、暁を信じて、見守るだけだ。
「今回は負けないよ!」
「……勝手に、すればいい……」
互いにデッキを手に——神話空間へと、突入する。